はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

干潟の上の橋

吉野川の河口付近には、多様な生物相を育み水質浄化にも寄与する干潟がある。その上空を跨ぐように、市内の渋滞緩和を主目的とする「阿波しらさぎ大橋」が2012年に架けられた。その立地特性から干潟の環境に配慮した構造物とすることが求められ、斜張橋とケーブルトラス橋を掛け合わせた「ケーブルイグレット形式」という新たな構造形式が生み出された。

なにはともあれ、干潟への干渉を最小化すべく橋脚を設けないようにスパンを飛ばすわけだが、斜張橋のように桁を上から吊り上げるのではなく、桁下に水平ケーブルを配置して下から2箇所を支えている。そのケーブルは一段に限られ、斜張橋よりも低い主塔を介している。このことから、上空を飛ぶ鳥類の障害にならないようにしたというわけだ。さらに、橋の外に光を漏らさないように高欄内照明を採用しているなど、数多くの点で干潟を尊重する姿勢が伺える。また、少主鈑桁やサンドイッチ床版などの技術を取り入れることで、コスト縮減や省力化にも寄与しているのだろうね。

正直に白状すると、この橋にはあまり興味を持っていなかった。写真をチラ見した際、その見慣れないフォルムに対して、なんとなく貧相でゴチャゴチャしているように感じてしまったのだ。ところが徳島訪問の機会に「ついで」のつもりで見に行ったところ、そのイメージは大きく覆った。周辺環境やスケールを感じながら眺めることによって、いろいろ腑に落ちたのだ。やはり写真による自分の印象なんてアテにならないもんだし、実際に見る体験は本当に重要だね。またしても、大いに反省した。