はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

吊橋改アーチ橋

ひょんなことから「とくしま橋[はし]ものがたり」という、吉野川に架かる橋について記述された本をいただいた。そして、そこに掲載されていた三好橋という橋に目を奪われ、早速訪問することにした。なにしろ、もともと輝かしい吊橋だったのに現在はアーチ橋に改造されたという、数奇な人生をたどっている橋なのだ。

オリジナルの吊橋が建設されたのは1927(昭和2)年。四国の中心にあたるこのエリアの交通を確保することが悲願だったことは、吉野川に架けられた最初の橋であることからも推察される。支間長139.9mは、当時東洋一の吊橋だったとのこと。設計者は日本全国の名橋を手がけたスターエンジニアの増田淳。増田は同時期に、やはり吉野川に架かる吉野川橋と穴吹橋も設計している。やがてメインケーブルの一部に破損が見つかり、大がかりな補修を余儀なくされた。そしてさまざまな検討を経て、補剛トラスを一体化して活用しながらアーチリブを挿入して下から支える案が採用され、1989(平成元)年に生まれ変わったのだそうな。

ただこの橋、こんなにすごいのに鑑賞できる場所があまりにも少ない。結局僕は、全景を見渡せる視点場を見つけることができなかった。それでも前述の「とくしま橋[はし]ものがたり」に掲載されている写真から、この斜面なら見えるのではないかと徘徊した結果、どうにか上の写真の風景を見ることができた。本を読む限り、もう少し愛されていてもいいのになあと思ったり。

そうそう。なんとこの本、県の公式ウェブサイトから閲覧することができるので、ご興味のある方はぜひご一読を。三好橋以外にも、吉野川の橋の情報がたくさん得られるよ。

www.pref.tokushima.lg.jp