はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

海岸の多層防御

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昨日は21_21デザインサイトで行われている「土木展」のイベントとして、大山顕さんと「土木を愛する人たち」というタイトルのトークセッションを行った。大山さんのご提案により、展示のテーマにも掲げている「つなぐ、ながす、ほる、ためる」に含まれていない土木の重要な価値観である「よむ」ことを基軸に話を展開することで、「ジオ・スケール」と「ヒューマン・スケール」の違いが引き起こす齟齬を示唆することにした。これがなかなか楽しく、話を組み立てているときからすっかりエキサイトしてしまった。聞きに来て下さったみなさまを、若干置いてきぼりにしてしまった感は否めないが。

僕は3つのネタを持って臨んだ。そのうちのひとつは、「土木から地域を読む」というテーマ。デ・レーケに「これは川ではない、滝だ!!」と言わせたという都市伝説をつくりあげたとんでもない急流河川の常願寺川を題材に、地理地形と戦わざるを得ない理由、治水と利水の関係、砂防と海岸浸食の関係などの説明を試みたのだ。

ところが、もともと水関係は苦手意識があり、知識的にも十分とは言えない領域であるだけに、自分としてももどかしさを感じながらのプレゼンテーションになってしまった。まあ前のめりな姿勢だけは伝わったようであるが。このネタはまだまだ展開できそうなので、今後もしっかり育てていきたいと思っている。

上の写真は滑川市の高月海岸にある、重層的な防御の構えを見せている護岸。もちろんこの背後には直立堤防も控えている。この地域がどれほど高波と格闘してきたかをうかがい知ることができる風景だ。下のリンクに示した中滑川駅前にあるオブジェというか噴水にテトラポッドを使用している理由が、とてもよく理解できる眺めだね。

未来的避難所

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日本海に沿って小樽と稚内を結ぶ「オロロンライン」は、北海道の雄大さを体感できる素晴らしい道路だ。特に道北のサロベツ原野をひた走る直線区間は、日本離れしたスケールをうんざりするほど堪能できる。

もちろん夏の晴れた日のドライブは最高な体験になるのだが、冬の荒天時には状況が一変する。日本海から吹きすさぶ強風に容赦なく煽られ、下から巻き上がる吹雪に視界を奪われて道路の位置がわからなくなり、圧雪されないままに凍結した路面のグリップ感の無さに不安を覚え、恐怖のあまりに停車してしまうとじゃんじゃん吹きだまりが成長する。少しでも気を緩めると、生命の危機に直面してしまうわけだ。

そんな状況下で待避できる場所が「浜里パーキングシェルター」だ。二車線と路側の駐車帯がプレキャストコンクリートのアーチで覆われ、風雪を一時的にしのぐことができる。停車できるスノーシェルターと考えればいいだろう。長い道路でここだけにあるってのもどうなんだろうと思うかもしれないが、特に厳しい環境の地点だと理解するのがいいだろうね。

このパーキングシェルターは明かり取りの窓がビシッと連続しており、とにかく内部空間がかっこいい。さらに、すぐ南に「オトンルイ風力発電所」があるのもいい。このように、なにかと日本離れした景観が堪能できる場所だよ。できるだけ夏の晴れた日に行くようにしよう。

扇形の市場

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1935(昭和10)年に開設された築地市場の建屋は、やんわりとしたカーブによる扇型が特徴だ。かつて最外周部分に敷かれていた鉄道によって決まったレイアウトと形状。建設当時は船と鉄道による輸送が絶対的な要件だったんだね。

汐留の高層ビルから見れば、陸上でのトラック輸送が前提とする現状に合っていないという事実を十分に理解することができる。道路交通網へのアクセスも含めて。近いうちに市場機能はごっそり豊洲に移転していくんだろうけど、築地の跡地は一体どうなるのか。時代の記憶たるこの特徴的な形態を、どこかに引き継いでほしいねえ。

 ちなみに上の写真は、環状2号線の築地大橋がまだ架けられていないときのもの。環状2号線がどうやって接続するのかも気になる。