はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

素材

橋脚の地図

高架橋の橋脚の表面に、チョークで不思議な模様が描かれている。そこには、細かく数字が添えられている。宝のありかを示す謎めいた地図のようにも見えるが、もちろんそんなことはない。 これは、コンクリート表面の点検を行って発見された微細なひび割れと、…

奇妙な型枠

日が暮れかけた高松の街でホテルに向かって歩いていると、横目に見えた駐車場の奥の壁面に視線が釘付けになった。明暗のコントラストが効いたランダムな模様と規則的な縦のラインから、野趣味溢れる強烈なインパクトを感じたのだ。これはなかなかお目にかか…

壁に現れた痕跡

最近気になっている鉄道高架下の歩道を囲むコンクリート擁壁。ここにはさまざまな痕跡が積層して現れており、訪れるたびに新たな魅力が発見できる。 擁壁の天端に降った雨が描く縦ライン、壁面への落書きに上書きした塗料の重なり、生乾きのペンキが重力によ…

精緻な隊列

矩形の脚が6方向に突き出た消波ブロックによる離岸堤。見事にビシッとしている。海上で施工するのだろうけど、よくぞこんなにも緻密に積層したものだと感心する。荒天時にはものすごく大きな波圧が離岸堤に加わり、せっかくの配列が乱れてしまうような気が…

肌荒れ

湿度が下がる冬期は、お肌の乾燥が進んでしまい、なにかとつらくなる。うるおいを与えたつもりでいてもいつの間にかカサカサになってしまっていたり、じわじわと広がるかゆみから無意識にボリボリ掻いて表皮を傷つけてしまったり。こうして言葉にするだけで…

果てなき消耗戦

記憶の中にぼんやりと残っていた写真を、ようやく探し当てることができた。車で長野県小谷村に行った際に、日本海に抜けて親不知海岸まで足を伸ばしたことをすっかり失念していた。 北アルプス山脈の北端が日本海に飲み込まれている場所は、知らない間に親子…

DIYマインド

先月のニューデリー出張では、毎朝1時間ほどホテルの近所を散歩した。全く観光客などいない住宅地だったので、なんとなく現地の生活を垣間見ることができ、たいへんワクワクする刺激的な時間となった。 そこで衝撃のDIY作工物を見かけた。おそらく大五郎的な…

雨上がりのクラック

赤瀬川原平のトマソン黙示録シリーズに「雨上がりの体重計」という作品がある。コンクリートが硬化する前の床面にうっかり転写された足跡に、ぼんやり水が溜まっている様子を示した写真だ。僕も類例を探そうと時々気にしているのだが、ビシッと決まるものは…

愛に重ねた色

ケルンの大聖堂とセットで観光写真に頻繁に登場するホーエンツォレルン橋は、歩道と鉄道を隔てるフェンスが色とりどりの南京錠でみっちり埋め尽くされていた。フェンスに錠前を取り付けて鍵を川に投げ込むという、永遠の愛の証として恋人たちが執り行う謎儀…

年の離れた双子

ケルンのダンス場を見に行くときに、観光写真でよく登場する鉄道橋のホーエンツォレルン橋の歩道でライン川を渡った。その際に上流側に架かるドイツァー橋のシルエットを確認し、ふーん3径間の鋼橋か、あそこには隅田川に架かる清洲橋のモデルになった吊橋が…

シラスコンクリート

いい話を伺ったのに忘れかけていたので、取り急ぎメモを取っておく。 鹿児島の地形は「シラス台地」という火山噴出物からなる火砕流台地であることが知られている。イワシの稚魚を塩ゆでにした大好きな食べ物を思わせる、インパクトのある美味しそうな文字列…

寄り道のご褒美

先週末は京都大学に行ってきた。その際、なんとなく気になって用務先をあえて通り過ぎてみた。すると、遠くにたいへん興味深い建築物が見えてきて、ものすごくときめいた。あまり時間がなかったこともあり中に入るのは遠慮してしまったが、外側の開放感があ…

本当のチェーンブリッジ

チェーンブリッジと言えば、ハンガリーのブダペストを貫流するドナウ川に架かる吊橋「セーチェーニ鎖橋」。いつか見に行きたい。それはさておき、ブータンでは鉄の鎖そのものに金網を載せて、それらを針金で結束するという、まるでアスレチック遊具のような…

鋳物とコンクリートと竹

昨日は墨田区北部を歩き回った。このエリアの探索は何度目になるかわからないが、訪問するたびに新鮮な発見が得られる。生活者が街の主役として直接的に介入している様相は、たまらない魅力を感じる。この人の手の存在が感じられる「下町感」とも言える独特…

ガンタ積み

昨年の夏に六本木でチラリと見た衝撃的な擁壁を、あらためてじっくり見に行ってきた。「再利用」されている材料は多種多様であり、そのサイズや形態もバラバラのため、極めてカオスな擁壁面になっている。そこには、凝灰岩、花崗岩、安山岩などの自然石、レ…

