はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

有機的無機物

“有機的なデザイン”って言葉はよく耳にするけど、それは、あくまでも造形や装飾の“テイスト”の話だと思う。“テイスト”は人による好みの違いが大きいので、公共構造物のデザインでは、かなり気をつけなければならない。

2004年に見たときは栗東橋という名称だったけど、今は近江大鳥橋と名付けられたらしい。この橋のデザインを手がけたアメリカ人によると、日本のイメージを反映させるべく、モチーフに鶴を選んだとのこと。エクストラドーズドの基本構造はそのままで、主塔に鶴の着ぐるみを着せたわけだ。

橋脚や主塔は、かなりエグイ曲面で構成されている。顔料を混ぜたのであろうコンクリートは色むらが激しく、水平方向の縞模様が生じている。そのため、たいへんな苦労をして施工されたであろうきれいな曲面が、台無しになっている。とても残念。これは、設計時の造形方針に根本的な問題があると思う。

個人的な話だけど、自然のカタチを恣意的に模倣することには、胡散臭さを感じることが多い。というか、もともと僕はそこらへんに抵抗感があるのかもしれない。いやいや、“有機的なデザイン”が嫌いなわけではない。無理やり有機的“風”の皮を被せたものに、押し付けがましさを感じるだけだ。