はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

鉄道

鉄道史の断片

群馬県と長野県の境にある碓氷峠は、古来より東日本と中日本の交通の要衝であり、難所だった。鉄道の整備においても、早期から日本の東西を結びつけて殖産進行を図るための国家プロジェクトとして、東海道線と並んで検討されてきたが、この地形に難儀してい…

鉄道連絡船

乗り物の中に乗り物がすっぽり入るという状況は、たいへん魅力的に感じる。自動車を船倉に入れて運ぶ「カーフェリー」はこれまで何度も体験したことがあるけれど、鉄道車両をそのまま船倉に入れる「鉄道車両渡船」は体験したことがない。ずいぶんスケールの…

海底トンネル体験

津軽海峡の地下を通る青函トンネルは、1964年に着工して1988年に完成した、全長53.85kmのとてつもない大事業で生み出された海底トンネルだ。その情報の一部は、竜飛崎のすぐ近くにある「青函トンネル記念館」で知ることができる。少々くたびれた感じの展示施…

古い駅舎の新しいシェル

ロンドンのキングス・クロス駅は、ハリー・ポッターの9と3/4番線でおなじみ。でも僕の中では、2012年につくられた新たなコンコースを実現したグリッド状の構造を持つシェル屋根でおなじみだ。 1852年から続く由緒正しい歴史的建造物である駅舎を現状保存しつ…

様式の理由

1852年につくられたロンドンのキングス・クロス駅。しばらく前までこの周辺は治安が悪いエリアだったらしいが、現在は再開発が進んでオシャレな人気スポットになっている。隣接するネオゴシック様式のセント・パンクラス駅に比べるとやや地味に感じるものの…

毎日が遊園地

3月に広島に出張した際に、ずいぶん前から「いつか見に行くリスト」に入れていた「スカイレール」を、ようやく体験できた。噂に違わず、血湧き肉躍る唯一無二の新交通システムだった。なにしろ懸垂式モノレールなのかロープウェイなのかゴンドラなのかケーブ…

イギリスの大偉人

イギリスの公共放送局であるBBCは2002年、「100名の偉大なイギリス人(100 Greatest Britons)」というランキングを発表した。その当時、僕のまわりがざわついたことをなんとなく憶えている。なにしろ、超有名人を押さえて第2位となった人物が土木技術者のイ…

使用済み未成線橋梁

下北半島を北上しているとき、未成線である大間線の遺構がいくつか目に入った。用務からの帰り道、その中で最もインパクトがあったアーチ橋に立ち寄ってみた。威風堂々たる7径間連続のコンクリートアーチ橋だ。この橋のことをネットで調べてみると、二枚橋…

再訪欲が高まる眺め

何の気なしに、欧州滞在中だった8年前の今日は何をしていたのかと確認したら、優雅にパリ旅行に出かけていたようだ。前日には若干のトラブルがあったものの、精力的に歩き回っていたようで、エッフェル塔、ルーヴル美術館、セーヌ川の橋梁群など、いろんな写…

地下の秘密基地

ケルンの旧市街を南北方向に貫く地下鉄5号線のホイマルクト(Heumarkt)駅は、その大空間が少々ふざけたSF映画に出てくる秘密基地のようで、とても楽しかった。断面は正円なんだと思うのだが、全く自信がない。斜めに配置されたコンクリートのラインと微妙に…

空飛ぶ鉄道

ついに念願を果たした。遅まきながら、年末にヴッパータール空中鉄道をたっぷり体験してきたのだ。湘南モノレールのWEBマガジン「ソラdeブラーン」の執筆陣としては、佐藤淳一さん、西村まさゆきさんに続く3人目ということになるだろうか。かつて佐藤さんよ…

シラスコンクリート

いい話を伺ったのに忘れかけていたので、取り急ぎメモを取っておく。 鹿児島の地形は「シラス台地」という火山噴出物からなる火砕流台地であることが知られている。イワシの稚魚を塩ゆでにした大好きな食べ物を思わせる、インパクトのある美味しそうな文字列…

富士山型橋脚

湘南モノレールには独特の形状の橋脚がある。まるで富士山を意識しているかのような二等辺三角形のフォルム。もちろん交差物件に起因する様々な制約から決定された形態だとは思うけど、結果的に湘南モノレールを紹介される際によくロケーションとして使われ…

地を這うモノレール

湘南モノレールは起伏が多い地形との関係がとても面白い。中でも最大の見せ場は、トップスピードで山岳トンネルに突入する場面だと思う。いやほんとびっくりしたよ。都市にあるはずのモノレールが、なんのためらいもなくトンネルに突っ込んでいくんだもの。 …

単線モノレール

先日、湘南モノレールを体験してきた。乗るのも見るのもあまりにも楽しかったために、終点の「湘南江の島駅」まで行ったにもかかわらず、夏の海を体験することをすっかり忘れてしまった。 千葉都市モノレールと同様の軌道から車両を吊す「懸垂式」なのだが、…

