はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

巨大な箱

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横浜の運河沿いの倉庫の壁面には、窓が一切なく、換気口がたくさん設けられている。その眺めはヒューマンスケールを確実に逸脱しており、そこが魅力のひとつと言えなくもない。

先週、不幸にも三芳で発生してしまった大規模倉庫火災は、鎮火に6日もかかったらしい。窓や扉などの開口部が極端に少ないことで、消火活動が難航して鎮火が遅れたと言われている。そんなことが起こるなんて、僕には全く想像できなかった。

ネット通販の発達に呼応するように、物流拠点はどんどん大型化している。そこに起因する課題って、火災に限らず労働や景観なども勘案すると、とても大きいよねえ。まあ僕もかなりの頻度でネット通販を利用しているので、もう少し当事者意識を持たないとね。

街の記憶

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1ヶ月ほど前だったろうか。自宅の最寄駅のロータリーに隣接した一角が更地になっていた。生命保険の会社のビルだったと思うのだが、どんなビルだったか全く憶えていない。

日本において、多くの人に利用されている駅前の風景は、更新し続けているように思う。自分がよく利用していた駅の20年前の様子をしっかり記憶している人なんて、ほとんどいないのではないだろうかね。当時僕は札幌に住んでいたけど、当時の南口の風景を思い出すことなど、全くできないなあ。

ブルーシートに砂袋が点在しているこの風景は、ほんのわずかな期間しか見られないのだろうけど、なんとか記憶にとどめておきたい。正面のビルのステキな配管とともに。

構造の理解の仕方

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多少なりとも橋梁設計に触れていた身からすると、映画や漫画の世界に登場する橋にびっくりすることがある。例えば、メインケーブルが切断されているのに全体が崩落しない吊橋、中央の橋脚によってやじろべえのようにバランスを保っているアーチ橋、橋脚なしにタワーとケーブルが空中で成立している斜張橋、などなど。玄人の立場から素人の無知を一笑に付すことも可能なわけだけど、構造システムなんて考えたこともないごく普通の人々が、どのように目の前の事象を理解しているのかを知る手がかりだと捉えると、がぜん興味が湧いてくる。

ずいぶん前のことになるが、僕の恩師はこれに似たような現象に対して「folk physics」という言葉で説明していた。鉄道橋のトラス部材は車両が落ちないようにするためのものとか、斜張橋のケーブルはタワーが倒れないように引っ張って支えているものとかね。直訳は「民俗物理学」だけど、僕は物理的現象に対する一般的な認知の仕方であり、自分にとって理解しやすいように組み立て直す現象なのではないかと解釈している。こうした事例を「民間伝承ドボク」とでも題して集めてみようかと思っているのだけど、そう思い続けてもう5年以上は経っている気がする。

それはさておき、そんな素人っぽいアイデアが実物として目の前に現れると、ものすごい勢いで慌てふためくことになる。それはもう魔法にしか見えない。ロンドンのロイヤル・ビクトリア・ドック橋もそのひとつ。タワーとケーブルによって中間の橋脚がない構造を実現している斜張橋のようなトラス橋。この橋の前で、自分を納得させるまでにえらく時間がかかったことを憶えている。そんな気分になった橋を、いくつかピックアップしておくね。