はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

2011-01-01から1年間の記事一覧

私的ドボク大賞2011

本年は怒濤の勢いで欧州ドボク紀行を敢行した。20年分くらいのサーベイを一気にやったような、とんでもなくドボク密度の高い1年だったな。その中でもとりわけ印象深いものはなんだっただろうかと考えてみると、まああれこれ思い出すのだけども、やはりミヨー…

音楽の橋

今年の5月にローマのテヴェレ川に架けられたばかりの、Ponte della Musicaという鋼アーチ橋。現時点では歩道橋だけど、将来はバスやトラムが通ることを想定しているらしい。 きっちりときれいにまとめられた橋ではあるが、既視感のある構造フォルムやカラー…

オリンピックドーム

1960年のローマオリンピックの会場としてつくられたPalazzetto dello Sport(完成は1957年)。トリノのTorino Esposizioniと同様、イタリア人構造デザイナーのPier Luigi Nerviが手がけた物件だ。このドーム屋根のコンクリートのリブがあまりにも美しく整い…

手練れの仕事

電車で出かけた際に、たまたま車窓から見えたMilano Rogoredo駅のプラットホームを覆う屋根が気になったので、帰りに寄り道をしてきた。これがなかなか素敵なものだった。 断面が三角形のトラスを中心に、透明板のパネルとちょっとした庇を吊っている。色が…

宙づりエレベーター

高さ167mのトリノのシンボル的建築であるモーレ・アントネリアーナは、1863年にユダヤ教の礼拝堂(シナゴーグ)として建設がスタートしたんだけど、建設途中で資金難という大人の事情によりトリノ市へ委譲されて、1889年にようやく完成したんだって。内部は…

リノベ前物件

ミラノ郊外のLodiという街で見かけた素敵物件。おそらく穀物用の倉庫だと思う。鉄道駅に隣接したバスターミナルの前という申し分ない立地、極めて端正なプロポーションのグリッド、上下にグラデーションがかかっているかのような表面のテクスチャー、どこを…

鋼列柱

トリノのある教会を見るために中心部から北西方向にトラムで行ってみるたのだけど、周辺の状況はまったく調べて行かなかったので、そこに広がる光景はまったく想像していないものだった。 錆止め色の柱が果てしなく広がっている公園は、とても印象的な空間が…

展示物のない展示空間

かつてトリノモーターショーが開かれていたというTorino Esposizioniの内部空間。このドームはPier Luigi Nerviの設計により1949年に建設されたものだ。ネルヴィの屋根が見たくてトリノに来たのだ、どうしてもこの目で見て帰らなければ、という気分でヴァレ…

空中サーキット

1923年から1982年まで操業していたフィアット社の巨大自動車工場「リンゴット」を見るために、トリノへ行ってきた。とりあえず1928年に撮影されたウィキペディアの写真をご覧くださいな。すごいから。現在この工場は、レンゾ・ピアノの手により改装されて、…

ファシストの家

ジュゼッペ・テラーニというイタリアのモダニズム建築家が設計したカサ・デル・ファッショという建物が、スイスとの国境付近のコモにある。1932年にムッソリーニのファシスト党本部として建てられ、現在は国境警備隊が使っている。まあ権威を象徴するのが使…

壁の穴

ミラノ北駅からコモへ向かう電車が出発するまで少し時間があったので、駅前からチラリと見えたスフォルツェスコ城を散歩してみた。レンガ造りの城は堅固な要塞といった風情で、優美さなどはほとんど感じられない。ここらへんは頻繁に戦争を繰り返していたの…

トリックアーチ

ミラノから電車でおよそ1時間のコモの街を散策中、遠くの方にチラリと見えた山裾の鉄道高架橋に大きな違和感を抱いた。急いで近づいてみると、それは理解しがたい連続コンクリートアーチ橋だった。なんだこれ、アーチ部分におかしな段差が付いているぞ。左か…

コンクリートトラスアーチ

ミラノ市内のナヴィリオ運河に架かる歩道橋。名前はPonte del Dazioのようだが、まだ確証は得られていない。コンクリートのトラスはかなりごつくて、雰囲気の良い運河の中において、過剰なまでの存在感を放っている。それでも部材の角度に微妙な変化をつけて…

頭でっかち

すでにミラノのゴージャスさ加減にお腹いっぱいになってきているのだけど、頻繁に隙を見せて息継ぎをさせてくれるのがミラノのいいところ。こういう体験はパリでは得られなかったな。パリにはうんざりするほど打ちのめされたから。 たとえば、とんでもなくこ…

超高級アーケード街

ミラノのガッレリア、そんなに期待せずにふらりと立ち寄ったのだけど、かなりゴージャスですごい。古典的な石造りの建物に、当時の最先端素材である鉄とガラスを用いたドーム。当然のことながら、ディズニーランドやヴィーナスフォートとは質感が全然違うん…

