はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

アアルトの家

フィンランドを代表する建築家でありデザイナーのアルヴァ・アアルトは、建築、家具、日用品など、数々の著名な作品を残している。僕も含めてデザインに関わる者は、その足跡にさまざまな場面で何度も出くわす。せっかくヘルシンキに行くということで、郊外にあるアアルト自邸とスタジオを、事前に予約して見学してきた。

往時の雰囲気が自然な雰囲気でしっかり保存されている自邸とスタジオは、つつましく環境に溶け込み、誠実な生活に根ざしているように感じた。生産性が高く使用しやすい合理的なモダンさをベースにしながらも、特に木材を中心とするあたたかみのある素材の使い方は、想像を超えるものがあった。こじんまりとした空間のスケール感とか、絶妙に残した雑然さとか、日本人に馴染みやすい「ちょうど良さ」が全体に漂っているように感じ、いろいろ腑に落ちた気分になった。今回の旅を通じて、フィンランドのおしゃれ感にはほとんど嫌味な印象を抱かなかったのだが、その印象が強化される体験だったな。

自邸のガイドツアーでは最初の妻であるアイノの功績、スタジオでは2番目の妻であるエリッサの功績がフィーチャーされていた。こうした夫婦のありようがしっかり盛り込まれているところにも、フィンランドのジェンダーギャップの少なさが反映されているのかもしれないね。

この秋、アアルトの映画が公開されるらしいので、アアルト自身やフィンランド文化をより深く知るために、観に行ってみようと思う。