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はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

クノッケの白い板

ペデ 構造


日曜日はベルギーを拠点に活動している構造デザイナーのローラン・ネイ氏へのインタビューに同席させていただく機会を得て、ブリュッセルに行ってきた。氏が考える構造・造形・環境・施工などを材料に、どのようなアプローチで料理を仕上げていくのかという話を伺うことができた。最後に僕が正直に「ネイさんの橋は写真写りが悪い」と言い放ってしまったのだが、大爆笑で終了したのでよしとしよう。はい、腕を上げるよう努力します。
さらにその翌日は、ネイ事務所で活躍されている日本人デザイナーにコーディネートしていただき、ベルギー北西部に架かる橋をいくつか見てきた。2日間に渡って本当に刺激的で濃密な素晴らしい体験をさせていただくことができた。
ネイ氏の橋は、どうも写真で見たときと実際に見たときの印象の差が大きいように感じる。北海に面したリゾート地に架かるKnokke歩道橋もまたそうだった。一枚の薄い板を丸めて、曲げて、穴を開けて、それを極めてスレンダーなY字の支柱からハンモックのように吊り下げた不思議なフォルムの橋。数年前に建設雑誌で見たときは、その独特な形態に若干の違和感を伴う強いインパクトを受けた。だって見たことがないタイプなんだもの。
しかし実際の空間で見て触って渡ってみると、実に軽やかに、しっとりと環境に溶け込んでいるように感じた。ネイ氏の橋を見るのは6つ目なので、氏のデザイン言語に僕自身が慣れてきたということも大いにある気はするけども、たとえばバランス感とかスケール感とかおさまりの素直さとかシークエンスの豊かさとか、写真ではなかなかわからなかったところがストレートに感じられて、すとんと腑に落ちた。
土木施設によくあるつくる側の都合に合わせたアプローチではなく、つかう側の都合から発想して最適な答えを得るといった、まるでインダストリアルデザインのようなアプローチが氏の持ち味なんだと思う。この橋はネイ氏の作品集の表紙を飾っていることからもわかるように、氏のデザイン思想を具現化したひとつの到達点のようだ。


Laurent Ney: Shaping Forces

Laurent Ney: Shaping Forces