はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

名塔に大空間を与えたEV

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あらためて写真を眺めても、エッフェル塔はすごいな。ここまで多くの人に感動を与えられる構造物も珍しいんじゃないか。誕生当時のディスられっぷりは凄まじかったようだが。

ひとつひとつの部材が極めて注意深く構成された肌理の細かさにも驚愕するけど、なんと言っても、重力と風力に抵抗すべく踏ん張る末広がりの4本の美脚から上半身が迷いなくシュッと立ち上がっていくフォルムが、たいへん魅力的だよね。そのフォルムを成立させているだけではなく、実際の空間体験においてスケールの変化にゾワッとなるのは、4面をアーチで囲まれた大空間が塔直下にあるためだろう。

この塔は登って街を見下ろすこと自体が建設の目的なので、徒歩以外で上に移動するための手段が不可欠だった。当然のようにエッフェルの設計チームは、中心にエレベーターを貫通させるなんて無粋なことはしなかった。斜めの足に沿ってあらかじめ、インクラインのように移動するエレベーターを設置したのだ。エレベーターの歴史は知らないけれど、きっと当時は「未来の乗り物」だったに違いない。

“La Tour De 300 Metres”というエッフェル塔の写真+図面集には、そんな斜行エレベーターの図面もしっかり掲載されている。この描き込みはかなり強烈で、ここでもゾワッとなる。見たこともない大型本で、発売当時は1万円くらいだったのだが。

 

La Tour De 300 Metres: Facsimile Edition

La Tour De 300 Metres: Facsimile Edition

 

 

斜行事例

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ある方とのやりとりの中で「社交辞令」が話題となった。しかし、あっという間に「斜行事例」の話題にすり替わり、大いに盛り上がった。いや、一方的に僕だけな気もするが。鉛直でも水平でもなく斜めに移動するってことは、特別な事情を乗り越えるための解決策であることは間違いないだろう。

そのやりとりの中で、長崎市斜面移送システム2号機「さくら号」を思い出せなかったことが悔やまれる。平地が極端に少なく、斜面の勾配が極端に急で、住宅が高密度に密集しており、車道の整備が厳しいエリアが点在し、高齢化が進んでいるという場所における解決策。乗車できるのは、運転カードを持っている地域住民の方に限られている。さまざまな事情が反映された斜行事例のひとつだ。

このブログにも随時事例を追加していくとしても、他にもいろいろありそうなので、過去の写真をあたってみよう。とりあえず、エッフェル塔の斜行式エレベーターの写真を探さなきゃ。

毎日が遊園地

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3月に広島に出張した際に、ずいぶん前から「いつか見に行くリスト」に入れていた「スカイレール」を、ようやく体験できた。噂に違わず、血湧き肉躍る唯一無二の新交通システムだった。なにしろ懸垂式モノレールなのかロープウェイなのかゴンドラなのかケーブルカーなのかアトラクションなのかよくわからないし、異常な急勾配のレールが街の上空を貫いているし、スキー場やテーマパークのような非日常感すら漂っている。来訪者としては脳天気にここに住む方々に嫉妬せざるを得ないが、実際はどのように受け止められているのだろうか。結構な傾斜地に展開する住宅地は「スカイレールタウンみどり坂」と呼ばれていることからも、この宅地開発におけるシンボルであることは間違いのだろうけど。

そんな興奮を訪問直後にTwitterでつぶやいたところ、さっそく多数かつ詳細な情報が寄せられて、いろいろ勉強になった。基本的な駆動方法は急傾斜に対応すべく、ゴンドラと同じように端部のモーターから循環するロープによって牽引するもので、駅部ではリニア駆動に切り替えられる。その一方で、強風や曲線の平面線形に対応すべく、ケーブルではなく鋼桁を軌道にしている。もちろん、地上に路面があるケーブルカーのようなスタイルでは、縦断線形の急激な変化に対応しきれない。なるほど、仕組みからしてハイブリッドなわけだね。鉄道方面も関係する激レア物件であるだけに、コアなファンが多い乗り物であることを実感したな。ちなみに開業は1998年とのこと。客車の定員は25名とのこと。