チェントラーレ

ミラノ中央駅(Stazione Centrale di Milano)の駅舎って、まだちゃんと見てはいないのだけど、ちょっとすごいよ。その権威主義的でゴージャスな威圧感は尋常ではない。と思って少し調べてみたら、どうやらムッソリーニの肝いりの建物のようだね。ドイツでい…

帰国報告会とほぼ未踏の地への入国

1年間のオランダ滞在を終えて帰国してから、あっという間に2ヶ月弱が経過した。オランダのゆったりした生活スタイルと日本の現実とのギャップや、本来の仕事の仕方をすっかり忘れてしまっていたことなどによって、毎日が自転車操業の慌ただしさに埋没してし…

同じことの繰り返し

ルール工業地帯のゲルゼンキルヒェンに架かるFootbridge harbour Grimbergの高欄。信じがたい外観はこちら。フェンスの面には簡素な金網を用い、それを上下端のケーブルに張り渡し、ケーブルは端部ですっきり定着させている。極めて簡素なつくりで、極めて透…

高級健康ランド

人口わずか1000人のスイスのヴァルス村にある温泉保養施設「テルメ・ヴァルス」は、ピーター・ズントー(Peter Zumthor)が大規模に改築を行ったデザイナーズ健康ランド。現地産の石材を丁寧に積層させてできた空間はミニマルで、重厚で、神々しく、心の底か…

世界一高い橋ができるまで

ミヨー橋はスーパースケール感やその姿のかっこよさもさることながら、建設方法も笑えるほどすごい。とんでもないスケールで桁を送り出し架設したり、横にした主塔を台車で運んで橋脚の位置でくるりと立てるというアクロバットをしたり。という話はとっくに…

中くらい

オランダにはアルバートハインという大手スーパーマーケットチェーンがある。コンビニ的小店舗から巨大スーパーまで幅広く展開している。日本でいうところのセブンアンドアイみたいな位置付けだろうね。プライベートブランド商品が充実しており、それらのパ…

むき出しスクリュー

オランダといえば、まず風車をイメージする人が多いと思う。それはオランダの国土の成り立ちからして、すごく正当な見方だ。なにしろ低湿地の干拓のための施設(参照:ダッチ土木の伝統)だからね。 もちろん現在は風車とは別のやり方で排水している。18世紀…

時計じかけの宇宙の旅

今年の3月から7月までの間、パリの「シネマテーク・フランセーズ」にて、スタンリー・キューブリック展が開催されていた。ここは映像作品の保全や上映を行う私立文化施設で、脱構築主義の旗手として有名なフランク・ゲーリーにより「アメリカン・センター」…

一歩引く

旧西ベルリンと旧東ベルリンの境界に架かる、ダブルデッキのOberbaum橋。有名なベルリンの壁のイーストサイドギャラリーのすぐそばにある。もともとは1902年につくられた石造?コンクリート造?レンガ造?のアーチなんだけど、中央部分は1995年にカラトラバ…

建築ランド

ドイツのヴァイル・アム・ラインというスイスとフランスに接している街に、デザイナーズチェアの生産で有名なヴィトラ社の工場がある。ここは有名建築家の作品がごろごろしている建築マニア垂涎の建築テーマパークになっている。建築に疎い僕でも十分面白か…

オーバーパース

フランス東部の国境の街、ストラスブールの郊外にあるパークアンドライドのトラムターミナル。イラク出身の建築家ザハ・ハディドが設計したもの。絵心のない人が頑張ってつくったフォトモンタージュのように、画面左下の人と車のパースがおかしなことになっ…

消えた高炉

僕がオランダに発つ前、蘇我のJFE第5高炉はベルトコンベヤーが取り壊され、次の解体ステップを待っていた。オランダから帰ってみると、ものの見事に、跡形もない更地になっていた。こうなることはわかってはいたのだけど、やりきれない悲しい気持ちがつきま…

さよならオランダ

いよいよオランダを離れ、日本に帰国する。あっという間に過ぎ去ったこの1年間は、およそ20年分のサーベイをまとめてした気がする。この異常な充実ぶりは、満腹なんてもんじゃない。日本に帰ってからしっかり消化しないとな。時間かかりそうだけど。 メモ書…

非ダッチデザイン

アムステルダムの自転車道に架かる自碇式吊橋のnesciobrug。緩やかなカーブの線形や、断面形状が連続的に変化する鋼箱桁や、シンプルな各部のおさまりなどがすごく素直できれい。流麗で繊細で洗練された印象を受ける。つまり、オランダらしくない。ダッチデ…

渓谷を渡る板

先月のスイス訪問では、重要な巡礼地として東部のViamala渓谷に架かるPunt da Suransunsも参拝した。これはユルグ・コンツェットが設計した吊床版歩道橋で、これまでも何度か噂には聞いていた。なんでもまじめにハイキングをしなければ見ることができないと…