はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

古い街の積み重ね

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ケンプテンはドイツでも最も古くから存在しているクラスの街のようで、ネットで少し調べてみただけでも、ケルト人、ローマ人、ゲルマン人と、様々な民族がその歴史に登場してきたことがわかる。一時期はカソリック勢力とプロテスタント勢力に分断されて統治されたという時期もあるそうだ。両者を分散する壁の痕跡も残されているばかりか、旧市街にはそれぞれの大きな教会があり、立て続けに見ることで両方の様式の違いを生々しく観察することができる。

なぜアルプスの麓の小さな地方都市が重要な拠点になったのか、今回の短い滞在ではその理由を汲み取ることはできなかった。しかし、工業が発展しはじめた近代においてもその重要性は同様だったらしい。そのことを、イラー川に架かる3つの古い橋梁が示している。

ひとつは一番下流(写真奥)の鋼トラスで補強した木トラス橋「König-Ludwig-Brücke」だ。なんと、もともと鉄道橋として1851年につくられ、その後は道路橋として転用され、さらにその後は歩道橋になったらしい。現在は補修中なので、今回はその姿を拝めなかったことがたいへんくやしい。興味がある方はStructurae : König-Ludwig-Brückeを見てみよう。

そして、その上流(写真手前)の双子の橋は、世界最大クラスの無筋コンクリートアーチ橋「Illerbrücken Kempten」だ。これまた1906年につくられた年代物。周辺がスッキリして全貌がわかる昔の写真を見たい人は、Structurae : Illerbrücken Kemptenを見てみよう。

現在に存続している頑強で貴重な橋梁が残されていることは、街自体が重要な役割を持っていることを如実に示している。中世の雰囲気を色濃く残した高低差が楽しい旧市街地の街並みも楽しいが、どうやらその魅力はノスタルジーだけではなさそうだ。

ちなみにこの眺めのすぐ下流に、先日アップした発電所がある。ドボク的にもたいへん楽しい街なのだ。

コンテナタワー

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コンテナ好きとしては、チューリッヒに行くならどうしても立ち寄らねばならない重要な場所がある。それは、トラックの幌をリサイクルしたバッグで有名なブランド「フライターグ」の旗艦店。全部で19個の中古コンテナを用い、4層までは店舗、階段部は9層まで積み上げて最上部を展望スペースにしている。

この店舗があるエリアは、チューリッヒ中心市街地の北西側に広がる工業地帯。現在は再開発が順次進められている。工場や高架橋など既存の施設を上手に活用しながら、新しい価値を生み出している事例も数多い。周辺を少し散策しただけでも、ざくざく面白い物件に出会って、手に負えなくなるほどだ。

コンテナという建築材料も、基本的に積むだけという構築方法も、再開発エリアという立地環境も、素材を活かしながら別の価値を吹き込むというフライターグの商品コンセプトにぴったり重なっている。そんな事実に直面してしまうと、手元にその証拠を引き寄せたくなる。ええ、僕もテンション上がって予定外の散財をしましたよ。

スパイラルスロープ

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これまでも様々な立体駐車場の螺旋スロープを見てきたが、先日訪れたチューリッヒにも素晴らしい物件があった。フラットルーフと隣接するオフィス部分とのコントラストが効いた、ため息が出るほど整ったダブルらせんだ。別件をストリートビューで調べていた際にたまたま見かけてしまい、これは市内観光の時間を削ってでも行かねばなるまいとなったわけだ。

これは電車でもトラムでもアクセスできるSaalsporthalle駅に隣接したSihlcityという複合施設の駐車場。ショッピングモール、文化施設、映画館、ホテル、オフィスなどが入っているようで、チラッと見たところでは製紙工場をリノベーションしたような部分もあり、そちらも面白そうだった。河川の上に架かる高速道路の高架橋も隣にあるし。そこら辺をしっかり見るとさすがに時間が足りなくなるので、さっさと裏側に回ってぐるぐる鑑賞を堪能した。

こうした物件の場合、ビューポイントがあるのかどうかは、現地に行って見ないとわからないことがほとんどなわけだが、このスロープは歩道などからバッチリ鑑賞できる状況だった。やはりスイスは質の高いファンサービスが行き届いているんだね。中心市街地からのアクセスも良好なので、新たな観光ポイントに加えようよ。