はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

名建築

本日は強風が吹き荒れる晴天の中、珍しく目白方面を訪れた。事前に目的地へのルートをGoogleマップで確認していたところ、「東京カテドラル」の文字を見つけた。何十年も前から見に行かなきゃと思っていたのに、なぜかその一線を越えていなかった大傑作。このチャンスを逃してはならないと、少し早めに行動して立ち寄ってきた。

東京カテドラル聖マリア大聖堂は、丹下健三の設計により1964(昭和39)年に建てられた。複合HPシェルによるフォルムを実現した構造設計は、もちろん坪井善勝によるもの。つまり、国立代々木競技場の体育館という、これまた大傑作を実現したコンビだね。外装にはステンレス板が貼られており、陽光を浴びてビカビカに輝く近未来感満載の姿をしている。しかし、内部はコンクリートの荒々しいテクスチャーによって、荘厳な雰囲気が生み出されている。このコントラストは本当に凄まじい体験だった。僕も欧州を中心にさまざまな教会建築を体験してきたが、それらを踏まえてもここは間違いなく素晴らしいね。内部が写真撮影禁止なのが唯一残念なところ。

そうそう、その後の用務でご一緒した若い方に東京カテドラルの写真を見せると、「かっこいい!まるでPlayStation 5みたいだ!」と歓喜した。なるほど、この造形の美しさはプロダクトデザイン的だもんね。勢いでプレステ5を買おうかしら。

趣味としての写真

昨年末、思いつきでカメラを新調した。これまでずっとマイクロフォーサーズという規格のカメラを使ってきたのだが、センサーサイズが大きいフルサイズのカメラを買ってみたのだ。思いつきにしては大散財だったが、自分の中のなにかが切り替わった気がしている。

年末業務でバタバタしていた時、ここ何年も旅行以外に大きな散財をしていないことに気付いた。何かほしいものはないかと思案したのだが、その時点では何も思いつかなかった。仕事が一段落した日に自宅で飲んで酔っ払い、ふと気付くと、なんとなく興味があったカメラとレンズをポチッとしていた。しっかり調べることもせずに。ところが、夜中の高額取引が不正利用と思われたのか、クレジットカードが止められてしまった。焦ってあれこれ試してみるも、結局購入できなかったので、ふてくされて寝た。朝起きておそるおそる再トライしてみると、あっさり購入完了。もう一度引き止めてくれると思ったのに。そんなこんなで、その翌日には無事に入手できた。

これまで自分の写真は、撮影対象の「記録」を目的にしてきた。いかにして対象とする事物を写真という媒体を介して説明するか、しかもより伝わりやすいかたちで、ということに腐心してきたつもりである。その際には自己流ではあるが、表現手法について考えることも多少あった。まれに「良い写真だね」「上手だね」と言っていただけることもあったが、いわゆる「作品」を目指してこなかった身としては、正直なところピンときていなかった。

とは言え「作品」に興味がなかったわけではなく、受け手として写真作品を享受してきた。被写体への興味が先行していたためにジャンルは偏っているものの、写真集は何冊も持っているし、展覧会にも出向いたりしてきた。それに自分でも、写真現像ソフトでパラメーターをあれこれいじったりしながら、それらしい表現手法やテイストを理解するためのトライアルはやってきた。撮影時にはほぼ考えていなかったのは事実だが。

振り返ってみると、小さなきっかけがいくつも重なったことで、「作品づくり」に対する欲が自分の中に芽生えてきたようだ。写真中心の本を2冊も出しているのに、いまさらという感は否めないが。いずれにせよ大きな散財をしたことで、今年から写真を「趣味」として捉え直すことにした。もちろん「記録」も続けながら。

寝正月日記

本年元日に発生した能登半島地震で被災されているみなさま、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。特異な地理地形に起因する困難な状況の中で、救出や支援に従事されているみなさま、ご安全に活動できるようお祈り申し上げます。収束どころか被害の全貌も未だにつかめず、関連するであろう地震も広域で頻発しておりますが、一日も早く平穏な日常を取り戻すことができるよう、心から願っております。

大きな災害が今年のスタートになるなんて、僕は全く想定していなかった。のほほんと正月の落ち着いた時間を過ごすつもりでいた。ところが、緊急地震速報からのニュースによって動揺しすぎたのか、悪寒が止まらなくなった。少しずつ情報が入る中で心配は尽きないが、翌2日は実家に帰って飲んだくれる予定だったため、葛根湯を飲んで早々に寝た。

朝起きて検温すると、あっさり高熱が出ていた。加えて、咳もひどい。実家に訪問の取りやめを連絡してから、翌3日から予定していた2泊3日の旅行をどうするか考えてみたが、あきらめざるを得ないよね。それなりのキャンセル料は生じてしまうけど。地震の被災情報の収集をしつつ、朦朧とした状況の中、各種手続きを終えることができた。

夜になって、羽田空港での大事故のニュースが。これには参った。日航機の乗客乗員は全員脱出との報が入って少し落ち着いた気がするが、ひどい動揺っぷりだった気がする。体調が悪いときに冷静さが必要となる大きな事象は危険である。ということで、SNSなどには触れないように布団へ。

翌朝になっても体調は良くならない。もしやと思いコロナの簡易検査を試してみると、くっきりと陽性判定のラインが。これまで何度やっても陰性だったのに。まあでもこれで寝正月が確定したので、いろいろあきらめることができた。そして、大地震からも大事故からも、いったん離れることにした。

その後は徐々に回復していき、大人しく厚生労働省により示された療養期間を経た。昨日7日、昨年末に勢いで購入した新しいカメラを携えて、久しぶりにがっつり外界を散歩した。ようやく新年が始まった気分だ。カメラの操作はまだまだおぼつかないが、初心に返って写真に向き合えるようになった気がする。真面目に修業してみようかなあという気分になった。

すでに年始の記憶が断片化している。いつも以上にダラダラと書いてしまったが、本ブログをご覧下さっているみなさま、本年もよろしくお願いします。

上の写真は、能登半島の付け根にある富山県氷見市の風景。10年近く前、数日間かけて市街地を歩き回ったことがある。隙間なく連なる住戸が生み出す街並みが、とても印象的だった。氷見市でも今回の地震で家屋の倒壊や断水などの被害が出ているらしく、久しぶりに写真を見返して思いを馳せてみた。