はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

浮遊する芝生

FIFAワールドカップ2026が北中米で開幕し、48カ国に拡大したスペシャルイベントに世界中の人々が熱狂している。もちろん僕もこっそりナショナルチームの活躍を願って応援しているわけだが、選手たちが駆け回るきれいなピッチが気になって仕方がない。なんであんな広大な平面に生えている植生は、健全さと均質さが保たれているのだろうかね。高度な水管理システムを下層レイヤーに仕込みつつ、表層を選りすぐりの芝生職人が管理しているのかね。そんなことを考えているうちに、ずいぶん昔に見た「札幌ドーム」の芝生を思い出し、過去の写真フォルダを漁ってみた。たしかここは僕がまだ札幌に住んでいた頃に開催された日韓ワールドカップの開催地にもなっていたよなあと思いつつ。

この積雪寒冷地のドームは、サッカーをやるときには天然芝、野球をやるときには人工芝、ライブなどのイベントをやるときにはコンクリート床と、用途に合わせてモードチェンジするようになっている。なんでそんなことが可能かのかというと、上の写真のように屋外で日光浴している天然芝を、総重量8,300トンものコンクリートと鉄の塊のステージに乗せて、空気圧で7.5センチ浮かせ、分速4メートルで屋内に移動させるというトンデモ設備が仕込まれているためだ。コンペによってこの案が選ばれたとき、大地を重力から切り離して動かすだと?と、ひっくり返りそうになったことを憶えている。

あらためて札幌ドームのおさらいをしていたら、ネーミングライツによって「大和ハウス プレミストドーム」に改名されていたことを知った。ああそう言えば、北海道日本ハムファイターズが北広島市に出て行ってしまい、経営状況が著しくヤバくなったなんて話も耳にしたなあ。ドームのスケールに見合う巨大イベントが激減してしまったので、暗幕で仕切ってわざと小さく見せて小さく使うモードが新たに追加されたなんて話も聞いた気がするなあ。多方面にわたる努力をチマチマ積み重ねることで、黒字化が視野に入ってきたというニュースも見たなあ。元札幌市民としては、この過剰に気合いが入った施設を活かして、引き続き泥臭くがんばってほしいと無責任に願うばかりだな。ワールドカップの熱狂には、それだけの価値があることを再認識したな。