はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

2024-01-01から1年間の記事一覧

壁鑑賞の履歴

あいかわらず、壁鑑賞を続けている。それどころか、勢い余って壁の写真集をつくり、壁の写真を展示することにした。今週末から始まる大学祭というイベントに、大学教員の立場を利用して、自分の研究室の学生たちが運営する展示販売コーナーにこっそり紛れ込…

室外機鑑賞の履歴

あいかわらず、室外機鑑賞を続けている。出張で札幌を訪れた昨日も、朝のすすきのを散策しながら「室外機コレクション」をいくつかじっくり鑑賞してきた。やはり飲食店や風俗店が凝縮している繁華街は、すてきなコレクションがたくさんあるね。上の写真なん…

かわいい水路橋

不毛の大地だった郡山の安積原野を、猪苗代湖から引いた水で潤した明治の大事業・安積疏水。日本三大疏水のひとつに数えられているね。終戦後には悪化していた食糧事情を改善するために、農地のさらなる拡大を図る新安積疏水の事業が進められた。 その仕上げ…

知らないと見えない

明石海峡大橋のアンカレイジは、とてつもなくでかい。なにしろ全長約4kmの長さの桁を吊り上げるためのおもりなのだから、このくらいでかくて当然だよね。吊橋の構造をある程度知っている人ならば、そんな風に見えるだろう。なぜなら、目に見えない力の流れ…

橋脚の地図

高架橋の橋脚の表面に、チョークで不思議な模様が描かれている。そこには、細かく数字が添えられている。宝のありかを示す謎めいた地図のようにも見えるが、もちろんそんなことはない。 これは、コンクリート表面の点検を行って発見された微細なひび割れと、…

女川のまち

女川原発2号機が再稼働したとのこと。2011年の巨大地震と津波によって外部電源の喪失、地下設備の浸水などの被害が出て稼働停止し、高さ29mの防潮堤を整備するなどの安全対策工事を進めて、2020年に原子力規制委員会の審査を通過した。ここに至るまでに、ず…

誰も見ないデザイン

湯西川ダムによる湯西川湖の最上流部に、「仲内大橋」というPCラーメン橋がひっそりと架かっている。小判型橋脚とウェブが少し斜めになった桁の剛結部のおさまり、桁の下端が描く伸びやかなライン、橋脚の型枠の割り付け、シンプルな橋面工など、なかなか素…

大人気隧道

この夏に神戸を訪れたときにSNSで神戸のドボク的名所を募ったところ、いろんな方からいろんな物件をお知らせいただくことができた。その中でも特に興味を引かれたのが、日本初の河川トンネルの「湊川隧道」。たまたま翌日が一般公開の日だったので、急遽合流…

大都市を生んだ水門

意識しているわけではないけのだが、このところ農業用水ネタが重なっている。この夏にたびたび訪れた東北地方では、農業が関わるドボク施設が相対的に多いのかもしれない。いや、最近の僕の無意識が農業という産業をしっかり捉えたがっているのかもしれない…

豊かなダム体験

もともとは灌漑専用のダムだった福島県が有する千五沢ダムは、再開発によって治水機能が付加された。その際に整備されたのが、洪水調節機能を有するラビリンス型の洪水吐。これがなかなかお目にかかれないレアもので、その異様な姿にときめいた。形状はずい…

水の階段

このところ、立て続けに東北地方を訪れている。先週末は、とても楽しいまち歩きイベントにお呼びいただき、秋田に行ってきた。滞在中はおいしい食事やお酒をたっぷり味わい、僕が萌えるスポットにいくつも連れて行っていただいた。そのひとつが、にかほ市の…

建築旅のヒント誌

昨年の夏はコロナ禍で溜まった航空会社のマイルを活用してヘルシンキ方面に避暑に行ったが、今年は為替も物価もアレなので国内旅行で我慢することにした。行き先を決めるにあたっては、12年目になった愛車で無理なく行ける範囲であることと、本ブログのネタ…

静かな円筒分水工

水稲耕作には水が不可欠。まずは水が得やすい谷地や後背湿地で水田がつくられた。やがて用水路により水を供給する灌漑が行われるようになり、ようやく農地は拡大していった。それは個人でできるものではない。大量の水を確保してそれなりの面積に分配するた…

タリンの配色

それにしても暑い。秋はまだか。 ということで、昨年8月に行ったフィンランドとエストニアの写真を見返して、涼しい夏の思い出に浸っている。訪れたのはヘルシンキとタリンの2都市のみで、せわしないドボク旅行ではなく、じっくりと街を味わう旅にした。久…

記憶の改ざん

1900(明治33)年につくられた、日本初の重力式コンクリートダム「布引五本松堰堤」。埋設型枠として用いられた間知石が、素晴らしい味わいを生み出している、近代水道の礎を築いた重要施設のひとつだ。神戸を訪れた際には、見に行かねばならない場所である…

