はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

2015-01-01から1年間の記事一覧

私的ドボク大賞2015

さてと。今年も個人的な歳末恒例行事『私的ドボク大賞』を催行しよう。これは、僕がその年に体験したドボク的ネタを振り返り、僕が最も感激したものを選定し、僕が心の中で表彰するという、完全な自作自演で誰も共感できないアワードである。 前回の『私的ド…

量が生み出す価値

「量より質」はある場面では正しいと思うけど、それって結果の話なんじゃないかな。特に何かの価値を生み出そうとする場合、「量から質が生まれる」ことの方が正しいんじゃないかと思う。それどころか「圧倒的な量は、質そのものになる」という気もするな、…

水門探訪

今年の夏、オランダのデルタワークス関連の構造物で、個人的に最後の大物であるハーリングフリート水門(Haringvlietdam)をようやく目撃した。5年ほど前に訪問したときには冬期間だったためか、施設が閉鎖されていて断念したんだよね。今年訪問したとき、そ…

もうひとつのクレーンホテル

2014年のお正月に泊まったハルリンゲンのクレーンホテルの情報をツイッターやブログにアップしたら、様々な反響があった。調子に乗って、拙著『ヨーロッパのドボクを見に行こう』にダッチ変態ホテルめぐりコース(p.122-)を追加したほどだ。やはりみなさん…

橋マニア疑惑

昨日、職場に出入りしている本屋さんから、カルロ・スカルパの作品集を勧められ、あっさり購入した。つい先ほども休日出勤の疲れを癒やそうとニヤニヤ眺めていた。やっぱり僕は大好きだなあ、スカルパの空間構成や素材の扱いやディテールの造形が。 前にも書…

ピカピカ足場

光輝く工業製品が、これでもかと言うほどみっちりと並べられている光景に、ぞわぞわした。しかも縦方向なので、なおさらだ。 ちなみにこの高層集合住宅、朝は写真のようなスケルトン状態だったが、夕方には表面にパネル材が貼られ、マッシブな箱に変貌してい…

海運の終着点

船は今も昔も長距離大量大型輸送の主役だ。時間と気象の要素を除けば、最も効率がいい輸送手段だもんね。だから海上輸送の要となる港湾には、地域産業の物資が集積しているので、その地域の特性を体感することができる。でも、おいそれと立ち入れるわけでは…

工場萌えクルーズ

昨日は『工場萌えクルーズ リバイバル』にて、たっぷり3時間を費やして川崎の京浜コンビナートを船で巡った。予定していた出張がなくなったので、急遽参加させていただいた。 実はこの企画、7年前の立ち上げ時には僕もお手伝いしていた(過去記事:秋の工…

芝浦ループ

またしても船に乗って東京を満喫する機会を得た。もちろん今回も仕事だよ。水面から東京を捉え直すために、10名弱の特別チームが編成され、本気で撮影をするってものだ。途中昼食休憩をはさみながら、合計約8時間もトイレのない船に揺られ続けた。極めて楽し…

荒野の電波塔

東京が生み出す大量のゴミによってできた新たな地形「中央防波堤」を、東京港を巡る船から眺めると、その標高の高さに愕然とする。そして、人口の荒野の向こう側にあるスカイツリーは、まったく見たことがないような眺めになっている。東京港ってすぐそこに…

海から見る電波塔

本日は東京港を巡る某クルーズ船に乗った。僕は様々な港湾でクルーズ体験をしてきたが、これほどフラストレーションがたまる船にはなかなかお目にかかれない。なにしろ、ものすごくいい天気なのにオープンデッキがないのだ。窓は塩で汚れているし。ベテラン…

アイデアの実現

なんだかんだ言って、人は自分が理解できないことを否定しがち。 「なんかムカつく」「僕はなんとなくキライだな」「そんなこと教わってない」「自分には関係ないし」「今時の若いヤツは」「常識を知らない」とかとか、自分にとって好都合な言い方をいろいろ…

締めくくりの展示作品

東京都現代美術館の地下駐車場がかっこよかった。様々な現代アートをたっぷり鑑賞した後にこの空間を体験すると、ある種の高揚感が得られるよ。断熱材で覆われた空調ダクトのまるでザハ建築のようなスピード感と、キリッとした駐車升の整列感の対比なんて、…

ハイブリッド・パラダイス

何度も言うけど、僕はなぜか大阪と縁遠い。先週末は、昨年の12月から数えると3回目の訪問だったので、珍しく頻繁に訪れていることになる。しかし、打合せやらイベントやら雨やらで、ろくにまち歩きやドボク鑑賞ができないもどかしさは相変わらず。今回の訪…

気になる間取り

先日訪問した鳥取県倉吉市にあった、ものすごく複雑な構成のお宅。ステキすぎてしびれた。段差だらけの外壁面、入り組んだ屋根、連鎖する雨樋。無意識のメタボリズムなんだろうか、ずっと眺めていても飽きないよねえ。何度も写真を見返してみても、その間取…

