はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

世界を感じる近代建築

先週末は、『日常の絶景』刊行記念トークイベントをするために、学芸出版社がある京都に行ってきた。その際に、倉方俊輔さんによる『京都 近現代建築ものがたり』に掲載されている建築物をいくつか見て回った。背後にあるストーリーを踏まえた建築体験は、予…

私的ドボク大賞2021

今年の個人的な締めくくりは、やはり「私的ドボク大賞」で。13回目となるこの賞は、僕がその年に体験したドボク的ネタを振り返り、僕が感激したものを自薦して、僕が選考・表彰するという、誰の共感も求めない自作自演のアワードだ。 昨年に続いてコロナ禍の…

鎮魂の軸線

10月に気仙沼へ取材に行った際、どうしても行きたかった陸前高田の高田松原津波復興祈念公園にも足を伸ばした。最初の訪問時は高台造成のためのベルトコンベアが張り巡らされており、前回は施設のオープン直前だったので、ようやく落ち着いた状態を体験しに…

日常の絶景

『日常の絶景 知ってる街の、知らない見方』という本が出版された。室外機、高低差、避難階段、通信鉄塔、消波ブロック、ダムなど、都市を形成しているのに見過ごされがちな15の断片にフォーカスを合わせて、妄想を交えながらリアルな世界の設定をトレースし…

水平の必然性

道路は地形の傾斜を反映している。アーケードは道路勾配に従っている。歩道に置かれた看板やプランターも地形に従っている。しかし、提灯は重力に従って垂れている。もちろん、道路に貼り付く建物は、重力に起因する人間の都合に従い、水平と鉛直で構成され…

建築の橋

流山おおたかの森駅の前に、新たなビルがつくられた。その外側には開かれたバルコニーのような階段が付帯しており、とても気持ちの良い眺望体験によって、駅前広場の空間を印象的なものにしている。 既存の建物とは、緩やかな円弧を描くデッキで接続されてい…

滑り込みアウト

先週末は出張で仙台に行ってきた。少し無理をすれば日帰りできたのだが、どうしてものんびりとまち歩きをしたいという欲求が抑えられず、宿泊を選択をした。それが大アタリで、活きのいいネタをたくさん仕込むことができた。若干の悔しさを伴って。 たとえば…

内湾の防潮堤

三陸海岸の沿岸漁業から世界の海に出る遠洋漁業を網羅するレンジの広い漁業基地として、さらには水産加工業や造船業でも栄えてきた気仙沼。その発展の起点は、気仙沼湾のさらに奥にある入り江を取り巻く内湾地区と言われている。この場所が海と人を結びつけ…

自然と人為の境界

気仙沼市の本吉地区を流れる沖ノ田川の河口部。2019年にはじめて訪問して衝撃を受けたが、その時はまだ工事中だったため、冷たい小雨が降る中で、あらためて見に行ってきた。 高さ約10mの堤防は、コンクリートでがっちり構築されている。もちろん川を遡上す…

高低差の折り合い

狭い敷地の中で円弧を描くように高低差を解消している階段とスロープ。エッジの効いた段差と滑らかな曲面の対比は、得も言われぬ緊張感がある。周辺も含めたコンクリートのブルータルな造形とテクスチャーが、より印象強いものにしている。 なんというか、こ…

世界の設定

小説、演劇、映画、ゲームといった創作物では、その世界観を構成する要素のパラメーターを、創造主がルールとして設定している。例えば、主人公の性格の形成要因とか、物体に作用する重力のありようとか、ドラゴンの生育環境とか。その設定が強固でなければ…

マイナーな名橋

富山地方鉄道立山駅の近くに、常願寺川を跨ぐ古い中路式の鋼ブレースドリブ・タイドアーチ橋がある。一目見ただけでも、ただものではない風格が漂っていることがわかる。この橋は、常願寺川水路橋(千寿橋)といい、橋梁エンジニアの増田淳の設計で、1931(…

脇を固める

これまでにもまち歩きをしている最中、いろんな耐震改修の事例を写真に撮ってストックしてきた。もちろん知識に基づいて見ていたわけではないので、なんとなくというレベルだが。 先ほどそれらを一覧していたときに気付いたのだが、松江のテレビ局にあったタ…

オリンピックの思い出

ミュンヘンのオリンピックタワーから見下ろすと、フライ・オットーが手がけたユニークな吊り屋根が点在するオリンピアパークはもちろん、広々とした緑地や選手村をベースとした団地、さらにはBMWの本社やミュージアムなどが一望できる。オリンピックが都市に…

アーチを支えるアーチ

スペインのログローニョでたまたま通りがかって見に行ったプラクセデス・マテオ・サガスタ橋(Puente de Práxedes Mateo Sagasta)は、とてもワクワクした。なにしろ、力の流れが魅力的な造形で可視化されているのだから。このような体験は、そう簡単に得ら…