圧倒的スケール

あこがれの明石海峡大橋をしっかり体験したのは、実ははじめてである。いつか見に行かねばと思い続け、いつでも行けると思い続け、でもまだまだ自分なんてと思い続け、はや四半世紀。このたび本四高速での講演の機会をいただいたことで、先月の瀬戸大橋に続…

砂防堰堤とクマ

福島県を流れて阿武隈川に合流する「荒川」は、国土交通省による水質調査で「水質が最も良好な河川」に選ばれている。なんと、今年で14年連続とのこと。これは熊本の川辺川の18年連続に次いで2番目の記録らしい。そんな清流ではあるが、その名の通り昔から…

夢の特別体験

今月初頭、瀬戸内海をまたぐ本州四国連絡橋の児島・坂出ルートを、さまざまな場所や角度から堪能してきた。上の写真は北備讃瀬戸大橋の塔頂からの眺め。大学生の頃にはじめて訪れてから約30年、夢が叶った瞬間だ。なにしろこれらの長大橋梁群のデザインは僕…

アーチ三兄弟

今年の夏は、福島県を中心にダムや疎水や橋などを車で巡るドボクツアーを強行した。これほど一気にドボク成分をたっぷり味わったのは、いつ以来だろうか。高温高湿度のためか日頃の運動不足のためか単純な体力の衰えのためか、毎晩グッタリして早寝遅起きを…

沼の縁にて

先月末、学生時代に使っていたマニュアルレンズを試してみようかと思い立ち、自分のカメラに取り付けられるようにするマウントアダプターを入手した。CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4 という標準レンズで、ボロボロの CONTAX 139 Quarts を格安で手に…

奇妙な型枠

日が暮れかけた高松の街でホテルに向かって歩いていると、横目に見えた駐車場の奥の壁面に視線が釘付けになった。明暗のコントラストが効いたランダムな模様と規則的な縦のラインから、野趣味溢れる強烈なインパクトを感じたのだ。これはなかなかお目にかか…

更新を続ける都市

コンコルド広場ではアーバンスポーツ、エッフェル塔の前ではビーチバレー、グラン・パレではフェンシングやテコンドー、アンヴァリッドの中庭ではアーチェリー、セーヌ川では開会式やトライアスロン。文字通り都市そのものを舞台としたパリオリンピックは、…

オリンピック・レガシー

オリンピックがもたらした施設には、独特の残り香がある気がする。熱量というか、誇りというか、執念というか。個人的にはそうした雰囲気に魅力を感じるので、開催都市を訪れた時には無意識的にオリンピック関連施設を訪れていることが多い。ブログの過去記…

微ズレ

「塔博士」「耐震構造の父」として有名な内藤多仲が設計した二代目通天閣。見に行きたいものリストの上位に入っているのになかなか行かなかったが、ついに訪問することができた。直線で構成されているのシルエットが、思っていたよりシュッとしていて、かっ…

アンサー展示

大阪で開催された『ヨーロッパのドボクを見てきた展』を見てきた。写真作家の水池葉子さんによる拙著『ヨーロッパのドボクを見に行こう』へのアンサーソングならぬアンサー展示だ。自分が出した本が他者の創作の刺激となり、実際に現地を訪れて写真を撮ると…

イタリア広場の啓示

平日の午後、仕事をするふりをして上野の東京都美術館で開催されている「デ・キリコ展」に行ってきた。それなりに来場者は多かったが、鑑賞時にプレッシャーを感じるほどではなかった。全作品をしっかり眺め、全キャプションをゆっくり読み、オーディオガイ…

新火力発電所

先日、わが家の車を12年目の定期点検に出した。その時にお借りした代車が、なんと赤いFIAT500だった。あまりのかわいらしさに、猛烈にドライブに行きたくなった。仕事がたんまりあったにもかかわらず。どこに行こうかと思案したところ、かつて頻繁に京葉コン…

路面に浮かび上がる地域性

今月の初旬、20年前まで住んでいた札幌を訪問した。いまでも毎年のように訪れているが、いつしか「帰る」という気分は薄れてしまい、すっかり出張に「行く」場所になっている。 関東では朝から半袖がちょうど良い初夏の陽気だったが、小雨が降る札幌の街に到…

東京の新しい視点

「東京建築祭」というイベントが2024年5月25日と26日の2日間を中心に開催された。ロンドンで開催されている「Open House London」や、大阪で開催されている「生きた建築ミュージアム大阪(イケフェス大阪)」と同じように、実際に使われている建築物が特別に…

砂糖の屋根

昨日は千葉港めぐりの観光船に乗った。その際に、製糖工場の三角屋根が話題になった。これって独特な形態だよね、粒状の物体を落としてできる円錐形の傾斜で決まっているんじゃないかな、きっと穀物サイロのような筒状の形態にはできない理由があるんだろう…