はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

岩の教会

ヘルシンキの街中の地形は、想像していたよりも緩やかな起伏に富んでいた。そして、そこかしこで岩盤が露出している状況を見かけた。住宅地の中とか、公園の中とか、道路脇とかに忽然と現れる岩肌には、少々ギョッとした。調べたわけではないが、街全体がとても安定した岩盤の上にあるように思えた。

その印象をより強化したのは、「岩の教会」と呼ばれている「テンペリアウキオ教会」。小高い丘のように突き出した岩山の一部をくり抜き、現場で発生したのであろう石材を積み上げて形を整え、コンクリートのルーバーの隙間から太陽光が導かれ、銅板が貼られた巨大なドーム天井をかぶせた空間。岩肌の荒々しさとモダンなしつらえの各種要素が心地よく調和している。

この教会は1969年につくられたとのこと。それにしては、そんなに古い印象を抱かない。逆に、太古の印象は受けるけど。とても静謐で、居心地がよかった。実際に、結構な時間をここで過ごしたし。さらに、何度でも訪れたいという気持ちが強まった。

少し前までヘルシンキは、日本と欧州を行き来する際のハブとして有効な街だった。ロシア上空を飛べなくなったことで、その立ち位置は変化した。状況に変化があれば、トランジットの際に再訪するという機会があるかもしれないな。