はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

玄人好みのハイテク橋


ベルギーのVerviersという小さな街に架かる橋長30m、幅員2mのCentner歩道橋。一見したところ小振りで地味な印象なんだけど、一歩踏み込んでじっくり眺めてみると、最新技術が注ぎ込まれたクールな橋であることが感じ取れる。
構造形式はU字断面を持つ鋼下路桁橋ということになるのだろう。わずかに内側に傾斜したウェブにはメッシュ状の穴が開けられていて、それはスパン中央に行くほど部材が細くなるグラデーションになっている。レーザーカッターで切り取られたこの滑らかなグラフィックパターンは、まるでCGのよう。ゆったりとした大きな曲線を描く上フランジと合わせて、コンピューターで最適化された応力の流れが視覚化されているのだろう。橋の側方から両側のウェブを重ねて見ると、不思議なモアレが浮かび上がってくる。構造や材料に無駄がないばかりか、遊び心や洒落っ気まで併せ持っているなんて、なかなかやるじゃないか。
このブログを見てくださっているその筋の方は、この鋼板の巧妙なデザインにピンと来るかもしれない。そう、設計はたびたび取り上げているローラン・ネイが率いる設計事務所(Ney & Partners)なのだ。Knokke歩道橋Esch歩道橋と見比べると、フォルムはまるで違うけどデザイン言語が共通していることがおわかりいただけると思う。
デジタルによる構造最適化設計や切削加工技術が高度に統合されて生み出されたこの地味な橋は、実際に体験してみるとかなりしびれるよ。でも、架橋位置の周辺環境は違う意味でもしびれる。周りの壁という壁は落書きだらけだし、隣にはおどろおどろしいレンガ造り倉庫の廃墟まである。いかにも治安が悪そうなエリアなので、見に行く際にはどうぞお気をつけて。もしもこの橋がもっと近代的でクリーンなエリアに架かっていたら、より洗練されて見えるだろうね。