はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

ヴェネツィアの赤いアーチ


ヴェネツィアのカナルグランデを跨ぐ4つめの橋は、2008年に架けられたばかり。鉄道と道路のそれぞれの玄関口であるサンタルチア駅とローマ広場を結ぶという極めて重要な位置にある。設計はご存じカラトラバ。
僕の中でカラトラバは空気が読めない、もしくは、空気を読まない人物という位置付けになっているのだが、さすがにカラトラバもヴェネツィアという極めて特殊な土地柄を考慮したのか、得意の下路形式は封印し、上路アーチという古典的な構造形式を用いている。極めてライズの低い偏平なアーチは、現代技術による構造のアクロバットを感じつつも、カラトラバにしては地味だなという印象を抱く。それに、カラトラバが赤を使うというのも極めて珍しい。常人にとっては派手な色だけども、これも彼なりのヴェネツィアへの配慮だと思う。
しかしこの橋、完成時にはボロクソに叩かれていたように記憶している。歴史的景観に全然合っていないとか、路面のガラスが滑って危険とか、キャリーバッグやベビーカーや身障者のことを考えていない段差とか。たしか開通式も行ってもらえなかったはず。
でもね、遠目から見たり下をくぐる船から見たりするとやはり素敵だよ。いずれヴェネツィアの顔として認知されるといいね。