はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

貸切体験

ひょんなことから、千葉都市モノレールを「貸切」で体験するという、とんでもなくラッキーな機会に恵まれた。スタートは車両基地。地べたにぽつんと置かれた旧車両によって脳のバグが引き起こされるところから始まり、重層する軌道にクラクラし、ラッピングの補修作業が進む待機車両たちに酔いしれた。

上から吊り下げられているおかげで、視界を遮るものがない。本線に向かって上昇する体験は、まさに離陸といった感がある。しかし、バスのようなゆったりしたスピードで急勾配を登り、曲率半径の小さなカーブをぐにゃりと曲がっていく。ドローンのような浮遊感や懸垂式の証とも言える独特な揺れが、たまらなく楽しい。

本線に合流してからはいつもの風景と同じなのだが、体験は大きく異なるものだった。なにしろ日常のパブリック空間ではなく、非日常のプライベート空間なので。通常ダイヤの間を縫って走るため各駅に律儀に停車するものの、ドアは開かない。ホームを通過する一般の乗客の視線を浴びながら、開かない扉の向こうの日常を眺める。走行中は人目を気にすることなく、都市交通インフラを「アトラクション」として楽しめる。

なんという贅沢な体験だろうか。時刻表通りに動く堅固な都市システムを、自分たちのためだけにハックして掌中にするような感覚。この「貸切」という魔法に宿る価値って、効率性とは真逆のところにある、ちょっとした全能感なのかもしれないね。

なんて話をすると、まるで特権階級だけに許された秘密の遊びのように聞こえるかもしれないが、実はこれ、千葉都市モノレールが公式に提供している「貸切列車」サービスなのだ。個人でも法人でも、なんと1名から気軽に申し込むことができる。ルートのカスタマイズの自由度も高い。日常の移動手段であるモノレールが、自分たちだけの特別な浮遊物体に化けるという体験、ぜひ多くの人に味わってみてほしいな。