
1985年に開通した大鳴門橋は、国家規模の「執念」を内包し続けている。もちろん神戸淡路鳴門自動車道の重要構造物としてしっかり機能しているんだけど、その補剛桁はまだ見ぬ四国新幹線を敷設できるよう設計されている。2000年にオープンした渦潮展望施設「渦の道」も、2027年度末の完成を目指して整備が進む自転車道も、この新幹線用スペースを間借りした「撤去可能な仮設施設」に過ぎない。つまり大鳴門橋は、生まれる前からの夢を抱き続けたまま熟年期に至っている、壮大な未完の橋というわけだ。
この橋のリアリティを体感する装置として、「渦の道」はなかなか優秀だ。巨大なコンクリートの塊であるアンカレイジの背面にポッカリと開いたエントランスからは、将来新幹線が走り抜けるはずの空間そのものを体感できる。そこから補剛桁へと潜入し、じっくりと内側から観察できる回廊に誘導される。そこでは圧倒的なボリュームの鋼材が入り組むトラス桁のリズミカルな様相はもちろん、桁の大きな伸縮量に追随するための細やかな工夫、一般人が立ち入ることのできない本気の検査路、高度にカスタマイズされた外面検査車や内面検査車、そして高力ボルトや鋼材のエッジに浮き上がる錆の様子といったディテールまでをも、鑑賞し尽くすことができる。長大橋梁をこれほど気楽に、かつ間近に体験できる環境は極めて珍しいんじゃないかね。ただし、ガラスやフェンス越しで。こうした橋の面白ポイントに目を向けさせるような案内も皆無に近い。ここら辺から生じるストレスが、実にもったいないんだよなあ。
建設から40年以上の月日が流れ、そこにあるのが当たり前になりすぎて、橋そのものへの関心が薄らいでいるのだろうか。いや、運営者や管理者がそう思い込んでいるだけではないか。見せ方さえ工夫すれば、もっと知的好奇心を刺激できるはずだ。瀬戸内エリアのサイクルネットワークを強力に補完する桁内の自転車道は、この特別な橋梁体験を一層強化することになるだろう。完成する頃には、日々の維持管理という時間軸も含めて、この巨大な構造物が「生きている」ことを実感できるような場へと拡張されるといいよねえ。