はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

橋梁

高架橋再発見

無性に知らない土地を散歩したくなり、用務より少し早めのスケジュールで福岡に到着した。いわゆる前乗りというやつだね。もう日が暮れかけていたが、あてもなく足が向くままにホテルの近くを彷徨った。このような体験をする時間を強制的に確保することは、…

かわいい水路橋

不毛の大地だった郡山の安積原野を、猪苗代湖から引いた水で潤した明治の大事業・安積疏水。日本三大疏水のひとつに数えられているね。終戦後には悪化していた食糧事情を改善するために、農地のさらなる拡大を図る新安積疏水の事業が進められた。 その仕上げ…

誰も見ないデザイン

湯西川ダムによる湯西川湖の最上流部に、「仲内大橋」というPCラーメン橋がひっそりと架かっている。小判型橋脚とウェブが少し斜めになった桁の剛結部のおさまり、桁の下端が描く伸びやかなライン、橋脚の型枠の割り付け、シンプルな橋面工など、なかなか素…

圧倒的スケール

あこがれの明石海峡大橋をしっかり体験したのは、実ははじめてである。いつか見に行かねばと思い続け、いつでも行けると思い続け、でもまだまだ自分なんてと思い続け、はや四半世紀。このたび本四高速での講演の機会をいただいたことで、先月の瀬戸大橋に続…

夢の特別体験

今月初頭、瀬戸内海をまたぐ本州四国連絡橋の児島・坂出ルートを、さまざまな場所や角度から堪能してきた。上の写真は北備讃瀬戸大橋の塔頂からの眺め。大学生の頃にはじめて訪れてから約30年、夢が叶った瞬間だ。なにしろこれらの長大橋梁群のデザインは僕…

アーチ三兄弟

今年の夏は、福島県を中心にダムや疎水や橋などを車で巡るドボクツアーを強行した。これほど一気にドボク成分をたっぷり味わったのは、いつ以来だろうか。高温高湿度のためか日頃の運動不足のためか単純な体力の衰えのためか、毎晩グッタリして早寝遅起きを…

鉄道史の断片

群馬県と長野県の境にある碓氷峠は、古来より東日本と中日本の交通の要衝であり、難所だった。鉄道の整備においても、早期から日本の東西を結びつけて殖産進行を図るための国家プロジェクトとして、東海道線と並んで検討されてきたが、この地形に難儀してい…

国宝橋

たいへんめでたいことに、先日、熊本県山都町に架かる国内最大級の石造アーチ橋である「通潤橋」が、国の文化審議会で国宝に指定するよう答申された。橋という土木構造物が国宝に指定されるのは、はじめてのことだという。そうか、これまで橋は国の宝として…

新幹線の代替策

渦潮で有名な鳴門海峡を跨いで淡路島と四国を結ぶ大鳴門橋は、1985(昭和60)年に開通した長大吊橋だ。当初は本州と四国を結ぶ新幹線が計画されていたことから、大鳴門橋の補剛桁の中央部は新幹線が通れる設計になっているという。その後いろいろとあったの…

干潟の上の橋

吉野川の河口付近には、多様な生物相を育み水質浄化にも寄与する干潟がある。その上空を跨ぐように、市内の渋滞緩和を主目的とする「阿波しらさぎ大橋」が2012年に架けられた。その立地特性から干潟の環境に配慮した構造物とすることが求められ、斜張橋とケ…

山奥の名橋

世界的に高い評価を得ている橋が、徳島県の山奥にある。2004年に完成した「青雲橋」という曲弦トラス橋の一種で、橋長97m、幅員5m、水面からの高さ約40mの車道橋である。fib(国際構造コンクリート連合)が2006年の最優秀賞に選定したことを記念するプレート…

吊橋改アーチ橋

ひょんなことから「とくしま橋[はし]ものがたり」という、吉野川に架かる橋について記述された本をいただいた。そして、そこに掲載されていた三好橋という橋に目を奪われ、早速訪問することにした。なにしろ、もともと輝かしい吊橋だったのに現在はアーチ…

橋上橋

先日開催された「小谷村砂防ダムツアー」の道中にて、衝撃の橋を紹介していただいた。なんと、旧橋であるコンクリート桁橋の直上に、新橋である鈑桁橋が架けられているのだ。ぱっと見たところ、旧橋はコンクリートの高欄もそのままだし、ずいぶん健全な状態…

エレガントな吊橋

また古いフィルム写真から。1999年にデンマークを訪れた際に、前年の1998年に完成したばかりのグレートベルト・イースト橋という長大吊橋を見に行った。中央支間長1624mは当時、数ヶ月前に完成した明石海峡大橋に次ぐ世界2位の長さを誇っていた。 現地で解説…

インテグラル・ブリッジ

たしか1999年の、僕が30歳になる直前のこと。当時会社勤めだった僕は、主に橋のデザインを調査する視察団に混ぜていただき、大学の先生や実務家などとともに、コペンハーゲン、シュツットガルト、パリの3都市を1週間かけて巡るという体験に恵まれたことがあ…

