はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

世界を感じる近代建築

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先週末は、『日常の絶景』刊行記念トークイベントをするために、学芸出版社がある京都に行ってきた。その際に、倉方俊輔さんによる『京都 近現代建築ものがたり』に掲載されている建築物をいくつか見て回った。背後にあるストーリーを踏まえた建築体験は、予想を超えてとても充実したものになった。

たとえば、伊藤忠太による本願寺伝道院。倉方さんの本で「西洋建築の枠に収まらないデザイン」と表現されているように、洋風、インド風、アジア風、イスラム風、和風など、さまざまテイストが絶妙に折衷されている。しかもそれが、西本願寺というガチ京都の門前町にあるのだから、驚かざるを得ない。そのカオスにも似たスタイルの豊かさに、思わず頬が緩んでしまった。

これまで伊藤忠太の建築にはあまり興味を抱かずにいた。正直に言えば、若い頃は溢れ出る違和感を毛嫌いすらしていたように思う。さらに、つい最近まで現代建築には興味があっても、近代建築をわかろうとしていなかったと言ってもいいかもしれない。このような自分が培った独自基準で好き嫌いを設定し、その延長で良否を判定しようとする短絡的な姿勢は、自分の視野や思考を狭めるだけであろう。

今回の体験を落ち着いて振り返ってみると、もっと以前にも同じような感情を抱いたことを思い出した。それは、バルセロナでガウディの建築を体験したときだ。あのときは自分の価値観が根底からひっくり返るような激震が走ったわけだが、今回の京都ツアーもそれに近い体験だった気がする。自分の考えなど固定化せず、フワフワとゆらぎながら、どんどん更新していきたいね。