名称表記問題

海外の土木構造物を紹介する場面では、名称表記問題にたびたび直面する。現地語と英語のどちらを採用するか、アルファベットとカタカナのどちらを採用するか、正式名称と通称や俗称のいずれの表記を採用するか。そもそも参照する資料によって名称が異なり、…

静かな採石場

松山の石手川ダムのフーチング。その巧まざる立体構成が見事すぎて、胸が高鳴る。 ダム堤体の大きなカーブとフーチングの直線、極めてシャープでダイナミックな陰や影、コンクリートのかたまり感と手すりや植生に見られる繊細さ、岩盤の複雑なテクスチャーと…

駅前の居場所

多治見駅北口にある「虎渓用水広場」は、一般的な駅前広場のイメージとはかけ離れた、常に水音が響く豊かな空間がある。わかる人にしか伝わらないだろうが、「あつまれ どうぶつの森」の良く出来た島のような、のんびりとしたイメージ。春にここを訪問した際…

残す再開発

ロンドンのセント・パンクラス駅とキングスクロス駅の間に位置し、1820年に開通したリージェンツ運河の北岸にある「コール・ドロップス・ヤード」というショッピング・モール。その名の通り、鉄道と運河を結びつけて石炭を積み降ろすことで産業革命を支え続…

橋梁デザイナー

今夜放送されたテレビ東京「新美の巨人たち」に、橋梁デザイナーという立場の方が取り上げられた。エムアンドエムデザイン事務所の大野美代子さんだ。僕にとっては極めて大きな存在の方で、以前何度かお会いする機会に恵まれたのだが、たいへん残念なことに5…

ゆらぎ

常願寺川の中流域にあった、災害時に出動するのであろうコンクリートブロックたち。砂防の聖地である立山カルデラが源流のひとつであるだけに、もしもの時の備えも気が抜けない。だからと言って、ビシッと完璧な隊列を組んでいるのかと思いきや、ちょっとし…

サイバーパンク景観

『サイバーパンク 2077』というゲームが発売は昨年12月に発売された。信じがたいほどにつくりこまれた世界観とグラフィックは、極めて魅力的。しかし、暴力的なアクション成分が高そうなために、怖じ気づいた僕はプレイしていない。 そもそもサイバーパンク…

エンジニアリングとデザイン

エンジニアリングとデザインの世界をざっくり分けて見た場合、どちらにも中途半端に足を突っ込んだことがある立場としては、基本理念というかアプローチが違うと感じることが多々ある。それはその人が受けてきた基礎教育の方向性に起因しているのではないか…

ラッピングX字歩道橋

X字の横断歩道橋もそれなりに珍しいが、それが補修工事の足場で半分だけラッピングされているとなると、見に行かないわけにはいかない。しかも、近所だし。この交差点は夜に車で頻繁に通るので、気になってはいた。昼間にちゃんと見に行かねばと常々思って…

更新履歴

あるビルの壁面に、さまざまなパイプ、ケーブル、換気口、窓などの設備が複雑に入り組んでいる。その縦横無尽でアクロバティックな様子を眺めていると、それぞれの登場人物が、お互いに文句を言いながらも、尊重しつつ、共存しているように思う。そして、自…

地表と地下のレイヤー

昨日、自動車に支配された地上のレイヤーと、そこから追いやられた歩行者のレイヤーについて、ものすごくぼんやりと考えていた。 きっかけは、札幌の地下。ここは歩行者が追いやられたわけではなく、積雪寒冷地ならではの解決策なんだよなあと思ったところで…

寄り添う

リサイクルボックスの観察は、そこそこ頻繁に行っている。しかし、この二人の愛おしさを超えるものにはなかなか出会わない。 なぜか傾斜がついている場所に置かれて斜めになったリサイクルボックスが、きっちり水平を出してしっかりと佇む自販機に、そっと身…

里山ファンタジー

「多治見市モザイクタイルミュージアム」を設計した藤森照信氏による「ラコリーナ近江八幡」を訪れたのは、およそ1年半前。この施設をざっくり言うと、お菓子屋さんである「たねやグループ」による、お菓子と里山のイメージが織りなす世界観を堪能できるテ…

山の断面

岐阜県の多治見市は古くからの陶磁器の産地である。特に中心市街地から南下した笠原町というエリアは、モザイクタイルが有名である。この地の出身の山内逸三氏が開発した磁器質タイルの新製法を地元企業に広め、戦後の急速な住宅開発の波に乗って圧倒的な国…

可視化された物流

インド洋と地中海を結ぶスエズ運河で大型のコンテナ船が座礁した事故は、発生から6日後にようやく航行再開に至った。懸命に続けられた離礁作業はもちろん、喜望峰ルートに舵を切った場合のコストなどのニュースをドキドキしながら見守っていた。船舶の航行…