はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

ゲーテアヌム


「シュタイナー教育」というのが結構流行っているようで、時折噂を耳にする。ウィキペディアには「シュタイナー教育の目指すものは、宇宙にある諸事物の理念を、人間と結びつけて理解し、それによりミクロコスモスとしてのわたしを活き活きとした理念で満たすことである」とあるが、そう言われてもいまひとつピンとこない。シュタイナー教育の総本山らしいバーゼル近郊の「ゲーテアヌム」という奇妙な建造物についても、ちょうど帰り道のそばにあるから寄ってみるか程度の軽い気持ちだった。
ところがどっこい、とんでもなくすごかった。ここは訪れるべき場所のひとつである。なんというか、造形と空間の力強さが尋常ではないのだ。ダムとか橋とかの自然の力に対抗するものがまとっているものとはまた違う方向の、人間の意志とか精神の強さみたいなもの。なかなか言葉にはできないので、ぜひ多くの方々に体験してほしいと思った。
この劇場の内部を見てすっかり圧倒されてへろへろになり外に出てみると、おどろおどろしい黒い雲を背景に、ひと筋の光が劇場にあたった。魔王でもやってくるのかなどと思って身構えたんだけど、結局何も起こらなかった。まあ、僕の中の何かが変化したのかもしれないけどね。