はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

水の階段

このところ、立て続けに東北地方を訪れている。先週末は、とても楽しいまち歩きイベントにお呼びいただき、秋田に行ってきた。滞在中はおいしい食事やお酒をたっぷり味わい、僕が萌えるスポットにいくつも連れて行っていただいた。そのひとつが、にかほ市の…

建築旅のヒント誌

昨年の夏はコロナ禍で溜まった航空会社のマイルを活用してヘルシンキ方面に避暑に行ったが、今年は為替も物価もアレなので国内旅行で我慢することにした。行き先を決めるにあたっては、12年目になった愛車で無理なく行ける範囲であることと、本ブログのネタ…

静かな円筒分水工

水稲耕作には水が不可欠。まずは水が得やすい谷地や後背湿地で水田がつくられた。やがて用水路により水を供給する灌漑が行われるようになり、ようやく農地は拡大していった。それは個人でできるものではない。大量の水を確保してそれなりの面積に分配するた…

タリンの配色

それにしても暑い。秋はまだか。 ということで、昨年8月に行ったフィンランドとエストニアの写真を見返して、涼しい夏の思い出に浸っている。訪れたのはヘルシンキとタリンの2都市のみで、せわしないドボク旅行ではなく、じっくりと街を味わう旅にした。久…

記憶の改ざん

1900(明治33)年につくられた、日本初の重力式コンクリートダム「布引五本松堰堤」。埋設型枠として用いられた間知石が、素晴らしい味わいを生み出している、近代水道の礎を築いた重要施設のひとつだ。神戸を訪れた際には、見に行かねばならない場所である…

圧倒的スケール

あこがれの明石海峡大橋をしっかり体験したのは、実ははじめてである。いつか見に行かねばと思い続け、いつでも行けると思い続け、でもまだまだ自分なんてと思い続け、はや四半世紀。このたび本四高速での講演の機会をいただいたことで、先月の瀬戸大橋に続…

砂防堰堤とクマ

福島県を流れて阿武隈川に合流する「荒川」は、国土交通省による水質調査で「水質が最も良好な河川」に選ばれている。なんと、今年で14年連続とのこと。これは熊本の川辺川の18年連続に次いで2番目の記録らしい。そんな清流ではあるが、その名の通り昔から…

夢の特別体験

今月初頭、瀬戸内海をまたぐ本州四国連絡橋の児島・坂出ルートを、さまざまな場所や角度から堪能してきた。上の写真は北備讃瀬戸大橋の塔頂からの眺め。大学生の頃にはじめて訪れてから約30年、夢が叶った瞬間だ。なにしろこれらの長大橋梁群のデザインは僕…

アーチ三兄弟

今年の夏は、福島県を中心にダムや疎水や橋などを車で巡るドボクツアーを強行した。これほど一気にドボク成分をたっぷり味わったのは、いつ以来だろうか。高温高湿度のためか日頃の運動不足のためか単純な体力の衰えのためか、毎晩グッタリして早寝遅起きを…

沼の縁にて

先月末、学生時代に使っていたマニュアルレンズを試してみようかと思い立ち、自分のカメラに取り付けられるようにするマウントアダプターを入手した。CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4 という標準レンズで、ボロボロの CONTAX 139 Quarts を格安で手に…

奇妙な型枠

日が暮れかけた高松の街でホテルに向かって歩いていると、横目に見えた駐車場の奥の壁面に視線が釘付けになった。明暗のコントラストが効いたランダムな模様と規則的な縦のラインから、野趣味溢れる強烈なインパクトを感じたのだ。これはなかなかお目にかか…

更新を続ける都市

コンコルド広場ではアーバンスポーツ、エッフェル塔の前ではビーチバレー、グラン・パレではフェンシングやテコンドー、アンヴァリッドの中庭ではアーチェリー、セーヌ川では開会式やトライアスロン。文字通り都市そのものを舞台としたパリオリンピックは、…

オリンピック・レガシー

オリンピックがもたらした施設には、独特の残り香がある気がする。熱量というか、誇りというか、執念というか。個人的にはそうした雰囲気に魅力を感じるので、開催都市を訪れた時には無意識的にオリンピック関連施設を訪れていることが多い。ブログの過去記…

微ズレ

「塔博士」「耐震構造の父」として有名な内藤多仲が設計した二代目通天閣。見に行きたいものリストの上位に入っているのになかなか行かなかったが、ついに訪問することができた。直線で構成されているのシルエットが、思っていたよりシュッとしていて、かっ…

アンサー展示

大阪で開催された『ヨーロッパのドボクを見てきた展』を見てきた。写真作家の水池葉子さんによる拙著『ヨーロッパのドボクを見に行こう』へのアンサーソングならぬアンサー展示だ。自分が出した本が他者の創作の刺激となり、実際に現地を訪れて写真を撮ると…

