数ヶ月前、ほとんど訪れたことのない高崎へ出張に行った際、数時間ほど自由になったので、中心市街地を散策することにした。事前に予備知識を仕入れる時間が全く確保できなかったのだが、その瞬間の勘を頼りに徘徊して、有名建築家による駐車場に出会ったり、「タワコレ」を充実させたり、ゴージャスな市庁舎を見学したりと、高崎らしさをチラ見できた。その中でも、アントニン・レーモンドの設計で1961年に竣工した「群馬音楽センター」を体験できたのは幸運だった。高崎城址に立地しているようなので、ここにたどり着くことは街の構造からして当然の帰結なのかもしれないが。
「なにこのギザギザ屋根、エグみがあってかっこいい」と思いつつぐるりと周回し、ふらふら中に入って職員の方に見学と写真撮影を申し出たら、あっさり許可をいただいた。印象的な折板構造の屋根の造形は、外も内もうまく活かされている。内部空間のダイナミックな造形、巨大なガラス面を持つ開放的なロビー空間、やけに艶めかしい階段の造形など、見どころがたくさん。「うわあなにこれ、いろいろすごいなあ」とうろうろしていたら、最後に「レーモンドギャラリー」という一室にたどり着いた。そして、DOCOMOMO JAPANの最初の20選にもなっているモダニズムの重要建築物であり、市民からの寄付金が大きな財源になったという事実をはじめて知ることとなり、自分の不勉強さにあきれた。
自分の嗅覚だけでまちを歩いて新鮮な「発見」を楽しむこともいいけど、ある程度は地理や歴史の背景や著名な物件情報を知っていた方が、「理解」という面でなにかと有利になる。現地での鑑賞の手がかりになるし、大切なものを見逃す確率も低くなるし。せめて行きの新幹線の中で仕事するのはやめて、訪れる街の情報をざっくり収集したいね。