はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

水平垂直中心

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9月のブータン訪問の最終日には、重要施設である県庁兼寺院の「パロ・ゾン」を訪問した。この巨大な元軍事施設は、もともとあった建物が20世紀初頭に焼失して再建されたものだという。映画「リトル・ブッダ」のロケ地にもなったとのこと。

その荘厳さにはたいへん感激したわけだが、同時にムズムズする気分も味わった。立面写真がどうしても決まらないのだ。どこかに必ずあると思い込んでいた中心や直交の手がかりが見出せず、右往左往してしまった。中山間地域の民家の立面写真を手当たり次第に撮影した集落調査でもムズムズしたのだが、ブータン王国を代表する建造物も全く同じというわけだ。航空写真を見ても、全体的にゆがんでいることがわかるし。ブータン人にとって「整える」ことは、それほど重要なことではないようだ。

土木構造物や建築物は、建造物は水平と垂直が基準となっていて、左右対称性への意識がどこかに内包されている、僕は無意識的にそう認識していた。ところが、それは偏った価値観であることを思い知らされた。自分の内側にある常識なんて、外側の世界からすると極めて小さなもので、どこまで行っても主観的な「思い込み」でしかない。そのことを常に心がけておかねばね。