はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

海中基地

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先日訪問した勝浦の「海中展望塔」のことを考えるたびに、映画「007 私を愛したスパイ」を思い起こす。悪役の海中基地「アトランティス」が脳裏をかすめるのだ。この展望台が海中からざばーっと現れてくれると最高だよなあ。

確証はないけれど、「007 私を愛したスパイ」は自分が一番最初に見たボンド映画なんじゃないかと思う。良くも悪くも印象が強すぎて、自分の中のボンド映画のひな形になっている気がする。1ヶ月半ほど前にお亡くなりになったロジャー・ムーアによる華麗で派手なボンド、潜水艇になるスーパーカーのロータス・エスプリ、鋼鉄の歯を持つ不死身の悪役ジョーズ、不要なまでにお色気たっぷりなボンドガールたち、アルプスでのスキー・チェイスからのパラシュートなど、ボンド映画の荒唐無稽でバカバカしい側面をたっぷり堪能できる楽しい映画だ。いやあ久しぶりに観たくなってきた。子供の頃のときめきはすごかったけど、今見るとチープな部分が目についてしょうがないんだろうね。

それはそうと、「007 私を愛したスパイ」の公開は1977年、勝浦の「海中展望塔」のオープンが1980年だという。海中展望塔の方が先のイメージがあったのだけど逆だったのね、と思って他地域の海中展望塔を調べてみたら、やはり映画の前につくられたものが多かった(白浜1969年、部瀬名1970年、串本1971年、足摺1971年、波戸岬1974年)。1980年の勝浦の後は1996年の紋別「ガリンコタワー」しかないようだ。僕が行ったことがあるのは、最新の2カ所のみと言うことになるわけだ。写真を見ると白浜海中展望塔のニーマイヤー感や足摺海底館のメタボリズム感がとても素晴らしいので、いつか巡ってみたくなってきた。メンテナンスもたいへんだろうから、早めに行かないとな。

いや、なにが言いたいのかというと、夢のある海洋構造物が真剣に模索されていた時代があったと言うこと。もちろん今も海洋開発プロジェクトはあるのだろうけど、当時のような天真爛漫な無茶は難しいだろうね。そういえば、沖縄国際海洋博覧会が1975年に開催され、その際に半潜水型浮遊式海洋構造物の「アクアポリス」が建造された。僕は大学生か大学院生の時、研究調査のついでに見に行ったことがあり、錆だらけの汚い施設だなあなんて思った。どうやらその後すぐに閉鎖されてしまい、2000年頃に海外に鉄くずとして売られてしまったようだ。今にして思えば細部に至るまでをしっかり体験しておくべきだったと悔やんでいる。無知や視野の狭さによる機会損失は、本当にもったいないな。