はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

ストレピ・テュー


ロンキエールのばかばかしさもすごいが、そこから南西に約20km移動したところに、さらなるボスキャラが待っている。ストレピ・テュー・リフトだ。細かい説明は、例によって全部カワウソ写真家佐藤さんにやっていただくことにして(Das Otterhaus 【カワウソ舎】:ストレピ・テュー)、ここでは概要のみ。
この運河エレベータは比較的新しく、1997年につくられた。強引さにもますます磨きがかかっている。これは73mもの水位差を解消すべく、船を浮かべたバスタブをまるごと鉛直方向に昇降させるのだ。ロンキエールは1.4kmを超える長さ方向のスケールに魅力があったのだが、ストレピ・テューは一点突破で勝負にきた。しかしその一点はばかでかい。連続する水路の線が断ち切られる点は、神々しいまでの威容さが伴うはずなのだが、少々日和った建築的アプローチを試みているデザインによって、それが削がれている。まあそれでも相当に異様であることには違いなく、とんでもない存在感を放っている。
圧巻は実際に動くところ。頭上のバスタブがわずかな機械音とともにゆっくり降りてくる。バスタブは滑車でつながったコンクリートのカウンターウェイトとバランスしているので、これがゆっくり持ち上がる。プシュー、ガコン、シャー、ウィーン・・・、素敵な音の洪水だ。この様子に陶酔していたら、あるシーンがフラッシュバックしてきた。第3新東京市が戦闘形態に移行するあれだ。こんなところにセントラルドグマがあったのか。