擬木桁

差し迫る年末感を伴って、長野県伊那市を訪れた時の写真を焦りながら見返していた。すると、高遠ダムのすぐ近くに架かる台形断面の鋼箱桁の歩道橋が目に入った。なんとこの歩道橋、桁の表面に木目調のペイントが施されている。高遠城址に近い場所であること…

駅前ビルの表層

新橋駅前ビル1号館が纏っているテクスチャーは、懐かしい未来感に溢れている。それは、なんとも絶妙な色彩、透明感、素材感がつくり出すグリッド。新橋駅の東側を通るときには、いつもうっとり眺めてしまう。 第一京浜側のフラットな面を眺めて、壮大な矩形…

地域の材料

つい先日、宇都宮を散歩する機会があったので、すぐ近くに産地がある「大谷石」の使われ方を気にしながら歩いてみた。これまで何度か大谷資料館などの採掘場跡地を訪問していたので、倉や塀などの使用例が極めて多いことはある程度知っていたんだけど、思い…

ブルータリズム教会

アルプスの山々に囲まれた深い谷にあるクール(Chur)という街で、コンクリートでつくられた面白い教会を訪問した。デジタルテレビのブロックノイズか、終盤で失敗したテトリスか、マインクラフトの世界で作り上げたのかと思うほど、なんとも荒々しい造形の…

オリンピックの話

僕もオリンピックを見に来た。でもリオデジャネイロではなく、1972年開催のミュンヘンオリンピックの会場に。軽量構造のスペシャリストであるフライ・オットーの代表作である膜構造の屋根を見るために。 昨年の春頃、ネット上でオットーの訃報を目にした。プ…

味わい深い木橋

愛媛県内子町にある山間の小さな集落に、「田丸橋」という屋根付きの木製歩道橋がある。1944(昭和19)年に架けられた木橋なのに、しっかり現役。構造部材の補修補強や屋根のふき直しなどの手が入りつつ、オリジナルの姿がちゃんと維持されている。雨をしの…

透かしブロックの用例

『街角図鑑』の「透かしブロック」の項を眺めていて、建築材料として盛大に用いている例をふと思い出した。秋田市立体育館(愛称:CNAアリーナ★あきた)のエントランスホール部だ。 階段や通路の側壁に、「松」と呼ばれている透かしブロックがみっちり配置さ…

コンクリートの柔軟性

コンクリートは型枠次第でどんな形にもなる。その型枠が何度も転用できる鋼製だったりすれば、同じ形状のものを大量に生み出すことができる。そんなことを頭の片隅においておくと、海岸を守る消波ブロックの形態バリエーションですら楽しめるようになるよ。…

橋マニア疑惑

昨日、職場に出入りしている本屋さんから、カルロ・スカルパの作品集を勧められ、あっさり購入した。つい先ほども休日出勤の疲れを癒やそうとニヤニヤ眺めていた。やっぱり僕は大好きだなあ、スカルパの空間構成や素材の扱いやディテールの造形が。 前にも書…

ピカピカ足場

光輝く工業製品が、これでもかと言うほどみっちりと並べられている光景に、ぞわぞわした。しかも縦方向なので、なおさらだ。 ちなみにこの高層集合住宅、朝は写真のようなスケルトン状態だったが、夕方には表面にパネル材が貼られ、マッシブな箱に変貌してい…

緑化エクスキューズ

沼津で見かけた駐車場。溶融亜鉛メッキのスチールで構成された簡素なつくりだけど、2階デッキのプランターをベースにしながらつる性植物で緑化しようとしている。しかも垂直ではなく、「ランダム」に見えるラインで。それらは、あまり生長していない。 右側…

パッチワーク建築

倉庫として使用されていると思われるこの物件は、キュートすぎる。テクスチャー、カラー、プロポーション、ディテール、ダンメン、どこを見ても完璧だよねえ。本当に愛くるしい。射水市を訪問するたびに、魅力的な物件に大量に出くわす。どんだけポテンシャ…

近代日本が生まれた穴

昨日はとてつもなく魅力的な現場を見学させていただいた。それは、茨城県笠間市にある高級御影石「稲田石」の採掘現場。昨日に至るまで、台風の影響で2度ほど見送らざるを得なかっただけに、感激もひとしおである。暑さなどはすっかり忘れて長時間にわたり…

緑の崩壊面

立山カルデラの見学の際に車で移動していたとき、真川の向こう岸に妙な斜面が見えたので、車を止めていただいた。表面はとげとげしいのに、均一な緑に覆われているという、極めて不自然な眺めだ。まさかしばらく前に話題になった、岩山を緑色のペンキで塗装…

自然に還る過程

プレキャストコンクリートブロックを積み重ねた砂防堰堤。災害対応の緊急工事としてつくられたもの。既存の重力式コンクリートの砂防堰堤の直上、つまり、支持力が期待できない堆積した土砂の上に特急で構築されることになったため、沈下による変形が許容で…