はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

表現された機能

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北上川の河口近くに、皿貝川への逆流と塩水の流入を防ぐ月浜第一水門がある。2006年に改築された姿は、しびれるほどにシャープで潔い。基本的に水平垂直の強烈な直線で構成されていて、わずかに現れる斜めのラインが効いている。

これって土木構造物にありがちな「なっちゃったカタチ」ではなくて、明確な意志を持って「やったカタチ」だ。「機能主義デザイン」という、ともすればエンジニアの思考停止に結びついてしまう概念に真正面から取り組まれたのだろう。油圧シリンダーとか、中空の門柱とか、折りたたみ式の足場とか、このカタチを成り立たせている仕掛けはとても手が込んでいる。

もちろん個人的には、鑑賞者の立場からすると「なっちゃったカタチ」が嫌いではない。読み解きが楽しかったり、親近感を抱いたりするし。むしろ、きれいにまとめようとしたものは、姿勢が鼻についたり、あざとさにうんざりすることもあるもんな。そんな穿った見方を踏まえても、ストイックに機能を表現することを貫いているこの水門には、すっかり感服させていただいた。

また、近くにある石巻市復興まちづくり情報交流館北上館にて、この水門を飲み込んでいる津波の写真を見て愕然とした。この水門の少し上流の対岸には、痛ましい津波被害があった大川小学校が当時の姿がそのまま残されているので、併せて訪問するといいと思うな。