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はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

渓谷を渡る板


先月のスイス訪問では、重要な巡礼地として東部のViamala渓谷に架かるPunt da Suransunsも参拝した。これはユルグ・コンツェットが設計した吊床版歩道橋で、これまでも何度か噂には聞いていた。なんでもまじめにハイキングをしなければ見ることができないという、巡礼にふさわしいロケーションがまた魅力。
Viamala-Schlucht‎というバス停にある駐車場に車を止め、アウトレットモールで入手したトレッキングシューズに履き替えて、ハイキング好きのヨーロッパ人に紛れて南方に歩き始めた。しかし渓谷に沿って歩いているはずなのに、なかなか水面が近づいてこない。案外アップダウンもある。この道で合っているのかと不安を感じながら薄暗い森の中を15分ほど歩くと、ぽっかり明るくなった部分に水面と橋が見えてきて、一気にテンションが上がった。
まるで空中に張り渡された糸のように、驚異的な繊細さ。並々ならぬ緊張感が漂っている。駆け寄りたくなる衝動を抑えながらとりあえず写真を撮ってみたが、興奮のあまり微妙にぶれてしまった。実際に見て触れて渡ってみると、この橋はエンジニアリングの観点から極めて精緻に研ぎ澄まされていることが感じられる。無駄な贅肉が完全にそぎ落とされた潔いシンプルさには、確実にある種の美しさが宿っているね。ものづくりにおいて、どんなアプローチでもどんなテイストでも、クオリティーを高めるということは正義だよなとあらためて思った次第。