はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

自然と人為の境界

気仙沼市の本吉地区を流れる沖ノ田川の河口部。2019年にはじめて訪問して衝撃を受けたが、その時はまだ工事中だったため、冷たい小雨が降る中で、あらためて見に行ってきた。 高さ約10mの堤防は、コンクリートでがっちり構築されている。もちろん川を遡上す…

高低差の折り合い

狭い敷地の中で円弧を描くように高低差を解消している階段とスロープ。エッジの効いた段差と滑らかな曲面の対比は、得も言われぬ緊張感がある。周辺も含めたコンクリートのブルータルな造形とテクスチャーが、より印象強いものにしている。 なんというか、こ…

世界の設定

小説、演劇、映画、ゲームといった創作物では、その世界観を構成する要素のパラメーターを、創造主がルールとして設定している。例えば、主人公の性格の形成要因とか、物体に作用する重力のありようとか、ドラゴンの生育環境とか。その設定が強固でなければ…

マイナーな名橋

富山地方鉄道立山駅の近くに、常願寺川を跨ぐ古い中路式の鋼ブレースドリブ・タイドアーチ橋がある。一目見ただけでも、ただものではない風格が漂っていることがわかる。この橋は、常願寺川水路橋(千寿橋)といい、橋梁エンジニアの増田淳の設計で、1931(…

脇を固める

これまでにもまち歩きをしている最中、いろんな耐震改修の事例を写真に撮ってストックしてきた。もちろん知識に基づいて見ていたわけではないので、なんとなくというレベルだが。 先ほどそれらを一覧していたときに気付いたのだが、松江のテレビ局にあったタ…

オリンピックの思い出

ミュンヘンのオリンピックタワーから見下ろすと、フライ・オットーが手がけたユニークな吊り屋根が点在するオリンピアパークはもちろん、広々とした緑地や選手村をベースとした団地、さらにはBMWの本社やミュージアムなどが一望できる。オリンピックが都市に…

アーチを支えるアーチ

スペインのログローニョでたまたま通りがかって見に行ったプラクセデス・マテオ・サガスタ橋(Puente de Práxedes Mateo Sagasta)は、とてもワクワクした。なにしろ、力の流れが魅力的な造形で可視化されているのだから。このような体験は、そう簡単に得ら…

名称表記問題

海外の土木構造物を紹介する場面では、名称表記問題にたびたび直面する。現地語と英語のどちらを採用するか、アルファベットとカタカナのどちらを採用するか、正式名称と通称や俗称のいずれの表記を採用するか。そもそも参照する資料によって名称が異なり、…

静かな採石場

松山の石手川ダムのフーチング。その巧まざる立体構成が見事すぎて、胸が高鳴る。 ダム堤体の大きなカーブとフーチングの直線、極めてシャープでダイナミックな陰や影、コンクリートのかたまり感と手すりや植生に見られる繊細さ、岩盤の複雑なテクスチャーと…

駅前の居場所

多治見駅北口にある「虎渓用水広場」は、一般的な駅前広場のイメージとはかけ離れた、常に水音が響く豊かな空間がある。わかる人にしか伝わらないだろうが、「あつまれ どうぶつの森」の良く出来た島のような、のんびりとしたイメージ。春にここを訪問した際…

残す再開発

ロンドンのセント・パンクラス駅とキングスクロス駅の間に位置し、1820年に開通したリージェンツ運河の北岸にある「コール・ドロップス・ヤード」というショッピング・モール。その名の通り、鉄道と運河を結びつけて石炭を積み降ろすことで産業革命を支え続…

橋梁デザイナー

今夜放送されたテレビ東京「新美の巨人たち」に、橋梁デザイナーという立場の方が取り上げられた。エムアンドエムデザイン事務所の大野美代子さんだ。僕にとっては極めて大きな存在の方で、以前何度かお会いする機会に恵まれたのだが、たいへん残念なことに5…

ゆらぎ

常願寺川の中流域にあった、災害時に出動するのであろうコンクリートブロックたち。砂防の聖地である立山カルデラが源流のひとつであるだけに、もしもの時の備えも気が抜けない。だからと言って、ビシッと完璧な隊列を組んでいるのかと思いきや、ちょっとし…

サイバーパンク景観

『サイバーパンク 2077』というゲームが発売は昨年12月に発売された。信じがたいほどにつくりこまれた世界観とグラフィックは、極めて魅力的。しかし、暴力的なアクション成分が高そうなために、怖じ気づいた僕はプレイしていない。 そもそもサイバーパンク…

エンジニアリングとデザイン

エンジニアリングとデザインの世界をざっくり分けて見た場合、どちらにも中途半端に足を突っ込んだことがある立場としては、基本理念というかアプローチが違うと感じることが多々ある。それはその人が受けてきた基礎教育の方向性に起因しているのではないか…

