はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

暗渠に架かる橋

このたび「暗橋(あんきょう)」という概念が開発された。地下に追いやられた川や水路、いわゆる「暗渠」に架かる、あるいは架かっていた橋のことだ。親柱や高欄の一部が残されていケースもあれば、橋の名前が交差点名などに残されているケースもある。この視座を備えておくと、街を歩くときに時間の層が明快に加わり、かなり面白い見方を提示してくれそうだ。これまで僕も持っていなかった概念なので、今後は積極的に取り入れていきたいと思う。

この言葉を提唱しているのは、暗渠マニアックスの高山氏と吉村氏だ。本日発売の『「暗橋」で楽しむ東京さんぽ 暗渠に架かる橋から見る街』の著者である。なんと先日、この本の発売記念イベントにゲストとして参加させていただいた。橋への愛情は持っているものの、暗橋については初心者であるというスタンスで登壇したわけだが、お客様的にどうだったのだろうか。僕はとても楽しかったんだけど。

この本、圧倒的なボリュームのフィールドワーク、インタビュー調査、文献調査などを通じて、まち歩きのヒントを提示してくれるだけでなく、多方向からの鋭い分析を行って論じている。それは、「橋」からの工学的アプローチではなく、地理と歴史をベースとした「暗渠」からの社会学的アプローチが貫かれている。しかも、高山氏と吉村氏のスタンスの違いが上手にブレンドされているため、読み進めると多面的な視座を提示してくれている。多くの方に手に取っていただきたい本である。

上の写真はわが家の近所にある暗渠の上に架かっていた名も無き橋。改良されたり壊されるでもなく、そのままの姿で利用されている。この本で言うところの「野良暗橋」にカテゴライズされる物件だと思う。

ついでに「暗橋」に関わる過去記事を掘り起こしてみた。やはり僕は橋目線からしか見ていないようだ。もっと精進して、いろんな見方を獲得しなければね。