はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

2007-01-01から1年間の記事一覧

ダムツアー

山の中にひっそりとたたずんでいる発電用ダムの提体。階段状の越流部や落水の表情がとてもよい味を出している。 だいぶ前のことになるが、札幌に住んでいた頃、デートと称してダムツアーを強行したことがある。狙いを定めた地域の地図を見て、ダム湖らしき場…

景観特区

近年、この時期になると個人の住宅をイルミネーションで飾り立てることが流行っている。つい先日、それらが群生している地区を、友人に連れられてじっくり散策してきた。これはすごい!という高レベル(?)の住宅も稀にあったが、ほとんどはどこか間が抜け…

しくじった擬態

自然を模倣するのは難しい。表層だけを模倣すると、ろくなことにならない。積雪寒冷地の切土法面には、雪崩防止柵という工作物がよく設置される。法面の雪が一気に道路側に滑ると、大きな災害になるからね。通常の雪崩防止策は、スチールのパイプを組んだも…

内側の悔しさを超えて

先日、高速道路が交錯するジャンクションの情景を超広角で撮影している写真集が発売された。その名も、『ジャンクション』(メディアファクトリー)。著者は、団地界の有名サイトである住宅都市整理公団や最近設立されたばかりの日本ジャンクション公団の総…

スーパーインポーズ

札幌ドームの外観は、なんとなく工業製品っぽい。まるでマウスのような曲面、プラスチックにシルバー塗装したような表面、スパッと切ったような断面、アールがかけられた端部処理、外周を取り巻く水平のパーティングライン。さらに、サッカー用の天然芝をド…

去りゆく老兵

デンマークの鉄道用海底トンネルの坑口付近に、その建設で使われたトンネルボーリングマシンのカッターヘッドが展示というか放置されていた。 人によっては、ただの汚い鉄の塊に見えるかもしれない。しかし、幾何学的な形態や錆びた表面は美しさを帯び、遺跡…

亜空間への入り口

地下鉄のホームの端から見た、シールドトンネル内部の様子。 この真円の断面を生み出すシールド工法とは、巨大な掘削機械によってモグラのように穴を掘りながら、同時にコンクリートの壁を構築していくもの。コンクリートの壁は、工場で生産された精度の高い…

縁や運や偶然

個人的な話で恐縮だが、僕はここ一年ほど、工場鑑賞を中心としながら、「縁」や「運」や「偶然」を感じる機会がとても多い。そんな人間関係は、実に心地よい。こうした現象は、やや神がかったように語られることが多いけど、その正体はなんなのだろうか。仮…

熱の道

コンビナートでは、大小のパイプをよく見かける。パイプが群になって、全体が構成されているようにも感じる。個人的には、大好きな存在だ。そもそもコンビナートは『結合』という意味のロシア語なので、プラント同士をつないで様々な物質をやり取りしている…

懸垂

懸垂式モノレールの軌道。モノレールの形式を大別すると、車両が軌道を跨ぐ「跨座式」と、軌道から車両を吊り下げる「懸垂式」の2通りがある。 詳しく知らずに書いてしまうが、懸垂式のメリットって、なんだかわからない。建設コストは跨座式よりもずっと高…

都会らしさ

高度空間利用された汐留の道路用地。上から、新交通システムの軌道、周辺の建物と駅舎を結ぶペデストリアンデッキ、道路がある地盤、サンクンガーデンがある地下空間の4層構造である。 ふと気がつくと、都市空間は人の空間認識能力を超えるほどの複雑さを伴…

反復

決してこの事例が良いとは言わないが、プレキャスト部材は面白い効果を生み出す。つまり、繰り返しの効果。単調なものが繰り返され、一定のリズムを生み出し、全体を構成する。そのスケールが大きくなればなるほど、または、基本の単位が小さくなればなるほ…

ジャンクション

個人的なことだが、都市内のジャンクションは異様にカッコいいと思っている。住宅都市整理公団の大山顕さんが、超広角で撮影したJCT写真コレクションをずらりと並べている。これ、すごい。高架橋はかつて、都市の先進性を象徴する構造物だった。東京オリ…

竹細工

中国の建設足場には、竹が使われる。という話は、本当だ。昨年上海を訪れたとき、たくさん鑑賞してきた。さすがに巨大な新築ビルでは使っていないようだが、ちょっとした集合住宅や外壁工事など、街のあちらこちらで目にすることができる。遠目から見ると、…

道路と航路

湾を跨ぐ道路は、航路を横切るケースが多い。 航路を確保するためには、その区間に橋脚を入れられないだけでなく、路面の位置も上げなければならない。路面の位置が高い橋は、建設費も高い。だから、航路以外の部分はできるだけ低くしたい。 という当たり前…

