はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

空から見る海上道路

9月のオランダ旅行は、香港経由便で行ってきた。なぜかというと、直行便の約半額だったからに他ならない。昨今の航空券が高額な理由は、止まらない円安、世界的なインフレ、燃料費の高騰、コロナ後の需要回復、人手不足などだろう。その上、戦争に伴いロシア…

新ツアーの胎動

先日、川治ダムのキャットウォークを歩いてきた。堤体の下流面に設置されている通路のことね。もちろんフラッと立ち寄ったのではなく、とある特別なツアーに参加させてもらったことで。反り返るアーチダムの圧倒的なコンクリート面にひれ伏し、岩盤を強化し…

曲面の違和感

オランダ最古の都市のひとつと言われるナイメーヘンは、スイスアルプスに端を発してドイツを流れるライン川が分岐したワール川のほとりにある。平地が少ない島国の日本の感覚では少々捉えにくいのだけど、大きな船舶が頻繁に行き交う河床勾配が緩やかな国際…

不知を自覚する機会

昨日は野暮用ついでに、自分の生活圏にはあるものの頻繁には通らない線路沿いの道を歩いた。すでに10年以上も勤務している職場の窓からもしっかり見えるので、無意識的に「よく知っているつもり」になっていた。そして、実際は「知らなかった」という残酷な…

大阪とオランダと

ロッテルダムの「デポ・ボイマンス・ファン・ベーニンゲン」の外観は、大量のミラーパネルを全身にまとったお椀型フォルムという、なんとも異様なもの。湾曲した周辺の風景の映り込みに加えて、高木の屋上緑化も違和感この上ない。ダッチデザインの面目躍如…

バックヤードの展示

この夏のオランダ旅行では、ずっと体験してみたかったロッテルダムの「デポ・ボイマンス・ファン・ベーニンゲン」を訪問した。2021年にオープンしたMVRDVの設計による「見せる収蔵庫」だ。周囲の風景を反射するビカビカの巨大お椀という異様な外観からしてダ…

ガチ機能主義

先日の出張時、ブルータリズム建築のような圧倒的な存在感を放つ消防署の訓練施設が目に飛び込み、思わず車を止めた。これまでも消防署の前を通るたびにチラ見していたものの、じっくり眺めたことはなかったように思う。 あらためて観察してみると、あくまで…

くもで網

昨日まで有明海に面する福岡県柳川市に取材に行っていた。街中の見るべきものはあらかた見たということで、飛行機の時間を逆算しながら、有明海の干拓の歴史をトレースするドライブを敢行した。 現地に行ってみると、緩やかな扇状のカーブを描くように集落が…

人工自然河川空間

極めて充実したオランダ旅行から戻り、ウキウキした気分で日常を過ごしているつもりではいるのだが、よく考えると忙しい状況。そこそこの期間を空けていたために仕事が溜まっていたことや、職場である大学の授業が再開したことが要因だよね。まあ予想はして…

わかりにくいパーティション

オランダの本名はネーデルラント、つまり低い土地。そこを流れる河川は、洪水や高潮に対する防災のための排水路、物流や交通のための運河の両者が、おそらく高度に融合して機能している。長い時間をかけて人為的な分流や合流を繰り返してきたのだろう、同じ…

人々は移動する

ロッテルダムにある2025年5月にオープンしたばかりの「FENIX」というミュージアムに行ってきた。ウィキペディアの英語では「FENIX Museum of Migration」となっており、日本語では「FENIX 移民博物館」と表記されることが多いようだ。実際の展示を見た印象と…

美術鑑賞体験

今回のオランダ旅行は、かつての体験をトレースすることで自分の感覚を更新することを心がけた。そのひとつが、アートに関するインプットを追体験すること。15年前のオランダ滞在時、かつてない頻度で美術館を訪れて浴びるように多様なアート体験をしたこと…

交通インフラの集積地

久しぶりに体験したオランダの都市は、鉄道駅が担う交通結節点の機能をずいぶん強化しているように感じた。今回訪れたデン・ハーグ、ロッテルダム、ユトレヒト、アムステルダムは、15年前と比べて大規模に改造されていた。あ、ナイメーヘンにも行ったのだけ…

懐かしのダッチ臭

僕は15年ほど前に一年間オランダで暮らした。すっかりオランダかぶれになってしまい、その後は2014年と2015年に立て続けに訪問した。ところが不覚にもそこから10年ご無沙汰してしまった。それは、他の国にも行くようになったことと、コロナ禍が効いている。…

パイロン鑑賞

目下の悩みは、「パイロン鑑賞」を演習課題の題材に使えるかどうかってことである。 都市鑑賞による「ものの見方の拡張」を促すことを目的に、昨年までは「リサイクルボックス鑑賞」を題材としていた。なにしろリサイクルボックスは2つの投入孔が目に見える…

