はちまドボク

何かからはみ出した、もうひとつの風景

イタリアの造形

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完全な主観ではあるけれど、イタリア人の造形力って特別にすごいと思う。街中に溢れる具象彫刻はもちろん、建築物も、自動車も、彼らが生み出してきた立体物の造形には、ついついうっとりさせられてしまう。

ネルヴィが設計したパラッツェット・デッロ・スポルト(Palazzetto dello Sport)は、本当にすごかった。コンクリートドーム内側のリブが描くパターンの繊細な美しさはもちろんだが、緊張感がある採光部を介して、外側のY型フライングバットレスに至る力の流れの華麗な連続性には、ものすごく感激した。

構造面や施工面での合理性を追求しながら、極めて端正な造形物にまとめ上げる力って、尋常じゃないよなあ。先ほど少しネットの情報を調べてみたら、このドームはプレキャスト部材を多く使っているため、工期は40日程度だったという記載があった。本当なのかなあ。 

 

入りたかった体育館

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なんとなく体育館ネタが続いているついでに、まだアップしていなかったネタを。

2011年のクリスマスの日に、バチカンのサンピエトロ広場でローマ教皇のお言葉をいただいた後に見に行ったパラロットマティカ(PalaLottomatica)という競技場。1960年のローマオリンピックに際してネルヴィの設計でつくられた屋内競技場であり、現在はバスケット、バレーボールなどの試合の他、コンサートにも使われているようだ。

写真集や画像検索などで見ると、RCドーム屋根のリブ、アリーナ外周の回廊、支柱や階段の造形などがたいへん魅力的。断面図も結構しびれるかっこよさだよ。なんとか中に入れないかなあと思って周囲をうろついてみたけど、クリスマスと言うこともあって、取り付く島など全くなかった。同じくネルヴィによるパラッツェット・デッロ・スポルト(Palazzetto dello Sport)を凌ぐスケールのドーム内部は見てみたかったな。まあがらんとしたファシズム都市のエウル(EUR, Esposizione Universale Roma)を体験できたことは、なによりだったけどね。あ、この近くにはかっこいい給水塔レストランがあるので、セットで行くといいんじゃないかな。

 

 

三角体育館

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丹下健三とタッグを組んで数多くの名建築を生み出した構造家・坪井善勝が、単独で設計した体育館が下関にある。1963(昭和38)年につくられた下関市体育館は、全体を通じて三角形の変奏曲といった雰囲気が生み出されていて、そのフォルムはスター・デストロイヤーなどの帝国軍の艦船を彷彿とさせる。いや僕だけかもしれないが。
特に屋根の造形はとてもすてきだよ。双曲放物面という幾何形態を造形言語としながら、ダイナミックで繊細で緊張感のある形態が生み出されている。始点となる合掌づくり的支柱からゆるやかに面の方向が変化していき、最後のところでキュッと反転するところなんて、たまらないよねえ。もちろんその屋根構造は内部空間にもしっかり反映されていて、音楽ホールにも似た雰囲気が形成されているよ。
ちなみに僕は、建築史家の倉方俊輔さんの著書『ドコノモン』を見て、この体育館のことを知った。ひょっとしたら名建築?という少々マイナーな建築物がたくさん紹介されている『ドコノモン』、実は自分の『ヨーロッパのドボクを見に行こう』のコンセプトや構成などで大いに参考にさせていただいた。2年前、はじめて倉方さんにお目にかかった際に、しっかりサイン本になったよ。なお、現在はKindle版だけのようだ。

ドコノモン

ドコノモン