はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

浸食の供養

今年の大型連休における人出の傾向は「安近短」と言われているが、僕もその通りの行動を取り、土日に車で銚子を訪問した。あいにく日曜日に雨に降られたので、土曜日のうちに見たいものを詰め込んだ行程にした。

銚子旅行の主目的は、屏風ヶ浦の鑑賞。下総台地が波の浸食によって削られた、見事な地層の縞模様が観察できる海食崖である。延々と連なる崖の迫力に大満足。大型連休に突入したにもかかわらずほぼ誰もいない状況で、雄大な風景を独り占めできたし。

この海食崖、かつては毎年1m近く削られ続けてきたらしい。1960年代ごろから消波ブロックを設置したことで、ある程度は浸食が抑えられているようだ。しかしそのために、屏風ヶ浦の南に延びる九十九里浜への砂の供給が滞り、砂浜が痩せてしまうという現象を引き起こしているという話もある。海岸の保全というのは、なかなか難しい問題だね。

そんな状況で活躍していたのであろう消波ブロックが、妙な並べられ方をしているエリアがあった。一部は砂に埋もれている。まるで、山中に大量の石仏が供養のために置かれているような雰囲気だ。スーッと背筋が伸びて、思わず拝みたくなった。まさか、役割を終えた消波ブロックの墓場じゃなかろうな。