帝国軍のホーム

帰宅してみるとスター・ウォーズ外伝の「ローグ・ワン」のBDが届いていたのだが、観るかどうか迷っている。年度初めの疲労感がピークに達しているため、途中で寝てしまうことが容易に想像されるためだ。この映画は極めて切ない気分になるので、そのまま夢に…

大大阪の気概

10年前に撮った地下鉄御堂筋線の淀屋橋の写真が出てきた。梅田駅と心斎橋駅も同様なんだけど、ヨーロッパの地下鉄によくある空間構成で、ドーム状の天井が特徴になっている。見通しが良く広々としていて、地下鉄駅ホームにありがちな圧迫感がほとんどない。…

浮かび上がる骨格

11月24日までに、急いで新宿駅西口広場イベントコーナーに行こう。土木学会「土木コレクション2016」と、東京都建設局「橋と土木展」が同時開催されているので。土木の展示としては王道である「技術を丁寧に伝える」という雰囲気の中で異彩を放っているのが…

素敵な駅舎と街の変化

2010年に開業した4代目旭川駅。これまでも何度か訪れているけれど、今回ははじめて夜景を堪能した。しかも、11月上旬なのに適度に雪が積もった冬景色で。 昼間ははっきり認識できない特徴的な形状の柱が、ガラスのカーテンウォール越しにくっきり見えて、そ…

川の中の駅

夏にチューリッヒを訪問したとき、坂茂氏が設計した木造7階建てオフィスビル「タメディア新本社」を見に行った。しかし、目の前を流れる河川の中にある構築物に目を奪われてしまい、木造ビルどころではなくなってしまった。 これはなんと、河川の地下を通る…

大人の質感

チューリッヒ中央駅はもともと大きなターミナル駅であるが、2014年頃(未確認)には通過式の路線が地下につくられたようだ。それ以前にも改修に次ぐ改修が行われてきたんだろうね、順次拡張してきた痕跡が随所に見られる。 ところが、見た目や利用に関して、…

ミュンヘン地下鉄駅巡り

ミュンヘンの地下鉄の駅空間は、内装パネルや照明などによる演出がなされ、ユニークな空間がチラホラあることを、5年前の訪問時にうすうす気付いていた。ここ2日間のミュンヘン滞在はたびたび冷たい雨に降られているので、必然的に地下鉄駅巡りが最高の都…

世代を超える調和

先日患ったインフルエンザB型をきっかけに、すっかり体調を崩してしまった。回復するための体力が枯渇していたことに対して、自分の加齢を痛感せざるを得なかった。しかしこのままずるずるだらだらしている場合でもないので、リハビリのため近所を散歩する…

翼を広げた黒い鳥

構造の中に潜む美しさを、過剰なまでに引き出すことが得意な、サンチャゴ・カラトラバが手がけた駅舎「リヨン・サン=テグジュペリTGV駅」が、リヨンの郊外にある。まるで翼を広げた鳥のような、ダイナミックなフォルム。駅舎という建造物ではなく、中に入れ…

後付けの将来対応

数日前、習志野市の埋立地を歩くフィールドワークに参加させていただいた。この付近は自分の職場の近くであり、いつもは車で往来しているエリアだ。つまり、歩くことはほぼ初めてと言ってよい。 スタート地点のJR京葉線・新習志野駅を出てすぐ、同行のメンバ…

空飛ぶ地下鉄

僕の勝手な「セーヌ川の架かる橋梁」ランキングでは、メトロ6号線と歩車道のダブルデッキ橋である「ビル・アケム橋」がいつもトップ争いをしている。1905年につくられた鋼アーチ橋の上に、鉄道の鋼ラーメン桟橋が乗っかっているのだ。その直下にある自転車道…

団地パラダイス

シンガポールの高密度感やスピード感は凄まじいものがある。東京23区と同じくらいの面積と言われる国土に、約540万人(2013.9時点)が暮らしており、いまもぐんぐん増えている。もちろんその受け皿は高層団地であり、これまたものすごい勢いで増殖中である。…

高架下建築の行方

先週末、久しぶりに浅草橋近辺の総武線高架橋を見に行ったところ、衝撃が走った。珠玉の名品とも言えるピンクの高架下建築(土木と建築の融合)が取り壊されていたのである。こういう事態は想定していたとは言え、やはり現実を目の当たりにすると落胆してし…

地底駅

先日糸魚川方面に車で行った際に、JR北陸本線の筒石駅に立ち寄ってみた。大都市における地下鉄駅とは異なり、山岳トンネルの途中にホームがあるというレア物件。しかも、かなり深い地中にあるとのこと。わかるようでいて、よくわからないよね。 国道8号線を…

ローマで最初の大空間体験

友人がローマに行くというので、見どころを尋ねられた。僕に尋ねると言うことは、普通の観光地の斜め上を望んでいるのだろうと解釈して、エウル地区(超現実シティ)やローマオリンピックの会場となった地区(オリンピックドーム、ザハ、音楽の橋)などを紹…