マイナーな名橋

富山地方鉄道立山駅の近くに、常願寺川を跨ぐ古い中路式の鋼ブレースドリブ・タイドアーチ橋がある。一目見ただけでも、ただものではない風格が漂っていることがわかる。この橋は、常願寺川水路橋(千寿橋)といい、橋梁エンジニアの増田淳の設計で、1931(…

アーチを支えるアーチ

スペインのログローニョでたまたま通りがかって見に行ったプラクセデス・マテオ・サガスタ橋(Puente de Práxedes Mateo Sagasta)は、とてもワクワクした。なにしろ、力の流れが魅力的な造形で可視化されているのだから。このような体験は、そう簡単に得ら…

待望の斜張橋

このところ、10年前の被災地の映像を頻繁に目にする。過去に訪問した場所が画面に登場すると、大きな変化を感じることもある。2019年の夏に桁の架設が進められていた「気仙沼湾横断橋」が、次の土曜日に開通予定だと知り、そのスピードにあらためて驚愕して…

至高の斜張橋

昨年の晩夏、いくつかの偶然が重なったことで、しまなみ海道の多々羅大橋を見に行くことができた。1999年の供用開始から、いつか行かねばならないとずっと思いつづけていた、あこがれの斜張橋。僕の中では世界一かっこいいのではと、密かに思っていた。 やは…

特殊歩道

シュッとした白い二連アーチを持つ広島の太田川大橋は、その自転車歩行者道がものすごく特徴的で、これを渡ることによって橋梁景観の体験が豊かになる印象を持った。なにしろそのシークエンスがとても印象的なので。 写真奥の左岸側は、下流側の車道よりもわ…

アーチで補剛

2014年に竣工した広島の太田川大橋は、僕の中にある単弦アーチ橋のスタンダードなイメージからかっこいい方向にシフトしているので、ずっと気になっていた。それは、わずかに低く見えるアーチライズ、透過性があって軽快な印象のアーチリブ、下部工と一体に…

時代をつくった橋

世界中の国がその往来を閉ざしているいま、ほんの3ヶ月前にイギリスに行ったことが、はるか昔の夢のように思えてくる。でも確かにブルネルの偉業を見てきたんだよな。 そのブルネルを含むイギリスの土木技術者は基本的に経験主義的な解き方をしており、その…

若手による設計

エイボン川の渓谷を跨いでブリストルの街を眼下に眺めるクリフトン吊橋は、156年前の1864年に完成した現役の車道橋。本当にすごいよねえ、僕も大興奮で徒歩と車の両方で渡ったよ。設計者はイザムバード・キングダム・ブルネル(Isambard Kingdom Brunel、180…

イギリスの大偉人

イギリスの公共放送局であるBBCは2002年、「100名の偉大なイギリス人(100 Greatest Britons)」というランキングを発表した。その当時、僕のまわりがざわついたことをなんとなく憶えている。なにしろ、超有名人を押さえて第2位となった人物が土木技術者のイ…

感動できる構造

お正月のバスク紀行より、一見すると地味なんだけど高い感動が得られるエスカルドゥナ橋を。カルロス・フェルナンデス・カサド事務所の設計で1999年に竣工したこの橋は、曲線桁の上部にがっちりした大きなトラスが斜めに配置され、さらに幅員が広い歩道上部…

スケールの拡大

ワンテンポ遅い夏休みを取って、復興事業が急ピッチで進められている東日本大震災の被災地を巡っている。ちょっと思うところがあって、自分の車で千葉から北上しているのだ。東北のスケールやリアス海岸の急峻な地形を舐めていたわけではないのだが、思った…

青森のオランダ

八戸港の一部をなす新井田川の河口を豪快に跨ぐ八戸大橋は、おそらくこの都市の成り立ちを体感できる適地だろう。橋上をレンタカーで通過した際にそう感じたのだが、わざわざ車を降りて立ち寄るかどうかずいぶん悩んだ。なにしろ滞在時間も限られている状況…

トロハの水路橋

スペインの偉大な構造エンジニアであるエドゥアルド・トロハ(Eduardo Torroja, 1899-1961)によるアリオスの水路橋(Acueducto de Alloz, 1939)は、たいへん感動的な構造物だった。80年前につくられた軽快でシャープなコンクリート構造物は、構造面や経済…

空飛ぶ橋

これまでにも国内外のさまざまな可動橋を見てきたが、「ビスカヤ橋」を体験したことで、ようやくひとつの到達点にたどり着いた気分になっている。エッフェルの弟子であるアルベルト・パラシオにより設計された吊橋であり、1893年に完成した世界最古の「運搬…

交錯する巡礼路

今回のスペイン旅行の重要な目的は、スペインの構造家であるエドゥアルド・トロハが手がけた「アリオスの水路橋」を訪問すること。80年前の1939年につくられたこの橋は、自分が死ぬまでに体験しておきたい個人的世界三大名橋の暫定リストに登録されている。…