はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

私的夜景入門

昨晩は東京港の夜景を眺める機会があった。海面を渡るライトアップされた橋、林立する対岸の高層ビル群、人々の生活を示す窓明かりの粒、日没後の空の幻想的なグラデーション。間違いなくきれいな風景だよね。きれいなんだけれど、どこか腑に落ちないモヤモヤした気分も残った。

そもそも僕は、きらびやかな光の群れを前にして「きれいだね」と素直に言うことには、明らかに気恥ずかしさを感じる。振り返ってみると、一般的な「きらめき」「ロマンチック」「宝石箱」的な感動には、うまく乗っかることができないまま、ここまで来てしまった。どうやら僕は、夜景というものをこれまであまり正面から考えてこなかったんだろうな。つまり、夜景の見方がわかっていないことを突きつけられた。

さらにブログや過去写真を手がかりに振り返りを進めてみると、夜間に露出する都市の作動風景には、それなりに反応していることがわかった。たとえば、駐車場の階層が鮮やかに可視化されるとき、避難階段の裏側が周囲の照明によってぼんやり浮かび上がるとき、道路照明が設計通りの見事な均斉度で路面が照らされているとき、工場の保守点検のための光が蒸留塔を妖しく浮かび上がらせるとき、などなど。

夜景はあまりにも手軽に「きれい」として消費されやすいがゆえに、僕が大事にしたい都市を読解する手触りが包み隠されてしまうように感じているのかもな。だとすれば、そんな状況をどうにか打開したいよね。ということで、やっと僕の夜景入門の手がかりが得られた気がする。つまり、昼間には見えにくい都市の構造が、人工光によって一時的にあぶり出される状態をたくさん見つけていくことだ。まあ、あせらずのんびり取り組もう。