はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

特殊なアウトプット

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長崎の出島表門橋は、とても微妙なバランスで成り立っている。

出島側は土地自体がほぼ国指定史跡の遺構なので、橋台を置くことができない。このため桁は、浮かび上がらんばかりに優しくタッチするだけになるよう、江戸町側の橋台をカウンターウェイトとするキャンチレバー構造になっている。うねうねした桁のフォルムは、死荷重時のモーメント図と活荷重時のモーメント図を重ね合わせた、なんとも言えない中途半端な図形がベースになっている。この桁は横方向に座屈防止のスティフナーが何層も重ねられているが、縦方向は高欄も含めて厚さ18mmの一枚の鋼板でできている。さらに、プラズマ切断機によって無数の穴が空けられ、すべて人の手によって研磨されている。

これまでにも個人的にローラン・ネイのチームが手がけた構造物をかなりたくさん見てきたが、この出島表門橋もネイのデザイン言語に満ち溢れているように感じた。それは、その場に合わせてふんわりカスタマイズされた結果、強烈な個性を得たものだ。予定調和的にカタログから選ぶようなアプローチではなく、地域や環境の条件を読み込んで課題を設定し、それを構造、造形、施工など観点を踏まえた最適解をシームレスに探るスタイルによって生み出されたのだろう。その過程で生じる判断のウエイトは、構造面や製作面での合理性よりもユーザー体験を重視する傾向にある気がする。

専門家でも今までに目にしてこなかった外観となるため、言語化しにくく、評価もにしくく、何度も言っているように写真も撮りにくい。だからこそ、この橋が実際に日本で実現したという意義は、極めて大きいと思うな。日本の橋梁界で最も権威がある土木学会田中賞を受賞したのは、伊達ではないよね。

消える橋

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最近、あちこちで長崎の「出島表門橋」が話題になっている。日本の橋梁界で最も権威がある土木学会の「田中賞」も受賞しており、以前から見に行かねばと思っていた歩道橋だ。国指定史跡である出島の復元に関する事業の一環で、ネイ&パートナーズジャパンの渡邉竜一氏を中心とする設計チームが手がけている。

ご本人の話を含むいろんな情報を見聞きしていると、全体から細部に至るまで極めて高いクオリティの構造物が日本でも実現できたこと、設計から施工や運用に至るまで一貫したオリジナリティが実現して保たれていること、これからの地域のコアを担っていく可能性がとても高いことなどが、評価ポイントとして浮かび上がってきた。

もしかすると自他ともに褒めすぎなんじゃないかなあと、穿った見方を心がけて鼻息荒く現地に乗り込んだわけだが、あっさり頭を垂れて橋がもたらす風景に見入ってしまった。これはちょっとヤバい橋だぞ、と。日本の橋梁整備を取り巻く停滞した環境に、大きな一石を投じていることを強く確信した。未見の方は、長崎旅行の予定に入れることをオススメするよ。出島対岸の公園にはミッフィーがたくさん隠れているので、捜索も含めてちゃんと時間を確保しようね。

事前に渡邉さんから聞いていたけど、現地であらためてびっくりしたことは、ヌルッとした風景への溶け込み方だ。目の前にあるはずなのに、見えない。モーメント図を再現した中路桁の構造フォルム、ダークグレーの塗装色、強い影を落とす水平方向のスティフナー、無数の穴が空けられたウェブ、そこに一体化した櫛状の高欄など、さまざまな要因がすべて風景に溶ける方向に作用している。

上の写真を見返してみても、奥にある現役最古の鉄製道路橋「出島橋」の繊細なトラスのほうが確実に存在感があるもんなあ。以前から何度も申し上げているとおり、ネイの橋は写真に撮りにくいってことが、ここでも示された格好だね。

 


佐賀の土木展

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2018年7月25日(水)から 9月 2日(日)まで、佐賀県立博物館にて『すごいぞ!ボクの土木展』が開催される。佐賀にゆかりのあるクリエーターやアーティストの方々による体験型作品を中心とする、土木を楽しむための展示会だ。小さいお子さまから大きな大人まで楽しめる仕掛けが満載なので、この夏は思い切ってこの展覧会に行くとともに、佐賀のドボクを見に行こう。

ディレクターは佐賀出身の建築家・西村浩さん。六本木の21_21 DESIGN SIGHTおよび上海の藝倉美術館で開催された『土木展』も手がけられた。土木と社会を接続するための新たなチャンネルを、体を張って「土木を面白がる」ことで開拓している方のひとりだ。その方針に大賛成の僕も、たいへん光栄なことにアドバイザーとして参加させていただいている。昨年からたびたび佐賀を訪問しては、このブログに自慢げにアップしているのはこのためだ。

体験型ワークショップなどもたくさん予定されている。その中でも8月11日(土)は外せないよ。なにしろ、西村さんと僕のトークショー「佐賀のドボクを見に行こう!」と、無料のバスツアー「佐賀の土木遺産ツアー」があるので。ツアーは当日受付の先着20名。

なお、会場の佐賀県立博物館は、とてもかっこいい。アグレッシブな概観、立体的でSF的な空間構成、プレキャストコンクリートや鉄骨部材の上手な使い方などなど、見どころ満載だよ。土木展との親和性も、とても高いと思うな。

saga-museum.jp