はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

なんと、ドラマ化

拙著『日常の絶景』が、テレビ東京によりドラマ化された。本書を知る人は「なんで?」「どうやって?」と訝しんだことだろう。もちろん、僕も含めて。登場人物やストーリーなどは一切ないし、世間的にはマイナーで素っ気ない対象を扱っているし、妄想を含めたテキストはずいぶんマニアックだし。

どうやら、ふとしたきっかけでものの見方が変わるというコンセプトや、土木インフラに支えられている現代都市という設定が、若い番組プロデューサーの心の琴線に触れたらしい。TVドラマとして成立させるべく、おそらく、さまざまな関係者を巻き込んで、いくつものハードルを越えて、世界観やシナリオを練り上げたのだろう。そして、伊藤万理華さんと石山蓮華さんという素晴らしい俳優陣により、なんともゆったりほっこりするテイストの、美しい映像に彩られたドラマに仕上げられた。

このドラマは深夜帯に放送され、全三話で構成された。第一話は東京港のガントリークレーン、第二話は勝浦の砂防(法枠工)、第三話は奥秩父の滝沢ダムを訪れ、少しずつふたりの距離感が近くなる。文字情報だけだと意味がわからないよね。現時点でU-NEXTとAmazon Prime Videoで視聴することができるので、未見の方はぜひご覧いただきたい。

先日、石山蓮華さんがメインパーソナリティーを、東京03の飯塚悟志さんがパートナーを務めるラジオ番組「こねくと」に、伊藤万理華さんとともにお招きいただいた。そんなメンバーと生放送ということでとても緊張したのだが、それ以上に楽しい時間を過ごすことができた。その中で、なんてことのない日常をいかに充実したものとして意識化しよう、つまり、派手な出来事などに寄らず豊かな日常を手にしようというドラマであることを、あらためて感じることができた。

楽屋トークでは撮影中、石山さんと伊藤さんが本書の「はじめに」のテキストに共感して盛り上がったと知らされ、同じ志向を持つ方々が演じてくださったことに胸が熱くなった。書籍を通じて自分がつくり上げた概念が、他者(しかもプロフェッショナルなチーム)の手によって再解釈されて拡張されるという、刺激的で意義深い状況になったことは、とても素晴らしい体験となった。こんな機会はめったに訪れないだろうね。今後も多少は自慢していきたいと思う。

旧Twitterで「日常の絶景」をエゴサーチしてみると、全三話で終了したことを残念に思う声がとても多い。おそらく多くの方がドラマのテーマに共感し、ふたりの空気感に癒やされ、日常の絶景をもっと知りたくなったのだと思う。そのうち続編の話が出るといいね。