はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

雨雲レーダー

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沖縄滞在時の天候は、ころころ変わった。晴天もあればスコールもあったので、レンタカーで移動するときには、雨雲レーダーで行く先の天候を予測しながら行き先を決めた。

古宇利島と本島を結ぶ古宇利大橋を見に行ったときは、ギリギリセーフだった。南国の素晴らしい海の色を堪能しながらのんびり橋を眺めて、いよいよ立ち去ろうとしたときにぐんぐん迫ってくる雨雲を東の空に目視確認した。そして島に渡った途端に雨が降ってきた。海水浴を楽しんでいた方々には申し訳ないが、心の中でガッツポーズ。

その後も微妙に雨を避けつつも、訪問したかった場所が豪雨のど真ん中に当たりそうだったので、翌日に行くつもりだった中城城跡に目的地を変更した。これが大当たり。閉場前の夕方かつ雨の直後だったので、ほとんど貸切状態。誰もいない遺跡および廃墟って、とてもいいもんだね。

そんなゲーム感覚を持ってしまうと、もっと上手くすり抜けられるのではないかと、ついつい必要以上にがんばってしまうので要注意だね。翌日から日常業務に戻ったのだが、疲労しすぎで免疫力が低下したのだろう、うっかり夏風邪を引いてしまった。休養しに行ったはずなのになあ。

それはさておき、古宇利大橋は見応えがあるきれいな橋だった。橋長は1,960mで、その構造形式は「PC8径間連続箱桁橋×2+PC4径間連続ラーメン箱桁橋+PC5径間連続箱桁橋」で、25回も変断面のきれいなカーブがリズミカルに繰り返されている。なかなかお目にかかれないスケールだね。

廃墟の格

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沖縄に来たからにはグスク(城)の石垣を見なければと思い、世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」にも指定されている中城城跡(なかぐすくじょうあと)に行ってきた。沖縄本島の東西の海を両方望むことができる稜線に沿って構築されていた城郭群は、思っていた以上に素晴らしかった。と言いつつも、真の目的は中城城跡に隣接する廃墟を眺めることだ。

実際に見事な廃墟を目の当たりにして大興奮。地形の高低差に沿って造形されたコンクリートの人工構築物が、南国特有の濃密な緑に飲み込まれていくような、なんとも幻想的な佇まいだ。スケールもロケーションも素晴らしい。この「中城高原ホテル」は1975(昭和50)年の沖縄海洋博覧会の開催に合わせて建設が進められていたが、関連企業の倒産により完成直前で放棄されたものだそうな。その背景には、文化財保護への気運の高まりがあったらしい。ということは、そもそも当時は文化財保護の観点が希薄だったと言うことなんだろうね。

中城城跡は誰もが認める価値ある廃墟だ。沖縄返還の痕跡と言えるかもしれない40年以上前の廃墟ホテルは、それと同格になる日が来るのだろうか。個人的にはすぐにでも世界遺産の構成要素に含めてしまいたいのだが。もちろん廃墟ホテルは立入禁止なので、少し離れた場所から眺めるだけにしようね。

絶景シークエンス

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沖縄本島南部の南城市の高台から海岸までを一気に下るS字カーブは、絶景ポイントとしてネット上で多数取り上げられていた。「ニライ橋」と「カナイ橋」で構成される道路景観は、自衛隊の用地同士を結ぶ通路上から展望することができた。

もちろんその眺望にも感激したのだけど、侮れないのが道路の走行景観。アプローチ部分は緑の生育状態がいまひとつなプレキャスト緑化ブロックの水平ラインにより道路線形が強調されている。正面は通路のための壁面があるため見通しが効かない。この閉塞感や人工感が高まったところでトンネルを抜けると、青い海への眺望が一気に広がるとともに、爽快な気分で樹林の上空を飛ぶように走るってわけだ。

印象的なシークエンスを生み出すのは、やはりギャップだよねえ。