明確な歩車分離

ものすごく久しぶりに仙台を訪れた。これまで何度も立ち寄ったことはあるのだけど、たいてい目的地ではなく経由地だったので、ほとんど印象がないままだった。今回は少し街を歩いてみようと思い、用務の翌日に時間を確保していたのだが、あいにく雨に降られ…

翼を広げた黒い鳥

構造の中に潜む美しさを、過剰なまでに引き出すことが得意な、サンチャゴ・カラトラバが手がけた駅舎「リヨン・サン=テグジュペリTGV駅」が、リヨンの郊外にある。まるで翼を広げた鳥のような、ダイナミックなフォルム。駅舎という建造物ではなく、中に入れ…

韓国の秘密基地

3年ほど前、韓国の光陽市と麗水市を結ぶ吊橋・イスンシン大橋(デザインによる技術発展)を、そのデザインに携わった日本人チームの一員としてたっぷり見学させていただいた。主塔や橋面に登らせてもらったり、これでもかと言うほどのレア体験を味わうこと…

谷を守るトンネル

9月に再訪した立山カルデラでは、昨年行くことができなかった白岩砂防堰堤右岸側の岩盤を補強する対策工を見学させていただいた。これがまたすごかった。行き止まりのトンネルと、その壁面にボツボツ突き出したアンカーヘッドが生み出す、あまりにも迫力のあ…

ローマ人の仕事

ローマ人が二千年前につくった南フランスの水道橋「ポン・デュ・ガール」のアーチを下から見ると、つくりが異なる石橋が並んでいることがわかる。写真の左側(上流側)がローマ人の手によるオリジナルであり、右側(下流側)がナポレオン3世の命による修復…

『ヨーロッパのドボクを見に行こう』のリアルツアー!!

【本ツアーは中止となりました!!(11月25日)】 たいへんお待たせしました。ようやくお知らせできる状態になりました。 『ヨーロッパのドボクを見に行こう』に掲載したモデルコースA『南フランス周遊コース』を、本当にやりますよ!!近畿日本ツーリスト…

時の経過

今年3月の訪問以来、再び福島県双葉郡富岡町を訪問した。ここは長い間、警戒区域や帰宅困難区域になっていたこのエリアだ。地震と津波で被災した当時のままの箇所もまだまだ多いが、半年前と比べてがれきの片付けが進んだ箇所もあった。そして黒い除染袋の…

環状列塔

先日、はじめて鳥取と島根を訪問した際に、せっかくの機会なのでベタ踏み坂として有名になった境港の「江島大橋」に立ち寄ろうと思い、レンタカーを走らせた。するとその途中で「なんだこれは!!ひょっとしてアレを降臨させるためのものなんじゃないか!?…

壁が隔てるもの

氷見の防火建築帯の周辺は、延焼を防御するという役割が示すとおり、木造建築の密集地帯である。防火建築帯の屋上から裏側をから眺め、ああこのエリアに火の粉が飛ぶのを防ぐのかと思った次の瞬間、このエリアが火の海になった時に体を張って外に広がるのを…

防火インフラ

高密度の木造建築群は、燃えはじめてしまうとたいへんな大火になってしまう。木造住宅が多い日本では、都市の集積が進行するにつれて深刻な社会問題になっていった。そして1950年代から60年代を中心に、横に長いコンクリートの建物によって都市の延焼を食い…

地域の代表的な風景

「地域を代表する風景」ってのは、郷土史のフィルターを経て古典化し、一般的な価値を獲得したものだろう。そういうものでないと、観光パンフレットに掲載しにくいだろうし。それ自体はそれほど疑ってないのだけど、個人的な地域のイメージとなると話は少々…

偶然のご縁を大切に

先日、鳥取方面への出張兼旅行に行く際、少し早く羽田空港に着いたのでコーヒーでも飲もうかとゲートラウンジの一番奥にあるスタバに立ち寄った。そこで、任務として遂行したトークイベント(鳥取県公式サイト:土木遺産ツアー&どぼくカフェ)、苫田ダムの…

デザインの勝利

今朝はいつか行かねばと思い続けてきた岡山県にある「苫田ダム」を、ようやく見に行ってきた。一昨日に訪問するつもりでいたのだが、雨天のため急遽予定を変更したことが功を奏して、快晴に恵まれた。 このダム、なにかと整っており、かっこよすぎて困った。…

格子のダム

自分が一番好きなダムってなんだろうか。まあ一番なんて決められないよね、みんなそれぞれ好きだもの。とは言え、僕の場合は若干の傾向はある。膨大な水圧に対して圧倒的なボリュームで対抗するものよりも、使用する材料を最小化しつつ構造で対抗するものが…

みんなでつくった黄色い道

先月訪問したロッテルダムでは雨の中、2015年にクラウドファンディングによってつくられたばかりの総延長390mの木製歩道橋「ルフトシンゲル(Luchtsingel)」を鑑賞してきた。25ユーロの出資につき1枚、壁高欄の木材に名前が刻まれているらしい。デジタル的…