会期終盤の渋谷

東京の西側は、個人的にとても苦手である。その理由には自分が船橋出身の千葉市民という地理的要因も大いにありそうで、黄色の総武線では御茶ノ水まではなんとか、青色の総武線快速では品川まではなんとかなるが、その先に行くと寄り道せずにすぐに帰りたく…

三次元で解く

円弧を描く桁にアーチの特性を加味して、上手いこと成立させた桁のことを「リングガーダー」と呼ぶ。桁が外側に回転しようとする力を、桁の内側上部のリングを平面的に引っ張ってバランスさせるものだ。なにを言っているのかわからないかもしれないが、それ…

コンポジション・エクササイズ

そろそろ崩れてきそうなデスクまわりを整理するために、お盆休みで誰もいない職場に来ている。そのためには、収納先である書棚にスペースを生み出さなければならない。そのためには、いまは必要ないであろう書籍類を捨てなければならない。ということで、朝…

華やかな舞台

今朝から大阪を訪れている友人と仕事のやりとりしてる中で、新幹線の車窓から見えたちょっと変わった斜張橋を調べてみたよ!という連絡を受けた。小田原漁港に架かる「小田原ブルーウェイブリッジ」なのか、浜名湖に架かる「サンマリンブリッジ」なのか、な…

回想する階段

素敵なコンクリート造形物の写真を探していたところ、すでに取り壊されてしまった『西武大津ショッピングセンター』の外階段に行き着いた。なんともかっこいい階段だよね。個人的に収集している「ゴージャス避難階段」の中でも、傑出した造形だと思う。火災…

ゆるタク

うだるような暑さの中をトボトボ歩き、ようやくJR幕張駅に到着した。そして南口の様子を目の当たりにして、ニヤけながらも高揚感や安堵感や恍惚感に包まれた。なにしろ「タクシー」の路面標示がゆるい方向に自由奔放だったので。 思えば、現代の多くの駅前…

隆起するアスファルト

本日は今年度から受け持っている放送大学千葉学習センターでの「ミニゼミ」の日だった。その内容は、毎月ゼミ生のみなさまにお題を提示し、実施していただいた「まち歩き」の成果を発表し合うというもの。せっかくいただいた貴重な機会なので、本務の大学で…

5年ぶりのNY

僕が実際にニューヨークを訪れたのは学部を卒業した1993年の春休み、もう30年以上前のこと。すでにその時点で橋好きになりかけていたので、イースト川に架かるブルックリン橋を見に行った。河岸にはホームレスの方々の簡素なホームが連なっており、ものすご…

青い立体造形物

射水市の内川で見かけた青い壁を持つ住宅。このエリアでは、隣接していた家屋が取り壊されたことで露出した壁面全体に、新たな建材を貼り付けることはよくある。しかし、この家屋は比較的新しく建てられたもののようだ。建て替えの際、まだ隣接地に家屋があ…

絶滅危惧種

街中の自販機の横にちょこんと佇んでいたかわいい子たちが、急速に姿を消している。そう、リサイクルボックスたちのことだ。彼らを愛でてきた僕の肌感では、2〜3年前からその傾向が顕著になってきた気がする。つい先日は、駐車場の敷地に道路側を向いて設…

分断された世界

湯西川ダムの堤頂から下流の眺めを、注意深く撮影してみた。すると、まったく異なる二枚の写真を横に並べたように見えるではないか。水面と地面の対比に加えて、同流壁に沿ってスパッと切られた施設の屋根が、不可思議さを伴ってその印象を強化している。近…

新幹線の勾配

今年の東京建築祭では、「Ginza Sony Park」のほかに、「2k540 AKI-OKA ARTISAN」のガイドツアーにも参加した。秋葉原と御徒町の間の鉄道高架橋の下を、オシャレな商業施設として活用している先駆的事例だ。JR東日本関連の方々による解説のおかげで、いろい…

黄緑色の宇宙怪獣

昨年から何度か神戸を訪れているが、まだポートライナーには乗っていない。しかし、何度もその桁を見上げている。特に三宮駅付近で3つに分裂しながらダイナミックな曲線を描くキングギドラのような迫力には、毎回感激している。 1981年に開業した新交通シス…

閑散モール散策

この週末も神戸に来ている。せっかくなのでまち歩きをしようと思って、お昼頃に新神戸駅に到着する新幹線に乗った。しかし、あいにくの雨でどうやって行動するか悩みながら屋根がある通路に導かれてトボトボ歩いていたら、「コトノハコ神戸」というショッピ…

伏し目がちな人々

札幌の室外機は、台に乗せられて専用のカバーをまとっている場合が結構多い。それは雪国ならではの装いだ。降り積もる雪に埋まらぬように、厳しい風による着雪をしのぐように。さらに、屋根からの落雪やつららの落下を避けるために、小さな屋根に守られる場…