はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

国宝橋

たいへんめでたいことに、先日、熊本県山都町に架かる国内最大級の石造アーチ橋である「通潤橋」が、国の文化審議会で国宝に指定するよう答申された。橋という土木構造物が国宝に指定されるのは、はじめてのことだという。そうか、これまで橋は国の宝として認定されていなかったのか。重要文化財に指定されているものはたくさんあるけどね。

通潤橋は江戸時代末期の1854(嘉永7)年、水源に乏しいエリアに農業用水を送るために建設された。この地で活躍した肥後の石工集団が手がけた精緻な石垣と、高い台地へ水を送る仕組みの石管が見事に一体化された「技術的完成度の極めて高い、近世石橋の傑作」という評価がなされたという。また、2016年の熊本地震、2018年の大雨で被災したけれど、見事に復旧されて、今もなお現役で水を田畑に運んでいる。

農業技術にしても石積み技術にしても、地域文化を表象しているのが素晴らしいよね。この水路橋によって地域の諸課題を解決して、永きにわたってシンボルとなる景観を形成してきているわけで。橋単体だけ取り上げても素晴らしいけど、地域文化とセットで味わいたい。国宝の維持管理はそれなりにたいへんだとは思うけど、丁寧に手厚くがんばっていただきたいなあ。いずれまた訪れよう。