ローマ近郊にムッソリーニの肝いりで1930年代に開発されたエウル(EUR, Esposizione Universale Roma)という地区がある。その名の通り、ここでローマ万国博覧会を開催する予定だったが、第二次世界大戦のために中止になったという。気合いを入れてつくったものの、肩すかしをくらった格好だね。
ここはまるでデ・キリコの絵画に迷い込んでしまったかのような、夢と現実の区別がつかないシュールな街だ。僕が訪問したときはちょうどクリスマスによって街の活動が完全停止していたことや、雲ひとつない突き抜けた青空に恵まれたことや、見ておくべき数多くの古代遺跡を無視してここを訪れた状況ということも手伝って、余計にそう感じたのかもしれない。ともかく、ヒューマンスケールを完全に逸脱した街並みに途方に暮れるという体験は、ローマの遺跡とセットでぜひご賞味いただきたい。