はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

使用済み未成線橋梁

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下北半島を北上しているとき、未成線である大間線の遺構がいくつか目に入った。用務からの帰り道、その中で最もインパクトがあったアーチ橋に立ち寄ってみた。威風堂々たる7径間連続のコンクリートアーチ橋だ。この橋のことをネットで調べてみると、二枚橋とも二枚橋橋梁とも二枚橋アーチ橋とも書かれており、1943(昭和18)年に工事中止になってそのまま放置されたとのことだ。

それらの記事中には、鉄筋の代わりに竹筋が使われているとの記述もあった。そういえば、ずいぶん前に函館の戸井町で見た連続アーチもまことしやかに竹筋コンクリート製だと聞いた記憶があるな、もう20年くらい前のことだろうか、などと記憶を辿ってみたが、その時に撮ったはずの写真は見つけられなかった。ネット情報によると、どうやらその戸井線と大間線は、連絡船によって結ばれるセットの路線だったらしいね。

それはさておき、南側の高台にあった小学校に通っていたというご老人から、この橋を眺めながら貴重なお話を伺うことができた。少し聞き取りにくい部分もあったけど。その方によると、大間線自体は未成線ながら、この橋はなんと森林鉄道として実際に使われていたのだそうな。勾配がきついこの橋を登る汽車をいつも小学校から眺めていた子どもたちは、運搬している材木の量が多いときに「がんばれがんばれ」と懸命に声援を送ったんだよ、でも結局ズルズル後退していくこともあったんだよ、というエピソードには胸が熱くなった。セピア色のノスタルジックな光景が目の前に現れた気がしたな。

ハーフ構造風

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萩から川を上るようにドライブしていると、木々の隙間からチラリと赤い鋼橋が見えて、うわっと色めき立った。なんだこれ?トラスをアーチで補剛しているのか?まさかあのランガートラス橋というやつか??などと、ざわつきながら近づいてみたのだが、トラス桁の歩道橋とアーチ部材を持つランガー橋の車道橋の2橋が隣接しているだけだった。

ときどきあるよね。シルエットが重なって、なんだかわからない構造に見える橋って。ちょっとしたガッカリ感とともについついスルーしてしまい、後悔しがちだよね。山口の旅では数百メートル進んでからそのことを思い出し、わざわざ引き返して眺め直した。気持ちの余裕って大切だね。行程にはあまり余裕がなかったけど。

萩のツインタワー

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山口県に行く機会があり、これまで行ったことがなかった萩にも立ち寄ってきた。とは言え、近代建築を少し見ただけで、有名な城下町には全く立ち寄ることができずに終わってしまった。その代わりにと言ってはなんだけど、ほぼ予備知識が無い状態にもかかわらず、萩反射炉には行ってきた。

これがなかなか不格好でステキだった。石積みもなんだかゆるくて親しみがある感じだし。案内板によると、どうやら実用段階のものではなく、試作段階のものらしい。それなのに現物が残っているってのはとても素晴らしいよね。プロタイピングってのはものづくりに不可欠な過程だし、失敗をなかったことにせずに積み重ねていくことも大切な姿勢だし。

ちなみにこれのコピー元である佐賀の反射炉の跡地を見に行ったことがあるのだが、ちょっとしたプレートと碑があるだけで、悲しいほどに痕跡が見られなかったな。