ラッピングX字歩道橋

X字の横断歩道橋もそれなりに珍しいが、それが補修工事の足場で半分だけラッピングされているとなると、見に行かないわけにはいかない。しかも、近所だし。この交差点は夜に車で頻繁に通るので、気になってはいた。昼間にちゃんと見に行かねばと常々思って…

更新履歴

あるビルの壁面に、さまざまなパイプ、ケーブル、換気口、窓などの設備が複雑に入り組んでいる。その縦横無尽でアクロバティックな様子を眺めていると、それぞれの登場人物が、お互いに文句を言いながらも、尊重しつつ、共存しているように思う。そして、自…

地表と地下のレイヤー

昨日、自動車に支配された地上のレイヤーと、そこから追いやられた歩行者のレイヤーについて、ものすごくぼんやりと考えていた。 きっかけは、札幌の地下。ここは歩行者が追いやられたわけではなく、積雪寒冷地ならではの解決策なんだよなあと思ったところで…

寄り添う

リサイクルボックスの観察は、そこそこ頻繁に行っている。しかし、この二人の愛おしさを超えるものにはなかなか出会わない。 なぜか傾斜がついている場所に置かれて斜めになったリサイクルボックスが、きっちり水平を出してしっかりと佇む自販機に、そっと身…

里山ファンタジー

「多治見市モザイクタイルミュージアム」を設計した藤森照信氏による「ラコリーナ近江八幡」を訪れたのは、およそ1年半前。この施設をざっくり言うと、お菓子屋さんである「たねやグループ」による、お菓子と里山のイメージが織りなす世界観を堪能できるテ…

山の断面

岐阜県の多治見市は古くからの陶磁器の産地である。特に中心市街地から南下した笠原町というエリアは、モザイクタイルが有名である。この地の出身の山内逸三氏が開発した磁器質タイルの新製法を地元企業に広め、戦後の急速な住宅開発の波に乗って圧倒的な国…

可視化された物流

インド洋と地中海を結ぶスエズ運河で大型のコンテナ船が座礁した事故は、発生から6日後にようやく航行再開に至った。懸命に続けられた離礁作業はもちろん、喜望峰ルートに舵を切った場合のコストなどのニュースをドキドキしながら見守っていた。船舶の航行…

林檎教への入信

現在僕は、Apple社の製品およびサービスを全面的に受け入れる体勢、つまり、アップル信者になる準備を進めている。 僕のMac歴はそこそこ長く、1990年代前半から使うようになり、有名なボンダイブルーのiMacは1998年の発売初日に入手した。仕事の都合でWindow…

キノコ岩橋

構造エンジニアのユルグ・コンツェットが携わったアルプス山中のトレッキングコース「Trutg dil Flem」には、同氏が設計した歩道橋が7つ架かっている。そのうちのひとつに、ものすごく深く狭い箇所を跨ぐ橋がある。英語名は「Mushroom Rock Bridge」であり、…

待望の斜張橋

このところ、10年前の被災地の映像を頻繁に目にする。過去に訪問した場所が画面に登場すると、大きな変化を感じることもある。2019年の夏に桁の架設が進められていた「気仙沼湾横断橋」が、次の土曜日に開通予定だと知り、そのスピードにあらためて驚愕して…

至高の斜張橋

昨年の晩夏、いくつかの偶然が重なったことで、しまなみ海道の多々羅大橋を見に行くことができた。1999年の供用開始から、いつか行かねばならないとずっと思いつづけていた、あこがれの斜張橋。僕の中では世界一かっこいいのではと、密かに思っていた。 やは…

果てなき消耗戦

記憶の中にぼんやりと残っていた写真を、ようやく探し当てることができた。車で長野県小谷村に行った際に、日本海に抜けて親不知海岸まで足を伸ばしたことをすっかり失念していた。 北アルプス山脈の北端が日本海に飲み込まれている場所は、知らない間に親子…

私的ドボク大賞2020

多くの人と同様、今年は僕にとっても極めて特殊だった。自他ともに雰囲気で取り繕ってきた「常識」のようなものがボロボロと崩れ去っていく様子を目の当たりにし、さまざまな面で本質的な見直しを迫られるようになった気がする。刷新できる環境はさっさと変…

体験で引き寄せる歴史

最近、あらためて「近代デザイン」の歴史を時間軸に沿ってざっくり俯瞰する機会を得た。というか、そうせざるを得なくなった。その過程の中で、昨年末に訪れたイギリスでの体験をしばしば振り返っていた。なんせこの国は、近代デザインの源流である産業革命…

社会の積層

東京は「レイヤード・シティ」と表現してもいいんじゃないかとずいぶん前から思い込んでいるわけだが、KITTEの屋上庭園にふらりと立ち寄った際にその思いを強く抱いた。ちょうど、東京の運河クルーズでの体験と同じような印象と言えばいいだろうか。スケール…