はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

都市

女川のまち

女川原発2号機が再稼働したとのこと。2011年の巨大地震と津波によって外部電源の喪失、地下設備の浸水などの被害が出て稼働停止し、高さ29mの防潮堤を整備するなどの安全対策工事を進めて、2020年に原子力規制委員会の審査を通過した。ここに至るまでに、ず…

更新を続ける都市

コンコルド広場ではアーバンスポーツ、エッフェル塔の前ではビーチバレー、グラン・パレではフェンシングやテコンドー、アンヴァリッドの中庭ではアーチェリー、セーヌ川では開会式やトライアスロン。文字通り都市そのものを舞台としたパリオリンピックは、…

微ズレ

「塔博士」「耐震構造の父」として有名な内藤多仲が設計した二代目通天閣。見に行きたいものリストの上位に入っているのになかなか行かなかったが、ついに訪問することができた。直線で構成されているのシルエットが、思っていたよりシュッとしていて、かっ…

東京の新しい視点

「東京建築祭」というイベントが2024年5月25日と26日の2日間を中心に開催された。ロンドンで開催されている「Open House London」や、大阪で開催されている「生きた建築ミュージアム大阪(イケフェス大阪)」と同じように、実際に使われている建築物が特別に…

街路からのまちづくり

先日、3年ぶりに松山に出張してきた。その際に、偶然通って気になった「ロープウェイ街」を再訪した。この街路は、2006年に再整備されたもの。電線類の地中化、バリアフリー化、スラローム線形の導入などとともに、2 車線を1車線に減らし、自転車道を設けて…

キノアト

中古車販売会社の店舗前に限り、街路樹や植栽が枯れたり、伐採されたりしているという。もし事実であれば、とんでもないことである。公共の財産を私的な目的でなきものにするという事態、完全に常軌を逸している。関係各位には厳正な対処をお願いしたい。 そ…

セーヌ川に架ける橋

またまた古いフィルム写真から。1999年にパリを訪れた際には、供用を目前に控えて静的載荷試験中だったレオポール・セダール・サンゴール橋(当時の名称はソルフェリーノ橋)を訪問した。それは、設計者のマルク・ミムラム氏に現場で解説していただくという…

埋立地の新しい街

僕が学生だった1990年頃、幕張新都心はまっさらな埋立地に突然たくさんの高層建築が生えた、不思議な街だった。その頃はまだ居住区が整備されておらず、そこかしこに空地が目立つ状況だったように思う。自分の卒論では、キロの単位で視距が確保できたこのエ…

駅前の居場所

多治見駅北口にある「虎渓用水広場」は、一般的な駅前広場のイメージとはかけ離れた、常に水音が響く豊かな空間がある。わかる人にしか伝わらないだろうが、「あつまれ どうぶつの森」の良く出来た島のような、のんびりとしたイメージ。春にここを訪問した際…

残す再開発

ロンドンのセント・パンクラス駅とキングスクロス駅に近接し、1820年に開通したリージェンツ運河の北岸にある「コール・ドロップス・ヤード」というショッピング・モール。その名の通り、鉄道と運河を結びつけて石炭を積み降ろすことで産業革命を支え続けた…

地表と地下のレイヤー

昨日、自動車に支配された地上のレイヤーと、そこから追いやられた歩行者のレイヤーについて、ものすごくぼんやりと考えていた。 きっかけは、札幌の地下。ここは歩行者が追いやられたわけではなく、積雪寒冷地ならではの解決策なんだよなあと思ったところで…

社会の積層

東京は「レイヤード・シティ」と表現してもいいんじゃないかとずいぶん前から思い込んでいるわけだが、KITTEの屋上庭園にふらりと立ち寄った際にその思いを強く抱いた。ちょうど、東京の運河クルーズでの体験と同じような印象と言えばいいだろうか。スケール…

毎日が遊園地

3月に広島に出張した際に、ずいぶん前から「いつか見に行くリスト」に入れていた「スカイレール」を、ようやく体験できた。噂に違わず、血湧き肉躍る唯一無二の新交通システムだった。なにしろ懸垂式モノレールなのかロープウェイなのかゴンドラなのかケーブ…

不当な扱い

今日は駐車場に関する文章を書いていたのだが、すっかり迷走してしまった。駐車場って現代の都市において極めて重要な役割を担っているのに、不当に低く扱われているんじゃないかと憤慨しはじめたのだ。 駅とか空港などの交通モードが切り替わる場所って、そ…

廃天井川という器

滋賀県の草津市に、江戸時代から引き継がれた都市内の天井川の跡地という、極めて特殊な環境に立地している帯状の公園がある。「de愛ひろば」と名付けられた公園は、中央部にいると両側が囲まれたスリバチ状の窪地なんだけど、両端部に行くと街を見下ろすこ…

