はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

壁に現れた痕跡

最近気になっている鉄道高架下の歩道を囲むコンクリート擁壁。ここにはさまざまな痕跡が積層して現れており、訪れるたびに新たな魅力が発見できる。

擁壁の天端に降った雨が描く縦ライン、壁面への落書きに上書きした塗料の重なり、生乾きのペンキが重力によってタレた筋、舗装の隙間から生えた力強い雑草、それが風に揺れて壁面の汚れを拭いて生まれた円弧。

ひとつひとつの現象を鑑賞しても楽しいのだが、それらの関係性に着目しながら総体を眺めると、人工環境の中で生じる豊かな自然現象を堪能できる。ただ、これらの痕跡をじっくり味わう姿は少々不審に思われるようで、通行人にじろじろ見られることもある。