はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

完成した未完

1882年に着工したサグラダ・ファミリアの最大の構築物である「イエスの塔」がついに完成した。高さは何と172.5mだそうで、バルセロナのすべての建造物を超える高さだという。今年はガウディ没後100年の節目でもあるために世間は大いに湧いているわけだけど、「完成」という響きにどこか寂しさを感じつつ、最終的な完全決着まではあと10年という話題に、少しホッとしている人も多いだろう。

思い返せば2011年のオランダ滞在時、当時の僕はモデルニスモ(カタルーニャ版アール・ヌーヴォー)への理解というか興味が致命的に足りておらず、サグラダ・ファミリアなんてよくわからない装飾でゴテゴテ飾られたキッチュな観光用建築なのではないかと、たいへん不遜な疑念を抱いていた。なのでバルセロナを訪問するつもりはさらさらなかったのだが、滞在先のオランダ人たち絶対に行くべきだと強く推されて、ギリギリのタイミングで見に行った。そして、あの異形の外観に圧倒され、あの超絶神秘体験が促される大空間に身体ごと放り込まれたことで、理屈抜きでひれ伏した。あのときの、工事と祈りが一体となったカオスなプロセスを肌で感じる身体的な衝撃は、今になっても忘れることができない。

そんなわけで、サグラダ・ファミリアから「未完」という重要なアイデンティティが失われることに、どうしてもモヤモヤしてしまう。あの永遠に終わらない工事こそが、ガウディの意志を継いできた関係者の方々のみならず、世界中の人々の生々しい「祈り」に直結しているのではないかと感じていたので。訪問当時の写真を眺めながら、コスパやタイパといった経済合理性こそが正義であるかような社会に生きる僕らの価値観では決してたどり着くことができない、全く別次元の豊かさがそこにあるという事実を、ぜひ多くの方に生体験してほしいものだ。