
香港の古びたショッピングモールから、街を眺めてみた。手前にある5〜6階建てのビル群には、埃や排気ガスをたっぷり纏った壁面、それを包み隠すように塗られたカラフルな塗装、おなじみの後付け室外機やパイプ類など、時間をかけて使い倒されてきた生活の痕跡が地層のように刻まれている。
その背後にはニョキニョキと生えたペンシル型超高層ビル。地震大国日本では見かけないような細長さと、整ったテクスチャー、そしてふんわり漂うセレブ感。限られた敷地から一滴残らず容積を絞り出そうとする、現代の経済原理とエンジニアリングの産物だよね。
極端に少ない平地に極端に多い人々が暮らす香港では、まとまった敷地を用意する間もなく、古いビルを大急ぎで超高層化することで、最適化された新陳代謝を図っているようだ。この奇妙なコントラストは、単なる新旧の混在というよりも、都市が更新される瞬間のエネルギーがそのまま可視化された眺めなんだろうな。
さまざまなレベルの秩序が隣り合うことで、香港という都市の無秩序はさらに増幅されていく。でも、このもがきながら変容していく過程こそが、この街を面白くしている正体なのかもね。できればこのまま、効率と混沌がせめぎ合う割り切れない姿のままでいてほしいなんて思ってしまう。