イタリア広場の啓示

平日の午後、仕事をするふりをして上野の東京都美術館で開催されている「デ・キリコ展」に行ってきた。それなりに来場者は多かったが、鑑賞時にプレッシャーを感じるほどではなかった。全作品をしっかり眺め、全キャプションをゆっくり読み、オーディオガイ…

新火力発電所

先日、わが家の車を12年目の定期点検に出した。その時にお借りした代車が、なんと赤いFIAT500だった。あまりのかわいらしさに、猛烈にドライブに行きたくなった。仕事がたんまりあったにもかかわらず。どこに行こうかと思案したところ、かつて頻繁に京葉コン…

路面に浮かび上がる地域性

今月の初旬、20年前まで住んでいた札幌を訪問した。いまでも毎年のように訪れているが、いつしか「帰る」という気分は薄れてしまい、すっかり出張に「行く」場所になっている。 関東では朝から半袖がちょうど良い初夏の陽気だったが、小雨が降る札幌の街に到…

東京の新しい視点

「東京建築祭」というイベントが2024年5月25日と26日の2日間を中心に開催された。ロンドンで開催されている「Open House London」や、大阪で開催されている「生きた建築ミュージアム大阪(イケフェス大阪)」と同じように、実際に使われている建築物が特別に…

砂糖の屋根

昨日は千葉港めぐりの観光船に乗った。その際に、製糖工場の三角屋根が話題になった。これって独特な形態だよね、粒状の物体を落としてできる円錐形の傾斜で決まっているんじゃないかな、きっと穀物サイロのような筒状の形態にはできない理由があるんだろう…

鉄道史の断片

群馬県と長野県の境にある碓氷峠は、古来より東日本と中日本の交通の要衝であり、難所だった。鉄道の整備においても、早期から日本の東西を結びつけて殖産進行を図るための国家プロジェクトとして、東海道線と並んで検討されてきたが、この地形に難儀してい…

壁に現れた痕跡

最近気になっている鉄道高架下の歩道を囲むコンクリート擁壁。ここにはさまざまな痕跡が積層して現れており、訪れるたびに新たな魅力が発見できる。 擁壁の天端に降った雨が描く縦ライン、壁面への落書きに上書きした塗料の重なり、生乾きのペンキが重力によ…

被災地メモ

先日射水市を訪れた晩は、富山に来たというのに訳あって広島風お好み焼きを食べた。その店のカウンターで隣にいた地元の方と楽しくお話しした際に、すぐ近くに地震による液状化の被害が出たエリアがあるということを伺ったので、翌日訪れることにした。 そこ…

内川再訪

先月の初め頃、富山県射水市に根ざしてまちづくりを実践している十年来の友人夫妻より、彼らの会社が運営している古民家一棟貸し宿に遊びに来ないかとお誘いいただいた。どうやら能登地震の影響で、富山の観光業もコロナ禍よりも深刻な状況になっている様子…

名建築

本日は強風が吹き荒れる晴天の中、珍しく目白方面を訪れた。事前に目的地へのルートをGoogleマップで確認していたところ、「東京カテドラル」の文字を見つけた。何十年も前から見に行かなきゃと思っていたのに、なぜかその一線を越えていなかった大傑作。こ…

趣味としての写真

昨年末、思いつきでカメラを新調した。これまでずっとマイクロフォーサーズという規格のカメラを使ってきたのだが、センサーサイズが大きいフルサイズのカメラを買ってみたのだ。思いつきにしては大散財だったが、自分の中のなにかが切り替わった気がしてい…

寝正月日記

本年元日に発生した能登半島地震で被災されているみなさま、心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。特異な地理地形に起因する困難な状況の中で、救出や支援に従事されているみなさま、ご安全に活動できるようお祈り申し上げます。収束どころか被害の全貌…

私的ドボク大賞2023

今年はブログ記事が極端に少なかった。コロナ禍の余波で、ここ数年は出張や旅行が激減している。つまり、インプットの機会が少ない状況が続いている。そのため、風景を読み取る感度は弱体化し、アウトプットに向き合うエネルギーも枯渇しがちだったように思…

岩の教会

ヘルシンキの街中の地形は、想像していたよりも緩やかな起伏に富んでいた。そして、そこかしこで岩盤が露出している状況を見かけた。住宅地の中とか、公園の中とか、道路脇とかに忽然と現れる岩肌には、少々ギョッとした。調べたわけではないが、街全体がと…

街路からのまちづくり

先日、3年ぶりに松山に出張してきた。その際に、偶然通って気になった「ロープウェイ街」を再訪した。この街路は、2006年に再整備されたもの。電線類の地中化、バリアフリー化、スラローム線形の導入などとともに、2 車線を1車線に減らし、自転車道を設けて…