はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

残されたブロック


オランダが誇る長大水門、東スヘルデ防潮水門に隣接した人工島には、デルタパーク・ネールチェヤンスという展示施設兼レジャー施設がある。そこの水面に、謎めいたコンクリートの造形作品がぽつんとたたずんでいる。これはなんと、水門のピアである。ひとつ多くつくっちゃった!というわけではなく、おそらくテストピースが残されているのだろう。ゲートも桁もない姿は、異様でありつつも強い存在感を放っている。
これはなんでここに放置されているのだろうか。それは、このピアのびっくり施工方法を知ると、よくわかる。まずは矩形に土を盛って海水を排したドライエリアをつくり、そこで巨大なコンクリートのピアを大量に生産する。次に、堤防を切ってエリア内に海水を満たし、専用のクレーン船で吊り上げながら設置場所まで曳航する。そして慎重に設置するという流れ。なにしろそのスケールが、笑ってしまうほど圧倒的。施工時の空撮映像を見つけたので、じっくりご覧いただきたい。オランダ人の本気の合理主義精神が、凄みとともに感じられるよ。