はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

水との距離

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数日前にある方からオランダの水との関わりについての参考図書を求められ、自室にある関連書籍をざっくりチェックし直した。久しぶりに『Dutch Dikes』などのすてきな書籍に触れて、すっかりオランダに行きたい気持ちが高まってきてしまった。なんだろうこの高まりは、と思って振り返ってみると、昨年もちょうど同じ頃に現実逃避を計画していたんだな。どうやら季節ものらしいね。

それはそうと、一昨年の夏の現実逃避旅行に再訪したオランダの治水テーマパーク「ネールチェヤンス」には、「ドボク遊具」が充実しているよ。水との距離が異様に近い国であることが実感できる。その他の展示物や実際の防潮水門体験も含めて、オランダの治水をエキサイティングに楽しめるので、オランダ旅行際にはぜひ行程に加えていただきたいな。と思って見直した写真に登場しているみなさんが、夏の装いにはとても見えない。避暑のつもりで行ったら寒すぎたんだっけな。

 

 

あからさまな斜面の強化

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鶴田ダム再開発では、新たな放流設備の設置に伴い、堤体下流右岸側の斜面の勾配をググッときつくする掘削工事が行われたとのこと。そこで露出した斜面の安定を図るために、コンクリートによる法枠工に加えて、グラウンドアンカーによってガチガチに固められていた。ちょっと痛々しいほどに。

コンクリートの法枠工はすっかり黒ずんでいるが、鋼製の受圧板は目にもまぶしい白色なので、そのコントラストが顕著に法面のサイボーグ感を高めている。茶色がかったグレーとか、少しでも馴染むものにできなかったのかねえ。上部と下部で受圧板の形状が違うのは、施工のタイミングが違うからなんだろうか。

 

 

湖に沈む発電所

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3年前の伊佐訪問時には立ち寄ることができなかった「曽木発電所遺構」を、ようやく見ることができた。鶴田ダムによる大鶴湖の水位が上がると、その大半が沈んでしまうという産業遺構だ。すでに観光対象として認知されていることもあり、倒壊を防ぐために各種の補修がなされ、演出のためのライトアップも実施されているという。適切に手が加えられているという事実は、コアな廃墟ファンにとっては少々残念なことかもしれないが、水俣病の記憶を留めるという意味でも、たいへん重要な取り組みだと思うな。

同様に湖底に沈む構造物として、北海道上士幌町のタウシュベツ川橋梁が有名である。この橋は基本的に維持管理は行わず、朽ちるに任せているという。凍結融解というコンクリートにはものすごく厳しい条件下にあるだけに、崩落する日も近いだろう。

アプローチは様々なれど、過去の記憶を実体物で「残す」ことってのは、本当に大事だと思う。スクラップアンドビルドの概念が根底にある日本の社会環境ではいろいろと難しいことが多いけど、少しずつ価値観を拡張するように努めていきたいね。

そうそう。駐車場から曽木発電所遺構展望台に至るアプローチは、とても気持ちがいいものだったな。地形に合わせた線形の揺らぎは心地よいし、ウッドチップの舗装も歩きやすい。後半でチラチラ見え始めて最後に視界が開けるシークエンスは、とても素晴らしかったよ。