はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

ヤバい建築の本

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たいへんヤバい本を入手してしまった。日本人にとっては馴染みが極めて薄いであろう社会主義時代のルーマニアとモルドバにおける、モダニズム建築の写真集「Socialist Modernism in Romania and the Republic of Moldova」とガイドブック「Socialist Modernist Architecture in Romania and the Republic of Moldova」だ。たぶんルーマニア語と、英語の2カ国語表記。

ここには、ある地域のある時代におけるユートピアがみっちり詰まっている。油断するとニヤニヤと眺め続けてしまう魅力に溢れているのだ。化粧箱の表面にタイル状に並べられたファサードのディテール、写真集におけるブルータル感に満ちた豪快建築、ガイドブックにおけるカテゴリーごとに差し込まれた味わい深い手書き地図、写真にちょいちょいにじみ出ている人々の生活感、いろいろステキすぎて困惑するばかりだ。まだテキストは読んでいないけど、ボリューム満点ですでにくじけそう。

この本はB.A.C.U. Associationによって書かれている。どうやら東欧旧社会主義国につくられた建築物、広場、記念碑などを調査してアーカイブし、保存につなげる研究活動を行っている組織らしい。えらくかっこいい写真を撮りためているのも、その活動の一環なんだね。とにかく書籍と同様、彼らのウェブサイト「Socialist Modernism」も素晴らしすぎるので、たっぷり眺めまくっていただきたい。うっかり旅に出たくなるよ。

socialistmodernism.com

書籍はこのサイトから購入できるはず。僕も何度か試みたのだけど、なぜかエラーが起きてしまい先に進めなかった。あれこれ悩む時間と気力がなかったので、あるルートを頼って入手にこぎ着けた。彼らの活動に対するドネーションをしたいのだが、やはりエラーのためにまだできていないので、もう少し落ち着いたら原因を探ってみよう。

空飛ぶ橋

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これまでにも国内外のさまざまな可動橋を見てきたが、「ビスカヤ橋」を体験したことで、ようやくひとつの到達点にたどり着いた気分になっている。エッフェルの弟子であるアルベルト・パラシオにより設計された吊橋であり、1893年に完成した世界最古の「運搬橋」だ。随所に配置されている細いケーブルが、なんとも愛おしく感じるね。

まだまだ船舶の交通が優位だった時代に、ゴンドラを用いてどうにか陸上交通を成立させた意欲的な構造物なんだけど、その後の技術の発達により輸送の非効率さが露わになってしまったらしく、事例は極めて少ない。現役で動いているものは、世界でも10に満たないようだ。

実際に体験したときのユニークさは際立っており、ケーブルカーと船と飛行機をごちゃ混ぜにしたような不思議な感覚だった。最終日にレンタカーで乗り込むことも頭をよぎったのだが、怖じ気づいてやめてしまった。今にして思えば、強引に行くべきだったかもなあ。

ワイナリーのシエスタ

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スペイン高級ワインの産地として有名なリオハ地方は、カンタブリア山脈の南側にある。ビルバオなどの大西洋沿岸のエリアは湿度が高かったのに対して、明らかに乾燥しているように感じた。岩山を背景とするなだらかなに傾斜した高原には見渡す限りブドウ畑が広がっており、日本では見ることができない大陸的な風景が堪能できるよ。

そこには、ザハ・ハディド、フランク・ゲーリー、サンチャゴ・カラトラバなどの著名な建築家が手がけたワイナリー(ボデガ)が点在している。それぞれが車で30分ほどの距離にあるので、手当たり次第に立ち寄ってワイン・ブランディングの一端を垣間見てきた。どこのワイナリーも事前に予約すれば醸造過程を案内してくれる見学ツアーに参加できるようなのだが、到着時間が読めなかったり、ワインそのものへの興味が相対的に少なかったりで、直接現地に行って中を見せてくれないかとお願いするいつもの作戦で臨んだ。

ところが、カラトラバが手がけたユニークな外観のワイナリーは入口が固く閉ざされており、どうしても潜入できなかった。せめて外観だけでもそれなりに写真を撮りたいと思ったのだが、センター付近に止められた白いバンはしばらく待っても一向に移動する気配がなく、どの写真にもバッチリ映り込んでしまった。現地に行く前から少し危惧していたことだが、どうやらシエスタだったようだ。場所や施設にもよるけど、13:00〜16:00頃の時間帯はそれなりに気をつけよう。そしてあっさりあきらめて、シエスタを共有しよう。