はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

向き合う姿勢

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複雑なものや巨大なものは、一度だけではその見どころがわからないことが多い。直感的にすごいと感じても、圧倒されっぱなしになってしまい、下手をすると鑑賞する姿勢を放棄してしまいかねない。対象を自分の中に取り込むための思考がついていかない対象こそ、何度も向き合うようにしたいね。

随分前から認識していたのに、なんとなく訪問をためらっていた奥多摩工業氷川工場は、まさにそんな対象だった。先週、奥多摩の橋梁群を専門家の方々と見に行った際に、ついでに立ち寄っていただいたことで、ようやく体験することができた。そして案の定、日原川が削った渓谷に、それぞれ意志を持って増殖したかのようにへばりつく設備で構築された巨大石灰工場を前にして、どこを見ればいいのかわからなずオロオロしてしまった。

帰宅後に撮影した写真をじっくり眺めつつ、冬季に宿泊付きで再び見に行く必要があることを実感したな。奥多摩駅の駅近物件というのも高ポイントだしね。

同い年のイケメン

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東京の水源地である奥多摩湖(小河内貯水池)に、とてもクールでメカニカルな橋が架かっている。その名は三頭橋(みとうばし)といい、なんと1969年生まれだという。いやあこんなスタイリッシュで現代的なイケメンが東京の最奥地にいただなんて、不覚にも知らなかったなあ。

国内初のバスケットハンドル型のニールセン橋ということだが、アーチの下端を結びつける部材がない。つまり、このフォルムでよくあるニールセンローゼ橋ではない。斜めに張られたケーブルは魅力的な造形の横梁に定着しており、桁には強い陰影が生まれている。グレーの塗装色も、モダン方向に効いているね。

ちょっと残念なのは、工夫のない橋台。わざわざ水平力を受け持っているんだよ、という力の流れが可視化されていると、橋の魅力が倍増したと思うな。それと、照明柱ではなくケーブル交差部に灯具を配置しているのはいいのだが、早いうちに小型軽量なLEDにしてもらえると、より素敵になりそう。それと、1993年の一斉修景時に設置されたという妙にクラシカルなプレートはいただけない。せっかくの橋門工のクールな造形が台無しだもんな。

それにしても、僕と同い年ってのは衝撃を受けた。僕はこのところ、以前にも増して身だしなみに気を使わなくなってきた気がするので、気持ちを引き締めなければと思ったな。実践するかはさておき。

街のおもしろポイント

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ときどき、自分の意思とは無関係にセレクトされた地方都市に出張に行くことがある。そんな時には、まち歩きのトレーニングをする機会だと捉えて、現地のことを事前に調べずに乗り込むようにしている。

少し前には、長野市に行ってきた。用務の隙間に1時間ほど確保できたので、近くを軽く散歩してみた。スマホの地図をざっと眺めながら、道が込み入っているエリアを徘徊し始める。街の雰囲気を味わいながら、よりディープな方面へフラフラと。そのうちに面白いと感じるポイントが、ぼんやりと見えてくる。

ここでは、暗渠を含む水路がおもしろポイントなのでは、と思うようになった。マップ上の幹線道路と細街路の入り組み方が独特だったので、早いうちから期待していたが、高低差や建物の張り付き方とセットで観察するうちに、徐々に魅力的な風景を採集できるようになってきた。

よし、じゃあ本格的に歩くか!というタイミングでタイムアップ。後ろ髪を引かれる状況で切り上げると、再び訪れたい気持ちが芽生えるので、ちょうどいいよね。いや、やっぱりもう少し歩きたかった。