はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

芝浜高の立地

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今年からはじまった日曜深夜のNHKのアニメーション作品「映像研には手を出すな!」に、すっかり夢中になっている。たまたま第2回の後半を観ていきなりググッと引き込まれ、これは観なきゃダメなやつだと確信した。毎回の放映で感動し、何度も録画を見直し、YouTubeでオープニングテーマを就寝前に鑑賞し、この世界をより深く知りたくなっている。原作の漫画に手を出すのも時間の問題だな。ブルーレイが出たら買っちゃうんだろうな。

昨晩放映された第8回では、物語の舞台である芝浜高校の敷地内に特徴的なフォルムのタワーが描かれていた。おや?と思って過去の写真を参照してみると、長崎の「池島炭鉱第二竪坑櫓」に似ているではないか。もしやこの高校は、石炭の地下採掘場の跡地に立地しているのだろうか。もしやこの竪坑櫓は、当該地域の近代化を支えてきた産業のシンボルとして、丁寧に保存されているのだろうか。

そう言えば、この高校は港湾に面する傾斜地に築かれており、やたらと増改築が繰り返されていると説明されている。校舎の複雑な空間構造は、まるで選炭場や貯炭場を含む炭鉱施設のようだ。教員室はタービン建屋のような大空間だし。校舎の下を流れる自然河川とは思えない様相の水路は、鉱山で発生した地下水の排水路とも思えてくる。コンクリート壁で囲まれている広大な地下空間は、すでに軍事施設などに二次利用されたのだろうか。公衆浴場やアパートや飲食店がある高校周辺のエリアは下町感溢れる木造住宅密集地であり、かつては炭鉱労働者が暮らしていたのかもしれない。油断して鑑賞していると、そんな妄想がじわじわ広がってくる。

この物語の登場人物はみな、観察眼、想像力、リアリズム、こだわり、のめり込みなどに支えられた創造性に満ち溢れている。特に主人公である3人の女子高生は、それぞれがディレクターとしての設定能力、クリエーターとしての表現能力、プロデューサーとしての管理能力という方面に徹底している。おそらく個人の内面や実際のチームの役割を分解して再構成しているのだろう。可視化され言語化されたクリエイティブの断片は、おそらく多くの人の共感ポイントを刺激しているに違いない。僕もモノをつくって表現するという立場を少しだけ知っているので、すっかり揺さぶられている。

ちなみにこの竪坑櫓は、第1話のオープニング後にも描かれていることを、今朝確認した。ものすごく緻密な世界観の設定に、本当にしびれている。そこらへんは、いかにしてリアルな条件をクリアして、現実の世界を構築していくかという土木の設計に通じているように思える。いずれにしても、次週が待ちきれないという何十年ぶりかの感覚は楽しいなあ。