至高の視点場

昨年の3月、大手町と神田の間に「竜閑さくら橋」という歩道橋が架けられた。昭和につくられた首都高の間を抜けて、大正につくられた鉄道橋に近接しつつ、江戸につくられた日本橋川を跨ぐという、超絶複雑な都市環境を明快にクリアしていることは本当にすごい…

崩壊した壁

今日がベルリンの壁崩壊から30年という記念日であることを先ほど知った。もうそんなに経ったのかという気持ちと、まだ30年しか経っていないのかという気持ちと、どちらもある。振り返ってみると、この日を境に世界が動いたことは間違いなさそうだ。 僕がベル…

用水の恩恵

三島市街地を貫流する源兵衛川。いろんな賞を受賞している有名物件なので、ずいぶん前から見に行かなきゃと思っていたのだが、1ヶ月ほど前にようやく実行した。大きな声では言いにくいが、ここの写真や論評などはチラホラ見ていたのに、どこかピンときていな…

転換のシンボル

あけましておめでとうございます。本年も本ブログを生暖かく見守ってくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。僕は新年早々、休暇をフル利用して海外逃亡しており、スペイン北部のバスク地方とリオハ地方を巡っている最中です。まあ自慢なわけですが…

仙台スリバチ

先週の日曜日、とある学生コンペの審査をするために仙台の東北大学に行ってきた。せっかくの機会なので、個人的に延泊して翌日に市内散策したいと思っていたのだが、その行程は全く考えていなかった。このため、懇親会の席で仲良くなった東北大の学生に「仙…

街のおもしろポイント

ときどき、自分の意思とは無関係にセレクトされた地方都市に出張に行くことがある。そんな時には、まち歩きのトレーニングをする機会だと捉えて、現地のことを事前に調べずに乗り込むようにしている。 少し前には、長野市に行ってきた。用務の隙間に1時間ほ…

SF都市

上海で未来の街を見てきた。あのザハ・ハディドが手がけた、巨大オフィスビル群「凌空SOHO」だ。あまりにも強烈なクセを有するこの空間は、あの手この手でケチをつけようとする人も極めて多いだろう。自分の理解を超えるものに対しては、どうしても警戒しち…

空飛ぶ鉄道

ついに念願を果たした。遅まきながら、年末にヴッパータール空中鉄道をたっぷり体験してきたのだ。湘南モノレールのWEBマガジン「ソラdeブラーン」の執筆陣としては、佐藤淳一さん、西村まさゆきさんに続く3人目ということになるだろうか。かつて佐藤さんよ…

計画の慣性

9月の出張でたまたま見かけた「土浦ニューウェイ」の高架橋の造形はとてもレベルが高く、桁と橋脚の連続性やアールの取り方などのおさまりがたいへん素晴らしい印象だった。それはさておき、翌月にすぐさま再訪したほど違和感のインパクトがすごかった。そ…

竪穴式バス停留所

つくば市にある「吾妻バス停」がすごかった。まるで露天掘りの採石場の底にいるような、コンクリートの垂直壁で囲まれた圧迫感に満ちた半地下空間。たいへん魅力的だし実際にテンションが上がりっぱなしだったのだけど、一般的には不人気なのかもしれない。…

不思議な高架道路

水戸出張の翌日は土浦に移動し、無事に用務が終わった。帰りの電車まで少し時間が確保できたので、まち歩きを開始した。ところが、前日の慣れない革靴とスーツによるダメージは大きく、比較的早々にへこたれた。体調も体勢も整っていない状態では、見えるも…

魅惑の水戸

先週末は用務があって水戸に出張してきた。僕が住む千葉からは微妙に近くて遠いので、行く機会がありそうでほとんどなかったし、イメージもありそうでほとんどなかった街だ。このため、駅前に降り立ったときには衝撃を受けた。なんでかって言うと、地形の変…

単線モノレール

先日、湘南モノレールを体験してきた。乗るのも見るのもあまりにも楽しかったために、終点の「湘南江の島駅」まで行ったにもかかわらず、夏の海を体験することをすっかり忘れてしまった。 千葉都市モノレールと同様の軌道から車両を吊す「懸垂式」なのだが、…

海上都市の領域

前回エントリの投稿後、学生時代に撮影した膨大な調査写真をずいぶん前に当時在籍していた研究室から引き上げたようなことを思い出して、職場の棚の最上部に押し込んである段ボール箱に手を突っ込んでみた。すると驚いたことに、「アクアポリス」の写真があ…

クレーン・フェス

市電に乗って熊本の交通センター(バスターミナル)の脇を通ったところ、あたかも熱気に包まれたフェスが行われていると錯覚するほど、数多くのクレーンやパイルドライバがじゃんじゃん稼働していた。そりゃもう、かっこよさにしびれるよねえ。その時は別の…