フラクタル作業

ビルなどをつくる際に、建設資材を吊り上げるタワークレーンは不可欠だ。 ビルの成長とともに、どんどん高いところに移動して、大活躍する。 役目を終えたタワークレーンは、どうなるか。 彼よりも少し小さなクレーンを吊り上げて設置し、彼を解体して吊り降…

工場鑑賞ツアー

千葉県が主催する『工場鑑賞ツアー』モニターの募集が、いよいよ開始された。千葉のウォーターフロントの支配者として君臨する京葉臨海コンビナートを、外から内まで、朝から夜まで、じっくり眺めて味わいつくそうという、一風変わった産業観光プログラムだ…

正当な意地悪

ジェットコースターを構造物として眺めてみても、結構面白い。力の流れが明確に形に現れていたりする。複雑な取り合いをうまく収めていたりする。それはそうと、眺めたり乗ったりする以上に、ジェットコースターのデザインって面白そう。きっと、経験による…

純粋地下街(2)

前のエントリの続き。 韓国にはどこにもつながっていない「純粋地下街」がいくつか存在している。日本では、ほぼ全ての地下街が鉄道駅に接続しているというのに。 韓国で最初の地下商店街がソウル市庁前に開業したのが1967年。最初の地下鉄1号線が開通した…

純粋地下街(1)

地下街については、10+1のウェブサイトに「地下設計製図資料集成」というフィールドワーク記録集がある。何かとわかりにくい地下空間を理解するための手がかりとなる、とても面白い地下論考がたくさん綴られている。 その中で、日本で最初に建設された神…

蛇の橋

縦断や横断が大きく変化する橋梁は、施工がとても難しいと聞く。この橋をつくった施工者の方々のご苦労を称えたい。しかし、そんな感情もねじれた形になってしまう。こんな大胆な線形の橋は、そうそうお目にかかれない。ものごとの本質を見失ない、エンジニ…

チバ・シティ

「港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった。」サイバーパンクの決定版として名高いウィリアム・ギブスンの小説『ニューロマンサー』の冒頭には、こんな風に千葉港の情景が描かれている。この小説が書かれた80年代の前半、工業地帯はまさに…

自然な拒否反応

フランスの文人であるモーパッサンは晩年、1889年のパリ万博に際して建設されたエッフェル塔の中にあるレストランに、足しげく通っていたそうだ。その理由は「ここなら、あの忌々しい巨大な骸骨が目に入らない」からなんだと。美しいパリの街の景観を損なう…

もやし

等間隔で並ぶ照明柱は、人の意識に上りにくい。彼らは“夜間に路面を照らす”という重責を果たすことが本懐であり、“昼間に目に付く”必要など全くない。勢いで目立つように工夫してしまったものの多くは、残念なことになっているのが現実だろう。 かくいう僕も…

2枚のレンズ

ピッツバーグのダウンタウンは2つの川の合流部に位置しているので、必然的に多くの橋が架けられている。それらの橋はみな、申し合わせたように鋼製の年代モノである。かつて鉄の街として栄えていた証なんだろうね。中でも目を引くへんてこな橋がある。“レン…

住む橋

世の中には橋梁と一体になった住宅物件ってのがある。中でも、フィレンツェのポンテヴェッキオは最も有名だと思う。でも、わざわざ海外に行かなくても、日本にも優良物件がある。総武線の秋葉原浅草橋間のコンクリートアーチ橋の区間は、オススメ物件のひと…

拡大コピー

多くの橋梁では、地震のエネルギーによって橋桁が落ちることを防ぐために、“落橋防止装置”というものが取り付けられている。耐震基準が低かった頃に架けられた古い橋梁では、後から無理やり取り付けられるので、見た目に馴染まないことが多い。この古い鉄道…

都市の緑

首都高を走っていると、東京は緑が多いことに気づく。皇居、赤坂離宮、新宿御苑、明治神宮などの大きな樹林があるからだろう。それに、街のあちこちで街路樹が整備されてたり、ちょっとした公園があったり、ちょっとした屋敷林があったりする。つまり、東京…

水の表情

とあるフィルダムの越流部。何の変哲もないダムではあるが。湖水が天端のアールを滑らかに降りていくと、途中から水の流れが崩れ、空気を含んで白いレースができる。それらが複合して微妙な文様を描きながら斜面を滑り降り、床面に叩きつけられて勢いを失う…

有機的無機物

“有機的なデザイン”って言葉はよく耳にするけど、それは、あくまでも造形や装飾の“テイスト”の話だと思う。“テイスト”は人による好みの違いが大きいので、公共構造物のデザインでは、かなり気をつけなければならない。2004年に見たときは栗東橋という名称だ…